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競泳 本多 灯選手

東京五輪が延期になったことは、「自分にとってチャンスでした」と話した本多選手。「2019年はうまく練習ができていない時期があったのですが、2020年の3月頃から本学で練習することになり、距離をたくさん泳げたので体力が付きました。泳ぎにも無駄がなくなってきたので、インカレ優勝、五輪出場もできるのではないかと自信が付いてきました」


その自信を証明するように、昨シーズンからめきめき頭角を現した。10月のインカレでは1年生にして200mバタフライと400m個人メドレーで2冠。「優勝を目標に掲げてずっと練習してきたので、本番は緊張感と楽しさを感じながら、いい試合ができました」


10月から11月にかけて行われたインターナショナルスイミングリーグには、200mバタフライ、200m個人メドレー、400m個人メドレーの3種目で多くの試合を戦った。特に200mバタフライでは、計5戦全てで3位以内に入るなど、海外の強豪選手と互角に渡りあった。「各国の代表クラスが集う舞台で初めはとても緊張したのですが、一緒に参加した日本の代表選手の方々が気さくに声をかけてくださり、お互い認め合える環境だったので、『日本代表』というチームを実感できました」

本多 灯選手

得意とするラストの追い上げが光った、200mバタフライの決勝レース。瀬戸大也選手を抑えての2連覇で、五輪代表の座を手にした。

日本選手権を目前に控えた2021年2月のジャパンオープンでは、400m個人メドレーは4位に終わったが、200mバタフライで優勝。「瀬戸(大也)選手に勝つことができ、自信になりました」と日本選手権に向けて弾みをつける内容となった。


そして迎えた日本選手権初日、「ジャパンオープンの時よりも軽い感じで泳げていた」と400m個人メドレー予選を5位で通過。同日に行われた決勝レースでは、最初のバタフライで先頭に立ったが、背泳ぎ、平泳ぎを終えた300mで4位へ後退してしまう。ラストのフリーで巻き返し、最後は4分13秒34の3位と派遣標準記録を突破したものの派遣条件の2位以内に入れず、惜しくも代表入りはならなかった。「瀬戸選手や井狩(裕貴)選手のほうが上ということを感じて、まだ自分に足りないものがあると思い知らされました」


大会3日目、「個人メドレーでの悔しさをぶつけてやろうという思いでした」と臨んだ200mバタフライ予選、準決勝をそれぞれトップ通過。「気持ちよく泳げたので、明日のレースも間違いない」と気持ちは高まっていたという。


笑顔で入場した翌日の決勝レース、50mの折り返しでは5位と出遅れたが、100mから150mにかけて3位につける。「最後の50mが自分の強み」と話したとおり、圧倒的なスピードで追い上げ、残り15m付近でトップに立っていた瀬戸選手を捉えるとそのまま逆転。派遣標準記録を突破する1分54秒88で優勝を飾り、見事に代表の座を勝ち取った。「自分の夢である五輪出場をずっと信じてここまでやってきたので、本当に嬉しいです」


その一方で準決勝敗退となった100mバタフライのレースを振り返った本多選手は、「100mの試合を通じて、まだスピードが足りないことを実感できたので、五輪に向けて前半のスピードも強化していきたい」とこれからの課題も口にした。


200mバタフライは、2004年のアテネ五輪から日本人選手がメダルを獲得し続けてきた、お家芸ともいえる種目。「自分もメダルを逃さないように、世界のトップレベルの選手たちに食らいつくレースをして、日本中を沸かせたいと思います」

Profile

Tomoru HONDA ​[ほんだ・ともる]

スポーツ科学部2年。2001年生まれ。神奈川県出身。日本大学藤沢高卒。'19年世界ジュニア選手権200mバタフライで銀メダルを獲得し注目される。本学入学後は'20年8月の東京都大会200mバタフライ優勝に続き、10月のインカレでは200mバタフライと400m個人メドレーの2冠を達成。12月の日本選手権は200mバタフライ優勝、400m個人メドレー準優勝、さらに'21年2月のジャパンオープン200mバタフライで優勝。五輪選考会を兼ねた4月の日本選手権で200mバタフライを制して2連覇。派遣標準記録も突破して五輪代表に内定した。