日本大学競技スポーツ部では昨今、SDGsを意識した活動を行う競技部が増えつつある。その多くは、地域社会との交流において、競技に関連した形で子どもたちとふれあう機会や場所を提供するものだが、そこでの子どもたちとのコミュニケーションを通じて、学生自身が何かを学んだり、気づかされることも少なくない。地域社会のため、子どもたちのため、そして自分たちのために、これからも競技を通じて社会に貢献できることを考え、“人間力”の涵養に資する。

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水泳教室の様子

2022年5月28日(土)、暑いくらいの強い日差しが降り注ぐ東京・目黒区の日本大学プールで、水泳部による小学生を対象にした水泳教室が開催された。


水泳教室に先立ち、コロナ禍でスタートした水泳部内の記録会「碑文谷カップ」を一般公開(無料)して実施。レースが始まった午後0時半以降、水泳教室に参加予定の親子連れなどが次々と来場し、1時間後には正面スタンドはほぼ満席に。自己ベスト更新を目指して懸命に泳ぐ学生たちの姿を、子どもたちは食い入るように見つめ、ゴールした選手たちに大きな拍手を送っていた。


午後3時を回り、日差しが少し和らいできた頃に、いよいよ水泳教室がスタート。約50人ほどの子どもたちを、泳力や経験度により6つのグループに分け、それぞれのレベルに合わせたプログラムに準じて指導を行う。水泳初心者のグループではまず、顔を水につけることから始まり、水のかけあいやビート板を使ったバタ足の練習などで泳ぐことに慣れさせていく。最後に行った水中拾い物ゲームまで、子どもたちは終始リラックスした表情を見せ、担当した学生とも次第に打ち解けていく様子であった。


一方、泳力のある子どもたちのグループでは、個別に担当する学生が子どもの泳ぐフォームを見て、腕や脚の使い方を実演しながらアドバイス。それをすぐに実践できる子は「いいよ!」という声に満足そうに微笑んでいた。こちらのグループは最後に学生と子どもたちの混合リレーのレースを行い、学生の巧みな演出により大いに盛り上がった。


水泳教室の様子をプールサイドから見守っていた保護者たちからは、「マンツーマンで教えてもらえるのは貴重な経験。スイミングスクールとは違う指導や違う言葉をもらって刺激になり、グンと伸びるといいなと思います」「自分も頑張っていけば、こういうお兄さんみたいになれるという将来イメージをつかんでくれるといいですね」など、今回のイベントを高く評価する感想が聞かれた。さらに水泳教室終了後、自分の子どもの泳ぎ方について、指導を担当した学生に声をかけて会話をする保護者の姿もあった。


初心者グループを担当した学生に感想をたずねると、「水が怖いという子もいるので、教え方にひと工夫しました。『水泳って楽しいな』って思ってもらえるといいですし、ふれあっていると自分が水泳を始めた頃のことを思い出します。自分としても楽しい経験になり、うれしかったです」と笑顔でイベントを振り返った。

FOCUS!

パリ五輪でのメダル獲得へ、
段階を踏んで1つずつクリアしていきたい。

競泳・自由形 柳本 幸之介(スポーツ科学部1年)

競泳・自由形 柳本 幸之介

競泳・自由形 柳本 幸之介選手

「小さい子どもも、水泳を教えることも好きなので、今回のイベントは楽しみにしていました。教えた子が少しでも速く泳げるようになってくれたらうれしいですね」と笑う柳本選手。同じ佐賀県のスイミングスクールで練習をしていた頃からの憧れだった吉田啓祐選手(スポーツ科・4年)のあとを追うように、日大豊山高校からスポーツ科学部へと進学してきた。


「大学入学後に本格的に吉田さんといっしょに泳ぐようになり、その存在が自分の励みになっています。毎日隣り同士で同じメニューの練習に取り組んで切磋琢磨しています」


高校3年時に東京2020五輪の4×200mフリーリレーのメンバーとして出場したが、「初めての国際大会で、海外選手に圧倒されて自分の泳ぎができなかった」と不本意な結果(全体12位)に終わり、「世界の舞台で戦えるように、もっと成長していきたいと思っています」。


当面の目標は8月のインカレで「個人種目とリレーで4冠を獲ること。タイムでは少しでもカツオさん(松元克央選手・200m自由形日本記録1分44秒65)に近づきたい」と意気込む。さらに’23年の世界水泳・福岡では個人種目で決勝に残ることを目指し、その先の’24年パリ五輪で「メダルを獲りたい」。夢の実現へ向けた青写真は、もう胸の中に描かれている。

Profile

柳本 幸之介[やなぎもと・こうのすけ]

2003年生まれ。佐賀県出身。日本大学豊山高卒。高校2年時に100m自由形の日本高校新記録を樹立。日本選手権(25m)でも200m自由形の日本高校短水路記録を更新した。’21年の日本選手権で200m自由形2位に入り、高校生ながら4×200mフリーリレー代表として東京2020五輪に出場し、注目を集めた。

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