日本大学競技スポーツ部では昨今、SDGsを意識した活動を行う競技部が増えつつある。その多くは、地域社会との交流において、競技に関連した形で子どもたちとふれあう機会や場所を提供するものだが、そこでの子どもたちとのコミュニケーションを通じて、学生自身が何かを学んだり、気づかされることも少なくない。地域社会のため、子どもたちのため、そして自分たちのために、これからも競技を通じて社会に貢献できることを考え、“人間力”の涵養に資する。
関連するSDGs
本学自転車部では、パラサイクリング連盟からの依頼により、以前からパラスポーツを支える活動に取り組んできた。パラサイクリングのBクラスにおいてパラアスリートのサポート役として競技を行うことが主な活動になっており、現在は自転車部の三浦生誠選手(文理・3年)がその役割を担っている。
パラサイクリングのBクラスは、二人乗り用タンデム自転車を使用し、視覚障がいのある選手(後席に乗るストーカー)と、晴眼者の選手(前席に乗るパイロット)がペアになってレースを行う。パイロットの選手には、脚力はもちろんのこと、タンデム自転車を支える筋力、ストーカーと同じ動きをするための技術や判断力が必要になる。日本学生自転車競技連盟の競技会には、世界的には珍しくタンデムスプリントという種目が残っており(過去には世界選手権やオリンピックでも採用されていた)、その種目の経験を持つ選手はパイロット役にはうってつけだと言える。ブラインドマラソンの同伴者指名と同様に、視覚障がいを持つ選手がパイロットとなる選手を指名してペアを組むのだが、障がい者を支える立場でありながら、逆に競技者として得られるものはとても大きい。様々なタイプのストーカーとペアを組んでタンデム自転車に乗ることで、パイロットとしての技術力が向上。また、視覚障がいを持つ選手とコミュニケーションするうえでは、伝え方や相手の考えを理解することがとても重要だが、その経験を積むことでコミュニケーション能力が高まることにもつながるという。三浦選手も自身の経験として「走り方をどういうふうに伝えればいいのか。思っていることをしっかり言葉にできないと、相手に状況を上手く伝えることができません」と難しさを感じながらも、それを乗り越えてきたことで日大のチームとして活動する時に「相手のことを考えて自分の思っていることを伝えやすくなった」と、苦労した分だけ成長していると感じており、競技サポートを通じて、パラアスリートと一緒に成長できることは活動として大きな意義がある。
視覚障がいの選手と練習に取り組む三浦選手(前)。
学生自転車の世界では、日体大OBの選手がパイロットとしてペアを組み、メダル獲得など好結果を残している事例もあるが、世界的に見るとオリンピック代表の短距離選手がパラリンピックのパイロットとして走るケースもあり、そのレベルはかなり高い。しかし、勝つことだけがすべてではないという意識を持って、今後も日本大学自転車部はパラスポーツをサポートする取り組みを続けていく。