去る1月17日、日本大学文理学部の百周年記念アリーナにて、フィリピン・聖トマス大学バレー部との交流試合が行われた。日大バレー部としては初となる海外大学チームとのマッチメイクだったが、接戦の試合内容以上に得るものも多い体験となった。

“縁”が重なった対比交流試合

決起会で挨拶する松重バレー部部長

決起会で挨拶する松重バレー部部長

「Maligayang pagdating」(ようこそ!)
交流試合の前の決起会は、フィリピンの母国語であるタガログ語での挨拶から始まった。
 
交流試合の相手、フィリピンにある聖トマス大学は、その歴史が古く、創立は1611年。なんとアジア最古の大学。学力レベルも高いが、バレー部は男女とも国内大学リーグで2番手、3番手あたりの強豪だという。
 
そんな話をしてくれたのは、今回の交流試合を日大にオファーした田中姿子コーディネーターだ。自身も10年前にフィリピンのプロリーグで1シーズンプレー。その時の人脈もあって、今もフィリピン事情に詳しい。

この日、駆け付けた男子バレーボール部OBで、バレーボール男子日本代表のマネジャーを務める坂本將眞氏も、フィリピンのバレーボール事情を垣間見た一人。
 
「昨年、ネーションズリーグで日本代表戦がフィリピンで行われたんですが、アリーナはほぼ満員で、とにかく日本代表選手が人気があるんです。ここは日本か、と思う程。あの光景には驚きました」
 
そんなバレーボール人気、日本人気のあるフィリピンだからこそ、アジアの雄・日本でバレーボールを見たい、学びたい、というニーズがあるのだろう。

元ビーチバレーの日本代表でもあるコーディネーターの田中さん

元ビーチバレーの日本代表でもあるコーディネーターの田中さん

今回の交流戦、田中さんに相談が来たのは、昨年の秋のことだった。
 
「(今回は」聖トマス大学のコーチから『日本に試合遠征に行きたい』と相談受けて、関東大学連盟の方を通して、日本大学にオファーさせてもらいました」

日大としても、男女両チームが来日するのであればせっかくだから、国際交流として受け入れましょう、とコーチ・監督で話し合って引き受けた。ただし、当日のもてなし方については選手たちに一任した。

決起会で挨拶をした日大バレー部の松重充浩部長(通信教育部部長)も、こう話した。
 
「国際交流という点で、視野を広げる、様々な刺激を得る、そのことはひいては、競技としてのスポーツのレベルアップにも繋がると思います。今回のレセプションは学生が考えてやりましたので、そこがプラスになる。われわれとしては、大いに歓迎し、この機会を大いに活かしたいと考えています」

その技術とスピードに審判団も驚いた

迎えるに当たっての想いを語る森垣キャプテン

迎えるに当たっての想いを語る森垣キャプテン

初めての海外の大学との交流試合に際して、男子部キャプテン・森垣陸選手(日本大学文理学部・3年)は、女子部の田邉彩七選手(同)とも相談して、部としての迎えるスタンスを決めて準備をしたという。

「(今回の交流試合を)受けるに当たっては、僕たちが盛り上げていい雰囲気で(相手チームに)終わってもらえるのが義務というか責任だと思って、そこは大事にしました」
 
試合前の決起会に盛り込まれた、記念品の交換で湧き、決起円陣の号令で試合に入ると、人数に勝る日大の選手たち5、6人が、聖トマス大のベンチ後方に移動して応援を始めた。学生たちなりの、“おもてなし”だ。それに呼応して、聖トマス大の控え選手たちも笑顔で大声を出す。
 
試合は想像を超えて、聖トマス大の攻勢で男女共1、2セットを奪った。

この日、男子の主審、副審を高野修氏(サレジオ工業高等専門学校教諭)、山下亮氏(日大櫻丘高校教諭)は、レベルの高さに舌を巻いた。ちなみに、2人は共に日本大学出身で審判資格を取得して現在に至る。
 
「(フィリピンの選手たちの)テクニックの高さとスピードには驚きました。日本の大学生であそこまでのレベルはあまりないと思うので、(日大の選手たちは)非常に刺激を受けたと思います」(高野氏)

フィリピンの大学生のレベルの高さに感嘆した田邉キャプテン

フィリピンの大学生のレベルの高さに感嘆した田邉キャプテン

3セット目から、女子は日大が巻き返して3、4、5セットを奪い返し、男子は4、5セットを獲ってみせた。それでも、女子部の田邉キャプテンは、
 
「(フィリピンの選手たちの)個々の身体能力の差が大きい、と痛感した一日だった。日本のチームと違って、細かいことをしてはこなかった。自分たちの持っているバレーの力をコートでしっかり出していました」と同世代の相手に賛辞を贈った。

一方、今年、“コミュニケーション”を課題にして活動をスタートした男子部は、今回の交流試合は言葉の壁もあって、思うように“コミュニケーション”を取るのは、流石に難しいかと思ったと、森垣キャプテンはいう。
 
ところが、ふたを開けてみると、セットを追うごとに、ベンチは応援合戦。両者共、随所に好プレーが続出した。

自ずと試合後も、相手選手との距離は近づいて、日大選手たちのアーチをくぐって会場を後にする、聖トマス大の選手たちの顔は、誰もがほころんでいた。

両脇に並んで聖トマス大の選手たちをハイタッチで送る日大選手たち

両脇に並んで聖トマス大の選手たちをハイタッチで送る日大選手たち

今回の交流戦では、試合での刺激もさることながら、自分たちでもてなし、成功裡に終えた充実感が、両キャプテンの表情にも表れていた。

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