前年に続き2度目の出場となった全日本大学女子サッカー選手権大会。八戸学院大学との1回戦に9-0で勝利して勢い付いた日本大学女子サッカー部は、ラウンド16で静岡産業大学、準々決勝で早稲田大学と、前年度の準優勝、優勝チームを立て続けに撃破。破竹の快進撃で準決勝進出を果たした。初の舞台となったベスト4は、奮闘の末、山梨学院大学に1-3で敗戦し3位。惜しくも決勝進出はならなかったが、日大女子サッカー部にとって今大会は、新たな歴史を刻んだ実りある大会となった。

 

兵庫県三木市で行われたラウンド16、静岡産業大学戦は、試合前、「まず一つ、越えないといけない山」と持田紀与美監督が話した言葉通り、手に汗握る熱戦となった。概ね主導権を握って試合を進めていた日本大学女子サッカー部だったが、先制点を奪えずにいると、2度のクロスバー直撃のシュートを浴びる。そうした我慢の時間帯をしのいで決勝点を奪ったのは、キャプテンの大沼歩加(日本大学文理学部・4年)。牧野美優(日本大学商学部・3年)の蹴ったFKにニアへ飛び込み、頭で逸らしてネットを揺らした。「トーナメント戦はセットプレーが大事になると思っていた。練習からニアに入ってスラすことは意識していた。試合で決めたのは初めてだったので、嬉しかった」と破顔した主将の一撃で決めたベスト8。相手は、前年度の大会でも準々決勝で対戦して敗れた早稲田大学だった。「シーズンの最初に、『インカレ・ベスト4』と、『早稲田を倒す』という目標を掲げていた」(大沼)日大女子サッカー部にとって、まさに“運命の一戦”となった準々決勝は、“死闘”となった。
 
前半から守勢に回った日大女子サッカー部は、10分という早い時間帯に失点を喫する。厳しい展開を余儀なくされたが、後半開始1分、後半から入った久保華恩(日本大学商学部・1年)のゴールで追い付くと、その後は1人退場者を出す難しい試合となるも、粘り強い守備で失点を防ぎ、PK戦に持ち込む。ここで素晴らしい活躍を見せたのが、1年生GKの山田桜音(日本大学商学部・1年)。90分の中でも1度PKを止めて危機を防いだ守護神は、PK戦でも2本のシュートをストップ。早稲田大を相手に前年度のリベンジを果たすとともに、日大女子サッカー部の歴史を塗り替えるベスト4進出を手繰り寄せた。苦しくても心は折れなかった我慢の守備、さらには10人でも最後まで隙あらば得点を狙いにいく姿勢を見せた選手たちに対し、「最高です!素晴らしい選手たち」と、試合後は持田監督も声を張り上げた。

準々決勝で昨年の優勝チーム、早稲田大をPK戦の末に破った後、年末年始を挟んで迎えた準決勝。インカレ初のベスト4進出を果たした日大女子サッカー部にとって、「新たな景色」(持田監督)となる味の素フィールド西が丘での試合を前に、チーム、選手たちの気持ちは高まっていた。ただし、決勝への道は、そう甘くはなかった。立ち上がりから山梨学院大学にボールを握られ、サイドを中心に劣勢を強いられると、22分、コーナーキックから失点。厳しい立ち上がりとなる。それでも7分後、同点に追い付く。相手GKへプレスをかけてキックミスを誘うと、セカンドボールを拾った牧野のパスに抜け出した藤原愛里(日本大学商学部・3年)が左足で決めた。今大会、巧みなゲームメイクでチームを引っ張った牧野と、左サイドでの突破が光った藤原の3年生コンビによる得点で、ムードは再び上昇。ここからボールをつないで相手エリアへ攻める時間も作るなど、日大女子サッカー部がペースを掴みかけた。ただし、43分に再びコーナーキックから失点すると、前半終了間際にはPKを与えてしまい、3失点目。一気に突き放され、前半を折り返した。後半は開始から攻め立て、交代で入った西野早紀(日本大学文理学部・1年)の背後への飛び出しなどでチャンスも作ったが、反撃の狼煙を上げる2点目は奪えず試合終了。準々決勝での1発退場により準決勝は出場停止となったCBでキャプテンの大沼が不在だったことも響き、セットプレーからの3失点が痛かった。「この大舞台で、気持ちの面でも落ち着いて判断できなかったことや、キャプテン不在の中でどうまとまるかなど、少し難しかった場面もあった」と試合後に牧野も冷静に敗因を分析したが、初の舞台による緊張か、チーム全体が持ち味を出し切れずに終わった面もあったことは否めない。それでも、ここまで粘り強い守備とチャンスを確実に仕留める決定力を発揮してのベスト4進出は、大きな成果だ。

創部8年目にしてつかんだインカレ3位という結果は、日大女子サッカー部に関わる全員にとって誇りとなる勲章であり、ここまでの歩みが間違っていなかった証でもある。準決勝では唯一の4年生としてキャプテンマークを巻いた野口由姫(日本大学商学部・4年)は、「全国でも通用するチームになってきた実感はある」と手応えを語り、「ここまで後輩たちのおかげで勝って来られた。この経験が絶対に生きてくる。西が丘のピッチに立った経験、この感覚を忘れず、来年度のリーグ戦でも勝って同じ舞台に戻ってきてほしい」と後輩にエールを送った。「今年度がスタートした時、チーム全体の目標がインカレでのベスト4だったので、それは達成できた。次は必然と優勝が目標になる」と語る持田監督の言葉も力強い。準決勝の試合後、一度は同点に追い付く得点を決めた藤原が、「来年度の大会では、さらに上に進みたい。日本一を取れるように1年間また準備して、チーム一丸となって、この舞台に帰ってきたい」と誓えば、アシストした牧野も、「来年度は最高学年として、チームの中心として、今年の課題も生かしながら挑みたい」と真っすぐな目で話した。3年生にとっては大学サッカーの集大成となる1年へ─。その視線はすでに来季へ向けられていた。今大会を経験したチームは3年生以下の選手が多く、来年度以降のさらなる成長も期待できる。今大会で得た経験を財産に、新シーズンの戦いへとつなげていきたい。

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