2024年新春の箱根路を、ピンクのタスキが堂々と駆け抜けた。4年ぶり90回目の出場となった第100回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)。往復10区間217.1Kmの道のりに挑んだ本学陸上競技部特別長距離部門は、東京・大手町のゴールまでタスキを途切れさせずにつなぎきり、総合15位でフィニッシュした。

それから3ヶ月、新たな体制でスタートを切った駅伝チームは、昨年の同時期とはまったく違うモチベーションの中で、さらなる進化をめざして走り続ける。

箱根の山を超えるその前に、昨年の自分たちを超えていくために。

(2024年3月取材)

喜びと、力の差を感じた4年ぶりの箱根路

「選手がよく頑張ってくれたおかげで箱根を走るチャンスをもらった」と、昨年10月に予選会を通過して以来、新雅弘監督は取材や記者会見で同じ言葉を繰り返してきた。「私も選手たちも初めての経験なので、分からないことが多い。繰り上げスタートにならないよう、タスキをつなぎきることが目標です」

 

果たして、1月2日の往路は5時間31分51秒で19位、翌3日の復路は5時間34分15秒で18位、総合成績は11時間06分06秒で15位。シード権には届かなかったものの、チームで掲げた目標は見事に達成した。

 

「10000mかハーフマラソンで日大記録を更新したい」という安藤選手。箱根駅伝3区の経験は「ちゃんと走れることができれば、エース級相手でも太刀打ちできる自信がついた」と話す。

「10000mかハーフマラソンで日大記録を更新したい」という安藤選手。箱根駅伝3区の経験は「ちゃんと走れることができれば、エース級相手でも太刀打ちできる自信がついた」と話す。

レースは「ジェットコースターでしたね」(新監督)という展開だった。1区を任された西村翔太選手(2023年度卒)が「他大学の主力選手たちに負けない走りをして、チームに貢献したい」との言葉通り、トップと26秒差の区間4位と大健闘。2区ではシャドラックキップケメイ選手(文理学部・現2年)が一時2位に浮上したものの、中盤から失速して8位に後退した。3区は「レースを楽しむことを一番に考えていた」という安藤風羽選手(文理学部・現4年)が出走。前半から飛ばしていき、「この人たちについていけば、そこそこいけるだろうな」とシード校の選手たちと競り合った。平塚中継所前では3校のデッドヒートから抜け出して僅差の4位でタスキリレー。「走り終えて腕時計を見たら、目標より1分くらい速いタイムだったので間違いかなと思いました」という快走で、「きついというより楽しかったという思いが強かった」と初めての箱根駅伝を振り返った。しかし、続く4区と山登りの5区で順位を落とし、結局往路は19位で芦ノ湖のゴールにたどりついた。

 

「後ろで見守っていて、西村の走りは期待させるものもありましたが、いずれどこかの区間で落ちてくると思っていましたから、特にハラハラドキドキすることもなく、むしろ頑張っているなとか、仕方ないなというような気持ちでした。それでも、ちょっとだけ見せ場を作って、日大をアピールできたかなというのはあります(笑)」(新監督)

翌日の復路は、トップのスタートから10分後、史上最多タイの16校が芦ノ湖を一斉にスタートした。6区は出遅れたが、7区を走った主将の下尾悠真選手(2023年度卒)が総合順位を2つ上げて17位、さらに8区・鈴木孔士選手(法学部・現3年)が1つ上げ、16位で9区の中澤星音(経済学部・現3年)にタスキをリレーした。

 

9区を任されたことに「素直にうれしかったし、タスキをしっかりつなぎきらなきゃいけないという責任を強く感じました」という中澤選手。思うようにタイムを伸ばせないまま、鶴見中継所まであと約3kmの生麦の定点ポイントでは、トップが通過してから19分27秒が経過していた。その差が20分に開くと10区は繰り上げスタートとなり、タスキはつながらなくなる。だが、その背中を押してくれたのは、やはり新監督だった。

 

「ほかのところは見守っているだけでしたが、中澤のラストのところ、あそこだけは力が入りました」という新監督。伴奏車からの声掛けで「3分20秒ペースで行かないとつながらないぞとか、目標を達成してくれとか言いました。中継所で『あと15秒届きません!』とかマスコミが盛り上げて、変な方の感動になることだけは避けたかったんです」

 

一方、中澤選手は「ラスト1kmぐらいで、監督が沿道の方に『中澤コールをお願いします』というような声掛けをしてくださっていて、そこでの声援が最後に力を出し切る助けになったと思います」。そして最後の2.9kmを9分3秒で走った中澤選手は、繰り上げスタート32秒前、10区・大仲竜平選手(スポーツ科学部・現3年)にしっかりとタスキを手渡し、チームの目標は見事に達成された。

 

「つながった時は本当にホッとしました」という新監督は、走り終えた中澤選手に伴走車から「ありがとう」と声を掛けて労い、それを聞いた中澤選手は「タスキをつなげられて良かったという安堵感がわいてきました」と語った。

 

最終順位は総合15位で、優勝した青山学院大との差は25分以上あるが、シード権内10位の大東文化大との差は6分以内。新監督は「タスキをつなぐことができたことはうれしいんですが、他校との力の差もはっきり感じました」と言い、「もともと15番目(シード10校+予選会5位)での出場なので、プラスマイナス0ということですが、まだまだ本当に力が足りません。今はこれが現実ですし、ここからどれだけ上げていけるかというところです。ただ、“箱根を走った”という経験が、きっと今後につながるはずです」と期待を寄せた。

チーム改革へ、学生コーチの設置と3年生キャプテンの抜擢

今年も10月の予選会で「箱根駅伝2025」への出場権を勝ち取ることが大きな目標となるが、記念大会ゆえに13校だった予選会からの勝ち上がりが、通常の10校に戻るため、その戦いは昨年以上に厳しさが増す。

 

「昨年は予選会からの出場が3校多いということで気持ちに余裕もありましたが、今年は例年通り10校になるし、中央大学さんや順天堂大学さんも予選会に回りましたから、相当厳しくなると思います。しかし、今年も予選を突破して本戦に出場しないと、去年の結果がたまたまとか言われて価値がなくなる。だから今年が本当の勝負なんです」

 

チーム改革を3年計画で考えているという新監督は、2年目を迎えるにあたり新たな施策を採り入れることを決めた。

その1つが、これまでなかった「学生コーチ」という役職の設定。「マネージャーではなく、もうひとつ上の目線から選手たちを見てほしい。私が不在の時でも指導者という立場から全体を見て指示を出し、しっかり締めてほしい」と、その意図を語った新監督。「きちっと選手に意見を言えるから」と、早見英晃選手(経済学部・4年)を学生コーチに指名した。

新監督に不在時は、代わりに選手たちの状態に目を配り、情報を共有。「監督の判断材料になればいいなと思っています」という早見学生コーチ。

新監督に不在時は、代わりに選手たちの状態に目を配り、情報を共有。「監督の判断材料になればいいなと思っています」という早見学生コーチ。

「箱根駅伝が終わった翌日に言われました」と話す早見学生コーチ。昨年は病気などが重なって練習を思うようにできず、走る機会も減っていた。新監督の練習メニューをこなす仲間たちを見て、「言われたことをちゃんとやっていけば、例えそれがきついものだったとしても、最終的には結果につながっていくんだなと思いました」。そして、1週間の帰省中にいろいろと考えて気持ちを整理し、「与えられた仕事でチームに貢献しよう」と覚悟を決めた。

 

「正直初めての試みなので何をどうすればいいかわからないし、何が正解かもわからない。でも、僕がやった成果次第で、今後も学生コーチという役職が継続されるかどうかということなので、任命された以上はやるだけやってみようと強く思いました」

 

新監督が作った練習メニューを見て、「この選手にはまだ早いんじゃないか」など、選手の状態を見ながら気になったことがあれば、監督に意見することもある。「故障者が出るのが一番イヤなので、練習を見てちょっと変だなと思うことがあればすぐに伝えます。少しでも選手が良い方向に行ってもらいたいという思いで行動していて、日々何かしらのアドバイスだったりサポートだったりができればいいなと思っています」

そうした早見学生コーチの姿に新監督も大きな信頼を置く。「私が見えないところでも、選手たちといっしょに生活しているわけですからよく見えている。選手目線からいろいろと考えを言って、こちらにヒントをくれるので、とても助かっています」

 

選手として箱根路を走る喜びを味わうことはできない。だが、仲間たちを叱咤激励しながら、その喜びを味合わせることはできる。「チームが箱根で勝負できるようにしなきゃいけない」と語る早見学生コーチの存在そのものが、新チームの大きな戦力になるに違いない。

 

 

チーム改革のもうひとつの試みは、主将を通常の4年生ではなく、3年生にするというインパクトの強いものだった。

 

「新チームの中心となる安藤をはじめ3人の4年生には競技力で引っ張ってほしい、下級生に見本を示してほしいということ。まずこの考えを4年生たちに伝えて、『縁の下の力持ちになってやってくれ』と話をしました。そして彼らに主将を決めさせました」(新監督)

 

安藤選手は言う。「個人的には4年生が主将として引っ張りたいという気持ちはありましたが、監督の考えを聞いて、どういう形であれチームを支えていければいいのかなと思ったので承諾しました。僕らは走りで結果を残し、チームへの貢献を見せていきたいと思います」

 

また早見学生コーチは、最初に話を聞いた時、特に驚きやネガティブな感情はなかったと言う。「4年生の選手は3人しかいないので、その中で主将の適性はわからなかったし、適任がいなかった。今年1年だけじゃなく、その先も考えて3年から主将を出すというのは、むしろ新監督らしいなと感じました」

 

4年生4人で話し合った結果、主将として指名されたのは中澤選手だった。

「4年生から自分が主将で、副主将には大仲になってほしいという話をされた時はとても驚きました。主将に選んでくれたことに喜びもありましたけれど、それ以上に自分が果たしてやっていけるのかなという不安の方が大きかったです」とその時の心境を語った中澤主将。人に相談しながら数日間考えた末に、2年間に及ぶ大役を引き受けることを決めた。

「他の選手が全員が絶好調だったら、僕は箱根を走れていなかったかもしれない」と話す中澤主将。「この1年で継続して練習すること、地道に努力することの大切さを痛切に感じました」

「他の選手が全員が絶好調だったら、僕は箱根を走れていなかったかもしれない」と話す中澤主将。「この1年で継続して練習すること、地道に努力することの大切さを痛切に感じました」

「僕は人前に立って『みんな行こうぜ!』というタイプではないですし、現状では結果を出して背中で見せるというような力があるわけでもない。それでも『やるときはやらないと』という感じなので、コミュニケーションを大事にしながらやっていくしかないと思っています」

 

昨年、2年生という立場で、最上級生が何をやっていたかは見ていなかったし、主将として何をやればいいのかも全くわからなかったが、「少しだけ時間が経って今思うのは、昨年の下尾主将は練習の時の移動や一つ一つの行動が早かったり、率先して動いていたなということ。そういうところから真似していけばいいかなと考えています」と、落ち着いた口調で話す中澤主将。現在のチーム状況については、すでに冷静に客観視している。

 

「昨年は、新監督が来られてから、何としても箱根に出たいという思いが強くなり、チーム全員の意識が箱根一本に向かっていました。今のチームを見ると、まだその意識が一つにまとまりきれていないと感じています。今回も出られるとは限らない中で、もう少し全員が危機感を持ってやらないとダメかなと思いますし、部員の意識を変えていくことが必要かなと思います」

先日参加したキャプテン研修会では、新たな気づきを得たという。グループメンバーの意見がまとまりきれなかった際、「全員の意見を汲み取るのは難しいので、それをどう解決するかという時、全員が向かう一つの目標を決めて、そこへの道筋を立てることが大事」との講師の説明に得心した。

「新入生を含め50人いるチームなので、全員の意見が1つにはなりません。その時に“箱根駅伝出場”という目標に対してどこをやるか、やらないのかを考えることが大切だと思いました」

 

「謙虚であることが大事」と話す中澤主将は、「日々の行動や生活から地道に積み重ねていき、練習も継続してやっていくこと。ただこなすだけではなく、練習後のケアも含めてどこまで丁寧にできるかというところが必要だと思う」と、めざすべきことを口にする。そして「自分一人の力ではチームをまとめられるわけではないので、4年生の話を聞きながら、戦えるチームをつくっていきたいと思います」と、改めて決意を語った。

 

新監督は「今年は4年生がしっかり中澤主将、大仲副主将を支えてやってくれると思います。中澤も1年経験して、4年生になったらまた楽な気持ちでチームを引っ張ってほしい。1年やっているぶん余裕ができるし、今年いろいろ苦労したことを来年に活かせたら、チーム力も上がるんじゃないかな」と期待している。

来年も箱根を走れるとは限らない

「3年生の主将と学生コーチというのは、次へ向けたチャレンジです」という新監督のもと、2年連続91回目の箱根駅伝出場に向けて動き出した駅伝チーム。「就任してまだ1年経っていませんが、当初に比べればだいぶ成長したなと思います」という指揮官は、選手たちへの期待と危惧を語った。

 

「昨年は陸上競技場が工事のため半年間使えず、学外を走っていたので箱根駅伝本番まで思うような練習ができませんでした。リニューアルした新グラウンドで練習を始めて1週間経ちますが、朝練習からしっかり集団走ができるので距離も踏んでいますし、勢いを感じますね。全部じっくり見られるので選手は手を抜けませんし、気持ちの面でもだいぶ違うと思うので一段と強化ができると思います。走っている様子を見ていると、またやってくれるんじゃないかという期待感はあります」

 

その一方で、「選手たちの中には、昨年走れたから今年も走れる、本戦出場を簡単だと思っているような節も感じますが、指導者としての感覚ではそうじゃないですよ」と表情を引き締めた新監督。「それまで低迷していたチームが、あれだけできたんだからという安心感、それは絶対ダメだと言っています。前回走った選手が何人いたとしても、他校はもっと上がっていきますから、昨年と同じことをしていては勝てません」

 

実際、昨年は距離に対する不安をなくすための走り込みを中心とした練習メニューだったが、今年は「走り込みプラス、スピード力。一定のペースでは走りますけど、ハイペースのレースだと置いていかれるので、他校と対抗できるようにスピード強化もしていかないといけない」と、明確なテーマをもって練習に取り組んでいる。

 

さらに、「出ても戦えるレベルにないから」と昨年は記録会等に選手を出場させなかったが、今年は「練習がちゃんとできていて、力のある選手は武者修行のつもりで、どんどん試合に出していきたい」と方針を変更。「走って自信をつけたり、他校の選手とどれだけ対等に走れるかを知る必要がある」と、レース感覚や駆け引きを身につけさせるのが狙いだ。

 

3月に行われた学生ハーフマラソンには、チームから14人の選手が出場。それぞれが課題と収穫を得たレースだったが、その中で自己ベストを更新し、日大勢トップでゴールしたのが天野啓太選手(文理学部・現2年)だった。

「この1年、大きな怪我をして苦しい時期もありましたが、練習をしっかり積むことでそれを乗り越え、自信をもってスタートラインに立てるようになりました。新監督の練習を信じて継続してやってきたことで、10000mやハーフマラソンなど長い距離でタイム的にも成長したなと思っています」

 

 

新たな方針を打ち出す一方で、新監督はまた、昨年取り組んだ生活面での改善を改めて見直すことも重要だと力説する。

「昨年できたことを継続してやっていますが、もう一段上のレベルにしないとマンネリ化します。きちっとした生活をして、当たり前のことを当たり前にできないと強くなれません。当たり前にやるというのは難しいことですから、挨拶からスリッパ並べ、集合時間、朝の体操など、何回も繰り返しです。そして、しっかり授業に出て単位を取ること。単位を取れない選手は試合に出さないとはっきり言っています。学生の本分としてはまず勉強、それから競技力ですから。卒業して社会に出た時に大事なのは人間力であって、陸上だけやっていてもダメなんです」

 

そうした中、今年は21人の1年生が入部。「強い選手ばかりじゃないので、昨年と同じような形で土台作りからしっかりやっていく。先輩を見習ってしっかりトレーニングしてほしいし、やってもらわないと。彼らがどういう気持ちで入部して、どういう目標を持っているのかなども聞いて、しっかり育てていく」と、新監督は新入生に期待する部分も大きいと話す。

 

その一人、「前半から攻める走り、スピードには自信あります」という齋藤健人選手(スポーツ科学部・1年)は、大学の練習に参加して長距離種目が主戦場となることを改めて実感。「トラックでもタイムを出したいですし、箱根駅伝にも出たいので、1500mから10000m、ハーフマラソンまで幅広く走れる選手になりたい」と抱負を語った。

シード権争いに絡むために、もう一度箱根をつかみにいく

4年ぶりの箱根復帰とタスキリレーの完遂により、周囲からの期待は確実に高まっている。チームはそれにどう応え、どこをめざしていくのか。

「やはり地道にやっていくしかないと思うんですよ」という新監督は、「まず本戦に出ること。そして今回は“シード権を獲る”ではなく、“シード権争いに絡みたい”です」と目標を定めている。

 

「多くの方が、すぐにシード、シードと言いますが、そこまで本学は選手もいないし、私もまだ1年しかやっていないので、まずは本戦出場が目標。シード権奪取を宣言するにはハードルは高いけれど、出場してシード権争いに絡むことができればチャンスはあるので、絡めるところまでいきたい。選手たちは『獲るのが目標』と言うかもしれないし、気持ちはそう思ってくれていいけれど、トータル的に見て今のレベルじゃ厳しいなと思うので、私の言葉では『絡みたい』というのが精一杯です(笑)」

 

それでも、8月の夏合宿を経て、選手たちがどう変わるのかに期待したいと新監督は言う。

「今は全然無理でも、夏合宿でコロッと変わりますから。どれだけ夏に1ヶ月しっかり走り込めたかが大事で、それによって自信がつきます。昨年も夏合宿を越えて一気に変わりましたよね。今年も夏を超えて変身するのを狙っているので、今はフラフラでもいいんですけど、夏合宿でバシッと自信がつけられるように、自信を持って走れるようにしたいというのが私の考えです」

 

特に伸びてほしい選手を問うと、新監督はすかさず「みんなでしょ」と即答。「総合力で戦うチームなので、みんなが伸びてくれないと。昨年より1人でも2人でも、長い距離を自信を持って走れる選手が出てきたら強くなります。スター選手はいませんから、日本大学の特別長距離部門としてチーム一丸となって総合力で戦かっていく。走る選手も控えの選手も、スタッフも一丸となってやっていきましょうという気持ちです」

 

改めて選手たちに「目標」に向けての意気込みを聞くと、中澤主将は、「シード権を争って戦えるチームに変えていかないといけないと思っています」。また個人としても「今年はギリギリで走らせてもらったという感覚なので、箱根で戦えるタイムを出せるように努力して、自分の力で出走を勝ち取りたい」と強い思いを語った。

 

「日大のエースだという自覚を持って、他校のエースたちと真っ向勝負していきたいし、気持ちで負けないことが大事」と答えたのは安藤選手。「来年の箱根でもそういうエースの走りを求められると思うので、その期待に応えられるように力をつけていきたいと思います」と胸を張った。

 

今年は復路8区にエントリーされていたものの、当日変更で出走できなかった天野選手は、その悔しさを糧として箱根駅伝出走に照準に合わせている。「自分の実力不足でした。次こそ、主力区間を任せられるような選手になり、そこでしっかり結果を出したいと思います」と、胸に秘めたものは熱い。

そうした選手たちの成長を心待ちにしているのが、新監督にほかならない。

 

「今はまだ始まったばかりだからダメでもいいけれど、夏を過ぎればきっと変わっているはず。そうじゃないと面白くないじゃないですか。その成長を見るのが楽しみですし、その先、3年計画の最後の年にどうなっているかも楽しみです」

そしてもう一度、「とにかく、シード権争いに絡みたいです」と、新監督は笑いながら言葉を付け加えた。

 

今秋、そして新春に、大きな歓喜をつかみ取るために。

“ニチダイシンジダイ”の第2章が日々綴られていく。

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