2024年10月4日(金)、本学は創立135周年を迎えた。創立記念日として一部を除き休校となったこの日は、「日本大学Day」として東都大学野球秋季1部リーグ戦「日本大学-國學院大學」(神宮球場)の観戦イベントを実施。林真理子理事長、大貫進一郎学長もスタンドで観戦し、多くの学生たちと共に声援を送った。そして、接戦となった試合の最後にはドラマティックな結末が待っていた。
始球式で大貫学長がナイスピッチ
この日は朝から時折小雨がパラつく生憎の空模様。しかし、大学HPでの告知や大学からのお知らせメールで観戦イベントがあることを知った学生たちが、次々と神宮球場に来場。在学生のために用意された観戦チケット・応援グッズ(先着1,000名)を受付所で受け取り、球場内に入っていった。
午前9時からの試合開始に先立って、大貫進一郎学長による始球式が行われた。「NIHON」のロゴがあしらわれた野球部のユニフォームを身にまとい、スタンドに着席した林真理子理事長から「学長、頑張ってください」と激励されてマウンドに立った。小学生の頃に野球をやっていたことがあるというものの、「ボールを投げるのは何十年ぶり」ということで、1週間前から指導を受けながらピッチング練習を重ねてきたという。
その甲斐あって、本番では南條碧斗捕手(危機管理学部・3年)が構えるミットにノーバウンドで収まるナイスピッチを披露。林理事長をはじめ一塁側スタンドに陣取った応援団や学生・教職員たちから大きな拍手が送られる中、笑顔でマウンドを降りてきた大貫学長は、安堵の表情を浮かべていた。
受付開始(午前8時30分)の30分前には、早くも多数の学生が受付所に並んだ。
試合前、大貫学長は「皆さんの勇姿を楽しみにしています。伸び伸びと頑張っていただきたい」と、選手たちを激励。
「(打席に立つのが)左バッターだったので練習の時とちょっと感じが違った」と言いつつもノーバン投球を見せた大貫学長。
始球式を終えた大貫学長は、「マウンドで投げるという、小学生の時からの夢が叶いました。何とかノーバンで投げることができ、とても気持ち良かったですし、貴重な経験をさせていただき、たいへんありがたいと思います」。さらに「創立記念日の今日は、いろいろな意味で日本大学が新しい出発をするというところだと思いますので、そういう気持ちで始球式に臨みましたし、学生たちのために大学をもっと良くしていこうという思いをボールに込めて投じました」とにこやかに話した。
今年4月の学長就任から半年、林理事長と共に取り組んできた学内改革の成果について尋ねると、「日本大学全体としてはかなり良い方向に進んでいると思っています」。競技スポーツセンターの設置もその一つだとして、「ガバナンスが効いた形で“大学スポーツは何か”というところを示していくことが日本大学の使命だと思っています。プロではなく、あくまで学生のスポーツであるということを改めて認識し、競技スポーツセンターに所属する選手たちの将来につながるように、スポーツを通じた教育を進めて行きたいと思っています」と意気込みを語った。
また、今回の観戦イベントのような取り組みについても「もっと実施していきたい」と前向きで、「これまであまり機会がありませんでしたが、学生や付属高校の生徒さんが一堂に会するような機会があると、日本大学としての一体感や日本大学に入学したメリットを感じていただけるものと考えています」。
実際、平成29年度から実施している「日本大学ワールド・カフェ」(16学部・短期大学部の16,000人を超える学生が混在して行うグループワーク)は、様々な学部の学生と交流し、学びのモチベーションを高め、視野を広げることができるという点で多くの学生から高い評価を得ている。今夏に実施された「ワールド・カフェ」に参加し、学生たちの生の声を聞いた大貫学長は、「むしろ学生の方が、大学の将来や自分たちの将来をしっかり見据えているところもあります。私たちはその声を真摯に受け止め、改善・改革を進めていき、社会の皆様からの信頼回復を進めていかなければいけないと改めて感じました」と振り返った。
実はこの日の午後も、「スマイルキャンパスプロジェクト」の一環として本学の付属高校生たちといっしょに劇団四季の公演を観劇するイベントに出席するとのことで、「いろいろなスポーツや芸術等において、今日のような機会を学生さんたちに提供していきたいと思います。野球のあとは芸術…これが日本大学の多様性というところです(笑)」
創立記念日にふさわしい勝利に湧き立つ
観戦イベントが行われた國學院大學との2回戦。3日前に行われた1回戦は1-3で敗れているため、秋季リーグ戦優勝をめざす上では絶対に負けられない試合だった。
一塁側応援席には、野球部員による応援団と応援リーダー部、吹奏楽研究会のメンバーが陣取り、本学の攻撃時には応援演奏と掛け声で盛り上げる。
ベンチ上のスタンド最前列には林理事長と大貫学長が並び、守備でのファインプレーには大きな拍手を送るなど、観戦イベントに興味を持って参加した一般学生たちと共に熱い視線をグラウンドに注いでいた。
「選手にとって勝つことは当然大事なことですが、野球を通じて人生経験を積んでほしい」と話す大貫学長(右)。林理事長(左)は「学生の試合は清々しい」と、東都大学野球初観戦の感想を語った。
林理事長は試合の合間に応援団や応援リーダー部、吹奏楽研究会がいる場所へ足を運び、「みんな、応援ありがとう」と学生たちに声を掛けて回った。
調べによれば、本学の一般学生のほとんどは、野球のみならず競技部の試合を観戦したことがなく、競技部の存在自体を知らないという学生も少なからずいるという。それでも、朝一番での試合に関わらず、大勢の学生が受付開始時間前から観戦チケットを求めて列をなした。中には、神宮球場までかなり遠い工学部(郡山市)や国際関係学部(三島市)から、はるばる足を運んでくれた学生もいた。受付で配られた応援グッズを手にスタンドに向かった彼らの熱い声援は、きっと選手たちにも届いていたことだろう。
白熱する試合を熱心に見つめていた何人かの学生たちに話を聞くと、いずれもこれまで大学スポーツを観戦したことはないというものの、「こういう経験ができるのは日大生としてうれしい」という答えが返ってきた。
文理学部の友人2人と共に観戦していた法学部2年の女性は、「私が野球経験者なので興味があったのと、吹奏楽研究会に友人がいるので、今日はちょっと見てみようかなと思って来ました。 “青春”という感じがして楽しい雰囲気なので、また来たいですね」との感想。また、「選手に知り合いはいませんが、チケットをもらえるなら行ってみようかということで来ました。機会があればラグビーやサッカーなどの試合も見てみたい」(文理学部の男性3人組)、「楽しいですね。チケット配布がなくても、バレーボールやバスケットボールの試合は見たいと思います」(生物資源科学部の女性2人組)と、観戦イベントは学生たちにも好評だった。
野球部員と応援リーダー部、吹奏楽研究会のメンバーが一丸となって選手たちを応援。試合後半には、その盛り上がりに加わろうと、近くに席を移動する一般学生の姿も見られた。
試合は両校譲らず、3対3の同点で延長タイブレークに突入。延長2イニング目の11回表、エースの市川祐投手(法学部・3年)が無死満塁からレフトへの2塁打を浴び2失点して後がなくなった。
しかし、11回裏の本学の攻撃は1死1・3塁となって、打席には4番・谷端将伍3塁手(経済学部・3年)が入る。春季リーグ戦で打率と本塁打の2冠王に輝き、この試合でも6回に右前適時打を放っている勝負強い谷端選手に、スタンドで見守る誰もが起死回生の一発を期待していたに違いない。そして、その願いは見事に現実のものとなった。
内角のストレートを振り抜くと、低い弾道で飛び出した打球は「行けー!」という大歓声に後押しされるようにレフトスタンド最前列に飛び込む逆転サヨナラ3点本塁打。グラウンド内の選手たちはもちろん、応援席の学生たちは互いに抱き合い、ハイタッチをして歓喜に湧いた。「谷端すごい!」「まるでドラマのようだ」といった興奮した声があちらこちらで聞こえる。林理事長も大貫学長も立ち上がって拍手を送り、満面の笑みを浮かべながらスタンドの観客に一礼する選手たちを称えた。
大貫学長は「素晴らしい試合、劇的でした。学生たちが頑張ってくれ、創立記念日にふさわしい、いい戦いを見せてくれました。この勝利をまた次につなげてもらえたらと思います」と興奮冷めやらぬ口調で話し、林理事長も「すごいですね。一体感があって素晴らしいと思いました」と、劇的勝利の味を噛み締めた。
他の競技でも、観客の声援は選手たちの大きな力になる。選手たちと観客が一体となり、1つの大きなチームとして戦い、楽しみ、経験し、学ぶことが、大学スポーツの原点だと言えよう。大貫学長が話す通り、そして学生たちが望むように、スポーツでもスポーツ以外でも、「チーム日大」を体感する機会が増えていくことを期待したい。
11回裏にサヨナラ本塁打を放った谷端選手。「いつも以上に気合が入った。声援のおかげで打てました」
試合終了の挨拶を終え、谷端選手(中央)はスタンドの歓声に応えた。