⽇本⼤学競技部の卒部式の前⽇、卓球のプロリーグ・Tリーグの年間王者を決めるプレーオフファイナルが⾏われ、本学卓球部の⼩林広夢選⼿(スポーツ科学部・4 年)がʻ23 年から所属するT.T.彩たまが初優勝。この2年は、⼤学での試合とプロでの試合を両⽴させてきた⼩林選⼿だが、卒業を機に、かねてから考えていた本格的な海外ツアー参戦に向けて動き出した。現状に満⾜せず、「まだまだ、これから」と⾃らを奮い⽴たせ、⼤学4年間の学びを⼒として、⼩林選⼿の挑戦がこれから始まる。
多くのことを学んだ、濃い4年間だった
−卒業おめでとうございます。そして、プレーオフファイナル優勝、おめでとうございます。

ありがとうございます。Tリーグでは年間を通していいプレーができて、チームに貢献できたと思います。ファイナルは、やはり緊張感がいつも以上にあって、試合(初戦のダブルス)に勝った後は放⼼状態でしばらくボケッとしていて、それくらい集中してやっていました。試合後は、今シーズンの打ち上げを兼ねて祝勝会に⾏って、みんなで喜びを分かち合いました。
−⽇本⼤学で過ごした4年間はどういうものでしたか?
⼊学してからの成績の伸びは、⾃分でもびっくりするぐらいでした。⼤学での4年間というのは、とても⼤事な時期だとわかっていたんですが、⾃分が思っていた以上の結果が出たので、とても濃い4年間だったと思います。いろいろあったけれど、やっぱりいいことが多かったなと感じます。
−最も思い出に残っているのは昨年の全⽇本選⼿権男子ダブルスの優勝ですか?
そうですね、やはり全⽇本の優勝はなかなかできることじゃないですから、本当にうれしかったですね。今年は準決勝で負けてしまいましたが、相⼿にマークされ、対策をされていた感じですね。Tリーグで戦っていてもそうですが、やっぱり勝てばそういう対策は絶対されるっていうのを感じながらの試合でした。ただ、伊藤(礼博、経済学部・3年)とペアを組む最後の⼤会ということで、試合を楽しむことを優先にやっていたので、そういうところでの結果かなという感じです。
−スポーツ科学部での学びから得たことはありますか?
やっぱり体のことについてですね。選⼿として競技はもちろん⼤事ですが、それ以外のこと−ケアについてや、⾷事、トレーニングなども⼤事だと分かっていて、学ぼうと思ってもどこから学んだらいいのかよく分からないというのが僕⾃⾝にもありました。しかし、プロ選⼿としてやっていくならばなおさら、そういうことを知っておくことが絶対必要になると考え、関連した授業を積極的に取っていました。そういう⾯の意識は4年間ですごい変わったかなと思います。
−他競技の選⼿との交流はありましたか?
友だちになったというのはありませんが、学部にはさまざまな競技の⼈がいて、授業などで競技に関する発⾔や発表を聞いていると、⾃分にはないものを「こんな感じでやっているんだ」と驚かされることもあって、とても参考になりました。たとえば、陸上の選⼿の動きや練習というのは卓球にも活⽤できるところがあるなと感じて、速く⾛る⽅法だったり、ジャンプだったりのコツというか感覚的なものは、僕にないものでした。授業じゃないとなかなか聞けないようなことだったし、実際にそれを採り⼊れて活⽤できたのはとても有り難かったなと思います。
−T.T.彩たまでの2年⽬でしたが、⼤学の部活との両⽴は⼤変でしたか?

髪を⾦髪にしたのは、⽬⽴ちたいというプロ意識からで、「卓球選⼿は地味なイメージがあるのに、何でみんなやらないんだろうって思っていました」という⼩林選⼿。「周囲の反応もいいですし、 ⾃分でも気に⼊っているので、しばらくはこれでいきます(笑)」
学⽣の⽴場では、⽇⼤にとてもお世話になっているので、やはり恩返しをしたいという気持ちでしたし、TリーグはTリーグで、⾃分より年⻑の選⼿がしのぎを削っている中でプロ選⼿としての経験を積みたいっていう気持ちでした。どちらかに切り替えるというよりも、⽬的をしっかり整理して取り組むことが⼤事だと思いますし、なんとなくどちらも⼀緒の感じでやっていては成⻑がない。それぞれで環境も雰囲気も違うし、1つひとつが⼤事な試合になってくるので、臨機応変に対応できる能⼒が重要であって、今後海外で戦っていく上でも絶対に必要な⼒です。そういうことを想定しながらやってこれたのは、いい経験になったかなと思います。
−この4年間で、⾃⾝が⼀番成⻑したと思うところは?
プロリーグに参加することによって、プロ意識がすごく芽⽣えたと思います。⽢い世界じゃないということをすごく痛感しましたし、今後もプロとしてやっていくにはもっと意識を⾼めていく必要があるという、そういう意識のところが⼤きく成⻑したと実感しています。はっきり⾔って、1年⽬は勝って当たり前の存在ではなく、勝ったらラッキーだよねっていうぐらいの⽴ち位置でしたが、2年⽬は絶対勝たないといけないっていうポジションにいて、その上でこの成績が出たっていうのは⾃信なりましたし、ここで満⾜するんじゃなくて、もっともっと上を⽬指していかないといけないという気持ちになりました。
−逆に、苦しかったことはありますか?
苦しいと感じたことはあまりないですね。苦しいという捉え⽅じゃなくて、いい経験ができて、いいことを学べた、成⻑できたっていう感覚です。周りは僕が絶対勝てると思っているかもしれませんが、僕⾃⾝はまだまだ⾃分のほうが下だと思っているし、全部勝ちたいのはもちろんですが、負ければ悔しい。それを苦しいと感じるのではなく、負けたことで、それを次に活かして成⻑するということができている。「まだまだ、ここからだよ」と、⾃分に⾔い聞かせてやっています。
2024 年の全⽇本選⼿権男⼦ダブルスでは、後輩の伊藤礼博選⼿(奥右)と息の合ったプレーで快進撃。決勝でも強豪ペアを破り、⽇本⼀の栄冠をつかんだ。
Tリーグのプレーオフでは、セミファイナル、ファイナルのダブルスで勝利。チームに勢いをつけ、初優勝に貢献した。
後悔しないために、チャレンジする
−来季は海外が主戦場になるのですか?
⼤学卒業を機会に、海外ツアーに出ていこうと考えています。最初は⾃費参加になってしまいますが、それでもやっぱり世界トップレベルの舞台で戦いたいという⽬標がありますし、今22歳なので競技⽣活の残りもそんなに⻑くはないと思っているので、悔いのないように。もちろん失敗する可能性はありますが、やらないでいて後で「やっとけば良かった」と後悔するより、たとえ失敗することになっても、⽬標に向かってチャレンジしていきたいと強く思っています。
−海外挑戦にあたっての準備は?
やはり⾔葉の部分が重要で、勉強しなければと思ってはいましたが、シーズンもあってなかなか難しく、まだ できていません。ただ、⽇⼤に⼊ってから海外に何回も⾏かせてもらいましたし、特に1・2年⽣の頃はドイツでプレーさせてもらったので、ある程度はだいじょうぶですが、まだまだ⾜りないところもある。そこはもっと勉強していきたいと思っています。
−世界と戦うために、より強化すべき点は?

技術的なこととメンタル的なことの2つがあります。技術的なことで⾔えば、フォアハンドでしっかり威⼒を出せるようにして、かつ安定も求めていきたい。メンタル的なことでは、ツアーで各地を転戦するというのは移動が⻑く、⾃分のベストなコンディションで試合に臨めないこともあると思うので、そういう時に逃げ道をつくるのではな く、そこも含めてプロだよねっていう覚悟を持って⾏かないと、負けた時に⾔い訳が出てきてしまう。そういうメンタル⾯のプロ意識というところはまだまだ⽢いので、これからはとても⼤事になってくると思っています。
−新たなチャレンジへの⾃信と不安は?⽬標は?
⾃信がないわけではないけれど、新しいことにチャレンジするという不安もあって、そこは五分五分かもしれません。どちらかというと、⾃分がどこまでいけるんだろうという楽しみの⽅が⼤きいですね。⽬標は勝つことで世界ランクをあげていきたい。その先はロス五輪もありますが、とりあえずこの1年やってみて、どこの位置を⽬指せるかわかりませんが、可能性が少しでもあるならそこを⽬指してやっていきたいなという思いはあります。
−最後に、後輩たちへメッセージをお願いします。
4年間の中でインカレの優勝ができず、僕⾃⾝すごい悔しい思いをしています。後輩たちならば、僕からのさまざまなアドバイスを活かし、僕の思いを受け継いでやってくれると信じているので、リーグ戦の優勝はもちろん、インカレ優勝を目指して頑張ってほしいと思います。
−さらなる活躍を期待しています。ありがとうございました。
「常に前向きに、チャレンジすることを忘れずにやっていきたいという思いで、“成長”と書きました」という小林選手。Tリーグのシーズンは終了したものの、「ほかの試合もあるので、1ヶ⽉くらいしかないです」という束の間のオフにやりたいことは「時間があれば⾃動⾞免許を取りたいですね」。
Profile
小林広夢[こばやし・ひろむ]
2002年⽣まれ。東京都出⾝。愛⼯⼤付属名電⾼卒。2025年3⽉、スポーツ科学部卒業。⾼校3年時の全⽇本選⼿権⼀般の部でランクインし注⽬を集める。⼤学⼊学後はドイツ・ブンデスリーガにも参戦。’23年の全⽇本学⽣選抜男⼦シングルスで優勝。ʼ24年1⽉の全⽇本選⼿権男⼦ダブルスでは、1学年下の伊藤礼博選⼿(経済学部)とのペアで⽇本⼀に輝いた。また23/24シーズンからT.T.彩たまに所属してプロ活動を開始。24/25シーズンはリーグ戦でダブルス18勝4敗の好成績を挙げ、プレーオフ2試合も勝利してチームの初優勝に貢献。卒業にあたり⽇本⼤学学⻑賞を受賞した。