異例のシーズンとなった関東大学ラグビーリーグ戦において3位となり、昨年度に引き続き第57回全国大学ラグビーフットボール選手権大会への出場を果たした本学ラグビー部。福岡工業大との初戦に大差で勝利すると、昨年の準優勝校・明治大との対戦となった12月19日(土)の準々決勝も、チーム一丸となって奮闘。力及ばず敗れはしたものの、2大会連続ベスト8入りという結果は、着実にチームの地力が向上していることを知らしめるものとなった。

 

昨シーズン、6大会ぶりの全国大学ラグビーフットボール選手権大会出場を果たし、チームスローガンとして掲げる“STRONG AGAIN”を見事に体現した、本学ラグビー部。かつて、「ヘラクレス軍団」として恐れられたチームは再び輝きを取り戻しつつあり、今季はさらなる上位進出が期待されていた。
しかし、第54回関東大学ラグビーリーグ戦は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、例年よりスケジュールが後ろ倒しとなり、対戦校に感染者が出るなどのアクシデントも発生。最終的に勝ち点で東海大・流通経済大と並んだものの、総得失点差により3位に留まった。それでも、「シーズンが深まるにつれてチームが成長し、大東文化大戦(11月21日/88-5)では大量得点で勝つこともでき、収穫のあるリーグ戦でした」と、主将として、FWの最前列ポジションとして、チームを牽引するHO・藤村琉士選手(商・4年)は振り返った。昨年、主将を務め、現在は大学院に籍を置いて活動するPR・坂本駿介選手(大学院・1年)も、「今年は部としての活動が厳しい状況の中、藤村主将を中心に上級生がチームをまとめ、良い成績を残せました」と、リーグ戦期間を通じてチーム力の高まりを感じていた。

U18フィジー代表経験者のトゥポウ選手は、福岡工業大戦で4トライを挙げる大活躍。

U18フィジー代表経験者のトゥポウ選手は、福岡工業大戦で4トライを挙げる大活躍。

12月13日(日)、聖地・秩父宮ラグビー場。青空が一面に広がり、風もない良好なコンディションの中、第57回全国大学ラグビーフットボール選手権大会の初戦となる、福岡工業大との試合を迎えた。
相手キックオフからの立ち上がり、敵陣22mライン付近のマイボールラインアウトからドライビングモールで押し込み、No.8・シオネハラシリ選手(スポーツ科学・3年)が、電光石火のトライを決めて5-0とし、幸先の良いスタートを切った。さらに前半6分、自陣でボールを持ったCTB・フレイザークワーク選手(スポーツ科学・3年)が一気に相手陣内までゲインすると、ボールはWTB・ナサニエルトゥポウ選手(スポーツ科学・2年)に渡り、そのままトライまで持ち込んで追加点。序盤で10-0とリードすると、その後はBK陣が怒涛のトライラッシュを見せ、出場したWTB、CTB、FBの全選手が得点を挙げた。終わってみれば、18トライ9ゴールを決め、108-0と大差をつけての完封勝利。「チームとしてボールが良く回ったおかげで、自分がボールを持つ機会が増え、結果に結びついた」と、持ち前のスピードと相手を払いのける強さでトライを量産したトゥポウ選手は、自身の活躍はチームプレーの賜物であることを強調。FWを中心としたラグビーを強みとしながらも、試合ごとにBK陣が目覚ましい成長を遂げてきた今シーズンを象徴するような戦いぶりで、2年連続のベスト8へ駒を進めた。

リーグ戦でベスト15にも選ばれた藤村選手。主将として、試合中もチームを鼓舞し続けた。

リーグ戦でベスト15にも選ばれた藤村選手。主将として、試合中もチームを鼓舞し続けた。

23年ぶりのベスト4をかけて臨んだ、12月19日(土)の準々決勝。相手は強豪ひしめく関東大学対抗戦で2連覇を飾った明治大。リザーブメンバーまで、ユース代表経験者が揃うスター軍団だ。一方、本学には代表経験者は皆無だが、「このチャンスを活かして、注目される選手になろう」と、試合前にチームを鼓舞したのは藤村主将だった。
リーグ戦でチームのトライ王となった水間夢翔選手(スポーツ科学・2年)は「明治大には昨シーズンの春に負けているので、今回こそ勝ってやろうと思いました」と奮い立ち、水間選手と共に1年時から主力として活躍する普久原琉選手(スポーツ科学・2年)も「前回の対戦では、自分自身、何もすることができなかった。リベンジを果たそうと、とても気持ちが入っていました」と、主将に呼応するように、下級生たちも熱い思いを秘めていた。
また、ゲームメイカーであり、副将のSH・村上陽平選手(スポーツ科学・4年)は、試合前の明治大の印象や対策について、「攻撃のテンポが速いので、ディフェンス時のセットアップやリロードを早くすること、オフェンス面ではきれいにラインブレイクするより、ゲインラインを取ることを、一人ひとりが意識していました」と話した。

明治大のキックオフで始まった前半4分、相手のアタッキングラグビーが早くも牙を剥いてきた。自陣10mライン付近、相手ボールラインアウトから、BKへと展開され、流動的なオフェンスに、本学ディフェンス陣は翻弄されてしまう。最後は右オープンサイドへの速いパス回しから、明治大・児玉選手がトライ。コンバージョンキックも決められ0-7と先制を許してしまった。
その後も、速いアタックを仕掛けてくる明治大に対し、本学のディフェンスラインは前へ前へとプレッシャーをかけ、相手のチャンスを潰していく。ゴールライン前でフェイズを重ねられても、坂本選手やFL・長谷銀次郎選手(文理・4年)らFW陣がタックルで押し戻し、トライを許さない。最後はクワーク選手がボールに絡んでジャッカルに成功して凌ぎきると、チームメイトが歩み寄って、そのファインプレーを称えた。

前半21分に2つ目のトライを決められリードを広げられた後は、一進一退の攻防が繰り広げられたが、29分に本学がチャンスをつかむ。
ハーフウェイライン付近で、クワーク選手が再びジャッカルに成功すると、ペナルティキックからゴール前でのラインアウトを獲得。藤村選手のスローを、LO・板倉正矢選手(文理・3年)がしっかりキャッチして、そのままモールで5mほど押し込み、じわりじわりとゴールラインに迫っていく。水間選手、クワーク選手らフィジカルが強いBKもラックに顔を出し、ハラシリ選手がインゴールに向けて飛び込んだ。しかし、あと一歩のところで相手ディフェンスに阻まれ、トライとはならなかった。
さらに残り1分となったところで、明治大がペナルティを犯し、ゴール前ラインアウトを獲得。選手たちは円陣を組み、互いに声を掛け合い、意思の統一を図る。ゴールラインまであと数mに迫り、体を張って前進を続けたが、惜しくもノックオンを犯してしまい、ここで前半が終了。0-12での折り返しとなった。

前半は無得点ながらも、30分過ぎからは相手陣内でアタックする時間が継続し、何度もゴールラインに迫るなど、互角ともいえる戦いぶりを見せた。明治大の速いアタックに対して懸念もあったが、「ディフェンスがしっかり機能していた」(藤村主将)と手応えを感じつつも、村上選手は「明治大はこちらがミスをしたときや、ターンオーバーからの切り替えが早い。序盤にそこを突かれて失点したけれど、通用している部分も多くあったので、ミスやトライを取り切れなかった部分を修正すれば、勝つチャンスはあると全員が思っていました」とここまでのプレーを振り返った。

ラインアウトでボールをキャッチする趙選手。大学選手権期間中、100%の成功率を誇った。

ラインアウトでボールをキャッチする趙選手。大学選手権期間中、100%の成功率を誇った。

SO・饒平名悠斗選手(商・2年)のキックオフで始まった後半戦、前半終了間際の勢いそのままに、序盤は本学が試合を動かした。
右サイドから左オープンサイドへテンポ良く展開し、ハーフウェイライン付近でハラシリ選手からのオフロードパスが水間選手へつながった。
「ここまで、なかなかフリーでボールをもらう機会がなかったので、パスをもらえたときはうれしかったですし、今なら何でもできると思いました」
途中、相手選手が立ちふさがるも、水間選手はステップを切る素振りすら見せずに、持ち前のパワーで吹き飛ばし、22mラインの先まで一気にゲイン。続いて突破を試みたCTB・齋藤芳徳選手(法・4年)が相手選手からハイタックルの反則を受け、ゴール前左サイドでラインアウトのチャンスを得る。藤村選手の速いスローインに趙選手が合わせ、そのままモールへ。オープン側へモールを回転させながらずらしていき、水間選手らBKも加わりながら押し込んでいく。「良い場面で練習していた通りの形が出せました」と、最後はボールを保持していたハラシリ選手が飛び込み、待望のトライを決めた。選手たちは拳を突き上げて喜びを爆発させ、さらに村上選手がゴールキックを決めて7-12の5点差に詰め寄り、「ピッチ上の選手だけでなく、メンバー外の選手も含めて全員がここから盛り返してやるという空気になりました」(藤村主将)と追撃ムードが高まった。

しかし、明治大の厚い壁に阻まれて畳み掛けることができず、逆に速いステップとパス回しにディフェンス陣が翻弄されて2トライ2ゴールを許し、7-26の厳しい展開となってしまった。
流れを変えたい本学は26分、ここまで攻守にわたりチームの軸として働き続けた村上選手に代えて、福岡工業大戦でキックによる5ゴールを決めた期待の1年生SH・前川李蘭選手(スポーツ科学・1年)を投入。「大事な場面での交代で非常に緊張しましたが、グラウンドに入ってからは、とにかく自分のプレーを最大限に発揮しようという思いだけでした」という後輩に、村上選手は「アタックのリズムを変えて、流れを持ってきてほしい」と思いを託し、悔しそうな表情を浮かべながらピッチを後にした。

明治大の勢いは止まらず、ペナルティゴールとトライで7-34と突き放されてしまったが、終了まで残り数分、厳しい状況の中でも本学の選手たちは決して気持ちを切らさない。
「全員が最初から最後まで相手を倒すことに集中し、強い気持ちを持ち続けていた」
FW最前列でチームを牽引し、自身も複数の相手選手を弾き飛ばす突破を見せた藤村主将の言葉通り、スクラムは本来の強さを取り戻して明治のFW陣を圧倒し始め、終盤は蘇ったセットプレーで自分たちのペースでの試合運びができていた。だが、相手陣内に攻め込んでいる中で響いた、無情のノーサイド。互いに肩を叩いて健闘を称え合う選手たちの中で、最終学年の藤村主将や村上選手らは天を仰ぎ、これまでのさまざまな思いにこみあげてくる熱いものをその目に浮かべていた。

明治大に対して総合力では及ばなかったものの、ディフェンスやセットプレーでは持ち味を発揮し、強豪相手にも負けない強さをピッチ上で表現できていたヘラクレス軍団。ベスト4進出はならなかったが、収穫が大きく、来季につながる試合内容であったことは間違いない。1年時から主力として活躍し、今大会でも成長した姿を見せた2年生から、今後を見据えた頼もしい言葉が聞かれた。
「明治大ディフェンスに対して、なかなか突破することができなかったので、もっと練習して強豪チームにも通用する選手になろうと思いました。来シーズンの個人目標はマンオブザマッチを今シーズン以上に獲得し、リーグ戦のトライ王になることです。そして、チームの目標である、日本一に貢献します」(水間選手)
「日本一を目指していたので、悔しい気持ちでいっぱいです。昨年よりも、ハンドリングや相手の芯をずらす部分で、自分の持ち味を発揮することができましたが、大学選手権のような高いレベルでは通用しない部分もありました。これからは、個人として感じた課題を改善するだけでなく、上級生としてチームを引っ張っていく存在となり、日本一に向けて良いチーム作りをしていきます」(普久原選手)
さらに、1年生ながらメンバー入りを果たし、この試合にも途中出場した前川選手は「2年連続ベスト8という結果に貢献でき、大変うれしく思います。試合を通じて感じたチームの課題は、セットプレーからのストラクチャーの少なさとフェイズを重ねてもトライを取り切る集中力です。一方で、フィジカル面は通用しており、内でも外でもゲインを取ることができました。来季こそ、リーグ戦優勝はもちろん、日本一に向けて日々努力し、チームに欠かせない存在となれるよう精進していきます」と、現状を冷静に分析しつつ、来シーズンに向けての熱い決意を語った。
上級生の意志をしっかりと受け継ぎ、下の世代が着実に育っている。新生ハリケーンズは目標とする「日本一」へ向け、より力強く旋風を巻き起こしていくに違いない。

【藤村琉士主将】
2年連続で大学選手権に出場し、昨年は早稲田大、今年は明治大という強豪チームと渡り合うことができたので、ここからさらに成長できると思います。着実に伸びているチームなので、後輩たちには腐らず、最後まで全員でやりきって、壁を破ってほしいです。
入学後は本当に厳しい4年間を過ごしてきましたが、自分を含め、日々チームが強くなっていくことがとても楽しかったです。終わってみれば早かったと感じますが、私にとってかけがえのない、満足のいく4年間でした。
今年、本学ラグビー部としてさまざまな問題がありましたが、支えていただいた関係者の皆様のおかげで頑張ることができました。たくさんの応援をいただき、本当にありがとうございました。

【村上陽平副将】
本学に入学してから多くの経験を積むことができ、今年度は特に大変なシーズンを過ごしました。しかし、4年生をはじめ、本学ラグビー部全体が同じ目標に向かって、ひたむきに努力し続けたことで、今回のような結果を残すことができました。チームメイトには、心から感謝していますし、応援してくださった方々のおかげで、ここまで活動することができたのだと思います。
今のラグビー部は個人の能力が高く、メンバーに選ばれるかどうかは本人の努力次第です。それぞれが切磋琢磨することでチーム力の底上げにつながり、さらに強くなれると思います。後輩たちには期待していますし、今後の活躍を応援しています。

【坂本駿介選手】
私の後を継いで主将になった藤村選手は、常にチームの大黒柱として頑張ってくれました。試合中も一番体を張っているのが彼であり、積極的にチームを鼓舞する頼りになる存在で、感謝しています。
私が入部した頃の本学ラグビー部は、リーグ戦で下位に低迷し、大学選手権には出場できない状況でした。そこから、一歩ずつ力を積み重ねていき、2年連続大学選手権ベスト8になれるほどのチームになれたことを、非常にうれしく思っています。しかし、ここで満足せず、本学の強みであるスクラムに磨きをかけ、ベスト4、そして、優勝を狙えるチームに仕上げていきたいです。

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