2021年10月11日(月)、プロ野球ドラフト会議が開催され、本学野球部の主戦投手である赤星優志選手(スポーツ科・4年)が読売ジャイアンツから3位指名を受けた。記者会見を終えた赤星選手に、プロ野球選手としてのスタート台に立つことになった心境を聞いた。

12球団どこでもOKだったという赤星選手(中央)。巨人からの指名を受け、少し安堵した様子を見せた。

12球団どこでもOKだったという赤星選手(中央)。巨人からの指名を受け、少し安堵した様子を見せた。

吉報が届いたのは、午後6時15分だった――。
本学生産工学部津田沼キャンパスの教室で、午後5時から始まったドラフト会議の中継を、赤星選手はチームメイトたちと共に見つめていた。やがて指名が3巡目に入り、教室内に「そろそろ…」という雰囲気が昂まってきた最中、ついに待望のアナウンスが響いた。
「第3巡選択希望選手、読売、赤星優志、投手、日本大学」――その瞬間、「おぉぉ…」というどよめきが起こり、続いて教室内は大きな拍手に包まれた。しかし、マスクを掛けた赤星選手はわずかに目尻を下げただけで、マウンドで見せるのと変わらない沈着冷静な表情を崩さず、教室を出て記者会見場へと向かった。

野球部の山中晴之副部長(右)、片岡昭吾監督(左)と握手を交わす赤星選手。

野球部の山中晴之副部長(右)、片岡昭吾監督(左)と握手を交わす赤星選手。

記者会見の冒頭、「なかなか名前が呼ばれませんでしたが…」という問い掛けに、「順位にこだわりはなかったので、3位で指名していただけてとても光栄です」と答えた赤星選手。「東京出身なので、ジャイアンツは子供の頃からずっとテレビや球場で見ていたチーム。伝統のある球団ですし、その一員になれることを本当にうれしく思います」と話し、「先発投手として勝負したい。多くの経験をしていらっしゃる桑田コーチや菅野投手には、技術的なことやメンタル的なことなど、いろいろ聞いてみたい」と、2人の大投手からの学びを希望した。

マスコミが用意した“赤い星”を手に持ってガッツポーズをすると、ようやく白い歯がこぼれた。

マスコミが用意した“赤い星”を手に持ってガッツポーズをすると、ようやく白い歯がこぼれた。

また、どういう投手になりたいかを問われると、「ストレートに磨きをかけて、打者がわかっていても打てないような球を投げたい。直球と同じ腕の振りから、カットボールやツーシームを投げられることが自分の武器なので、より精度を高めて打者を打ち取っていきたい」と話し、対戦したい打者には同年代のヤクルト・村上宗隆選手の名を挙げた。

憧れの選手は?という質問には、巨人のエース・菅野投手と回答。「当たり前のように三振を奪っていく姿が、自分にはないことなのでとても凄いなと思います」

憧れの選手は?という質問には、巨人のエース・菅野投手と回答。「当たり前のように三振を奪っていく姿が、自分にはないことなのでとても凄いなと思います」

「プロの世界で1年でも長く投げていられるように、息の長い投手になりたい」と意気込む赤星選手は、最後に「大学4年間でいろいろな指導を受けたことでここまで来れたので、指導者の方々はもちろん、先輩方や同級生、後輩たち、支えてくれた皆さんに感謝したいと思います」と語った。

なお、今回のドラフト会議では、本学OBでNTT東日本所属の上川畑大悟内野手(2019年・生産工学部卒)も北海道日本ハムファイターズから9位指名を受けた。これにより2022年シーズンは、本学出身の現役選手がヤクルト・山崎晃大朗選手、巨人・戸根千明選手、広島・長野久義選手、中日・京田陽太選手、楽天・弓削隼人選手、埼玉西武・十亀剣選手、森脇亮介選手とあわせて8球団9選手となる。 ※10月14日現在

日大での4年間で積み上げてきたものがあるから、 プロ入りに不安はない。

改めまして、おめでとうございます。今の気持ちは?
ありがとうございます。プロ野球は子供の頃からの夢であり、憧れであり、目標でもあったので、それが今かなって、うれしい気持ちでいっぱいです。いろいろ取材をしていただいて、ようやく実感がわいてきた感じです。
今日はここまで長い1日だったのではないでしょうか?
そうですね、特に意識せずに、いつも通りの1日を過ごしてきたつもりですが、控えの教室で指名を待っている間は、緊張感もあったせいか時間を長く感じました。ドラフト会議が始まってからは平常心でいようと思っていたのですが、やはり「いつ呼ばれるかな」というドキドキした気持ちもありました。
名前が呼ばれた瞬間はどうでしたか?
その時は、うれしいという思いよりも、ホッとしたという気持ちの方が大きかったですね。
子供の頃、巨人の試合を見てプロ野球選手になる夢を持ったということですが、好きだった選手は?
テレビで内海(哲也)投手(現・埼玉西武ライオンズ)が投げている姿を見て、プロの投げるボールの凄さ、特にコントロールの良さというのを感じていました。左右の違いはありますが、当時の自分はコントロールに自信がなかったので、その点に惹かれました。
夢を現実として、プロの世界を目指そうと思ったのは?
現実的にプロの世界が視野に入ったのは高校3年生になってからです。プロ志望届を出していたもののドラフト会議では指名されず、そのことでさらにプロへの思いが強くなりましたね。「絶対にプロになってやる」という気持ちが湧いてきて今まで頑張ってきました。
今回のドラフト前、プロのスカウトの評価を見たり聞いたりしてどう感じましたか?
自分は投球術で打者と勝負して結果を出してきましたから、そこを評価していただいていたと思っています。プロの世界に入ってもそのスタンスを崩さずにやっていこうと思います。
制球力の良さから「ミスターコントロール」と称されていることには苦笑いを浮かべ、「あまりかっこいい感じではないので、もう少しかっこいい呼び名をつけてほしい」。

制球力の良さから「ミスターコントロール」と称されていることには苦笑いを浮かべ、「あまりかっこいい感じではないので、もう少しかっこいい呼び名をつけてほしい」。

プロを目指すうえで、元プロ野球選手の青山誠コーチに話を聞いたりしたのですか?
はい、プロとしての技術面もそうですし、考え方やメンタル的なことなど、たくさん教えていただきました。
巨人には今、日大OBの戸根千明投手が在籍していますね。
トレーニングをすごくやられている方だと聞いているので、トレーニング方法とかに関していろいろ聞いてみたいと思っています。
原監督にはどんなイメージを持っていますか?
優勝をたくさん経験されていらっしゃる監督なのでとても心強いですし、自分も優勝に貢献できるように頑張りたいと思います。
これまで、野球を通じて巨人との接点はあったのですか?
はい、今年の8月下旬に、巨人の三軍とオープン戦を戦い、初めてプロの打者と対戦しました。その時は4回1失点でしたが、プロの凄さを実感したと同時に、自信のあったツーシームで勝負することができて良かったと思いました。そして、改めてプロ野球選手になりたいと思った試合でした。
プロ野球に入るということに不安はないと言っていましたが、その自信はどういうところから?
大学での4年間、しっかり練習してきましたし、その中ではプロを意識した練習もたくさんやってきたので、そういうところで自信がありますし、不安というものは特にありません。
日大での4年間で、成長できたと思うことは?
監督さんから、野球だけではなく、野球以外のこともいろいろ教えていただき、人間的に成長できたと思いますし、それが野球での成長にもつながったと感じています。周りの方への感謝や礼儀というものを4年間大事にしてやってきました。
試合ではいつもポーカーフェイスで淡々と投球していますが、感情を出さないように努めているのですか?
もともと感情を表すタイプではないですし、やはり感情を外に出してしまうと、相手にも自分のチームにも影響を与えてしまうので、試合中は意識して感情を出さないようにしています。
野球選手の「赤星」と言えば元阪神タイガースの赤星憲広氏が有名だが、「巨人の投手として赤星の名を有名にしたい」と意気込みを語った。

野球選手の「赤星」と言えば元阪神タイガースの赤星憲広氏が有名だが、「巨人の投手として赤星の名を有名にしたい」と意気込みを語った。

プロでやっていく上で、これからの課題はどういうところだと思いますか?
全体的によりレベルアップしないと、今のままでは通用しないと思っています。変化球も決め球として使っていけるレベルにはまだ達していないと思うので、今ある球種からでも、これから覚える球種であってもいいので、決め球として使えるボールを習得していきたいと考えています。
現時点で、プロ1年目としての目標を教えてください。
まずは1軍で登板して、先発であれば白星を飾れるように頑張りたいと思います。その先に10年・20年と長いキャリアで活躍して野球を続けていけるようになりたいと思います。
活躍を期待しています、ありがとうございました。

巨人からの指名挨拶に「緊張しました」。

ドラフト会議から4日後の10月15日(金)、理工学部駿河台キャンパスにおいて、赤星選手は片岡監督と山中副部長の同席のもと、巨人の水野雄仁スカウト部長と脇谷亮太スカウトから指名の挨拶を受けた。
席上、水野部長からドラフト指名に至った経緯が語られ、「順位は3位だが、1・2位に匹敵する力がある。今の巨人投手陣なら、来年、即先発ローテーションに入れるスペースがある。私は赤星君の投球術を買っているので、その力を存分に発揮して一軍でやれることを是非証明してほしい。1つ勝てれば、ずっと勝てるタイプだと思う」とエールを贈られた。
指名挨拶の際は「憧れの世界でずっと戦ってこられた方々だったので、とても緊張しました」という赤星選手だったが、その後の記者会見では「ドラフト後、いろんな方から連絡をいただき、プロに入れるんだなという気持ちが大きくなってきました」と笑顔を見せた。また、球団からの期待については「先発投手として頑張ってほしいと言っていただいたので、自分の仕事をしっかりできればいいなと。数字についてはまだ考えていませんが、優勝に貢献できるようにやっていきたい」と力強く語った。

[日本大学野球部・片岡昭吾監督のコメント]
赤星選手が入学した時から見ていますが、正直ここまでになるとは思っていませんでした。チームを1部に昇格させてくれた立役者ですし、勝っている時のエースがプロに行ってくれると、野球部としても非常にうれしいなという気持ちです。
この4年間で最も成長したのは体力。最初の頃は完投する体力がなく、途中で息切れしてしまうような状況でしたが、3年秋のリーグ戦が終わってから、自分がエースにならなければいけないということで、練習もかなり追い込んでやっていました。冬の間のランニングや投げ込みなどをしっかりやって、それが4年の春になって結果が出ましたから、やはり投げる気持ちと体力が一番伸びたんだと思います。物怖じしない性格なので、プロの世界でも自分の思いや考えを前面に出して、積極的にプレーしてほしいですね。

Profile

赤星優志(あかほし ゆうじ) スポーツ科学部4年

1999年生まれ。東京都出身。日本大学鶴ヶ丘高卒。176cm・80kg、右投げ右打ち。小学1年時から軟式チームで野球を始める。日大鶴ケ丘高では2年夏から背番号1を背負い、3年の春には球速145kmを計測。プロ入りを目指して3球団の入団テストを受験し、その中の1つに合格するもドラフト会議では指名漏れとなり本学へ進学。入学後大きく成長し、最速152kmのストレートに加え、自信のあるカットボールとツーシーム、さらにスライダー、カーブ、フォークボールなどの変化球を駆使して打者を翻弄。東都大学リーグ(2部)では2年春からの通算23試合で7勝(2完投2完封)5敗、防御率2.06を記録。4年生となった2021年春季リーグ戦ではエースとして大車輪の活躍を見せ、最多勝(3勝)、最優秀防御率(0.78)、最優秀投手の3冠を獲得し、チームの2部優勝に貢献。入れ替え戦2試合でも先発・救援で好投し、8季ぶりの1部復帰に導いた。大切にしている言葉は「継続は力」。

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