第96回関東大学サッカーリーグ戦2部を2位で終えて18年ぶりの1部昇格を果たした本学サッカー部。22歳を筆頭にした若き選手たちが長い低迷期に終止符を打ち、新たな歴史の幕を開けた。1部でのプレーを後輩たちに託し、新たなチャレンジに挑む現4年生の戦いぶりを中心に2022年シーズンをリポートする。

首位陥落から手にした昇格

「チャンスはあるから、慌てるな」
川津博一監督の声がピッチに響いた。
 
2022年シーズンの関東大学サッカーリーグ戦2部の最終節。引き分けでも18年ぶりの1部昇格が決まるとは言え、喉から手が出るほど先制点は欲しいもの。20分が過ぎようとしても0-0だったが、監督の声は落ち着いていた。選手を信頼しているからこそ出せたコーチングだったのかもしれない。すると、信頼に応えるように次々とゴールが生まれていった。
 
2022年シーズンの滑り出しは万全だったとは言い難い。開幕からの6試合は1勝3分け2敗。しかし川津監督は「昨年までなら負けていた試合を引き分けに持ち込んでいた」と密かに手応えを得ていた。すると、7節から破竹の6連勝を飾る。
 
最終戦で2点目をアシストした近藤友喜選手(法・4年)はチームの転機としてある試合を挙げる。8節と9節の間に行われた国士舘大学戦だ(7月13日開催の総理大臣杯関東予選)。敗れはしたが、のちに総理大臣杯を制して日本一になる同大学と0-0からPK戦にもつれ込む接戦を演じ、「やれる、という雰囲気になり、変わった気がします」と近藤選手は振り返る。

チームは波に乗り、18節を終えた時点で首位に立った。しかし、3日後の青山学院大学戦を落として首位からあっけなく滑り落ちる。現実味を帯びてきた18年ぶりの1部復帰。経験したこともない状況に緊張するな、という方が無理かもしれない。
 
川津監督は言う。
「ずっと追いかけてきた昇格という目標が目の前に現れて浮き足立った部分もあるでしょうし、追われる恐怖もあったのでしょう。(青山学院大学戦は)そういう感じの内容でした」

残り3試合、チームを覆いつくしそうになった重苦しい雰囲気を打ち破ったのが中村健人選手(文理・4年)。「チームが勝ち続ける中、自分は点が取れなくて……。チームに貢献できませんでした」と調子に乗れない時期を振り返ったが、「昇格をなかなか決められずに不安や恐怖もありました」と言う21節と22節にマークした連続2ゴールは十分すぎる貢献だろう。負ければ3位に転落して入れ替え戦に回る可能性もあった21節では先制点と追加点。さらに昇格決定試合となった22節の前半45分に決めたゴールはどれだけチームを助けたことか。「キーパーの位置は見えていましたし、自分の角度だと思って蹴りました」と冷静にネットを揺すって点差を2に広げた。3失点しなければ昇格できる状況にしてチームメートをプレッシャーから解き放った。

苦境を乗り越えて達成

現在の4年生が高校3年生の時、つまり彼らが進路を決めた2018年、本学サッカー部は東京都サッカーリーグ1部所属。リーグ戦を2位で終えた先輩たちが昇格決定戦を制して関東2部に引き上げたが、4年生が入学以降の成績は2019年から3年連続で8位だった。
 
中村健人選手は振り返る。
「自分たちの学年は本当に狭間の世代というか、そんなに強い世代ではなかったんです。でも、真面目なメンバーが多くて頑張り続けた結果がこの1部昇格につながりました。とても充実した4年間でした」。そして4年になる時、「1人でも多く試合に出よう」と苦楽を共にしてきた仲間たちと誓って最終シーズンを迎え、一体となって歴史を塗り替えた。

来年から横浜FCに加わり、プロとしてスタートを切る近藤友喜選手も学びの多い時間を過ごした1人だ。「やれると自分では思っていたのですが、2年の前期まで試合に出られませんでした。その時期にチームに貢献できる方法を自分自身で考えられたのが良かったです」と言う。さらに「横浜FCの練習に参加した時、自分の足りない点に気付け、改善するために努力できました。良くない時期を過ごしていなければ、そう感じられずに終わったと思います」とプロの扉を開けた理由を明かした。
 
夢をかなえた近藤選手が「プレーが泥臭い」とちゃかしながらも「盛り上げ役と引き締め役をやってくれた」と感謝し、川津監督も「引っ張ってくれた」と信頼を寄せるのがキャプテンの梶谷涼人選手(文理・4年)である。

今シーズン、梶谷選手が初めて出場したのは5節。しかし、その後5試合はメンバー表に名前が記されることはなかった。本職であるセンターバックからフォワードへのポジション変更。4年生に出場機会のチャンスを与えるためのコンバートだった。簡単なトライであるはずがないが、12節以降出番をつかむ。最前線に立った梶谷選手は、相手に体を当てることをいとわず、誰よりもボールを追いかけることでチームをけん引。最終節でもスタメンを勝ち取り、あえてスルーすることで先制点の呼び水となった。橋田尚希選手(危機管理・3年)をゴールへ、そしてチームを1部へと導いた。
 
梶谷選手は言う。
「本当にいいチームですし、土台もしっかりしています。1部で戦うことになる3年には自分たちの色を加えて新しいチームを作ってほしいです」  
 
先輩たちから受け取った土台作りのバトンを結果とともに見事受け渡した梶谷選手だが、ノーゴールに終わったのは心残りかもしれない。だがきっと、次の舞台でも、次の目標に向かって努力を惜しまないのだろう。
 
1部昇格を置き土産に、29人の4年生は巣立つ。新たなステージではつらい時期を過ごすこともあるだろう。
そんな時、あの声がこだまするかもしれない。
「チャンスはあるから、慌てるな」 

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