
朝練習のクロスカントリーコースまで、宿舎から約4kmの道のりをジョグで向かう【日本大学】
2027年正月の箱根駅伝で「シード権を獲る」ことを目標に掲げる日本大学陸上競技部特別長距離部門。8月の夏合宿は北海道・釧路市からスタートし、弟子屈町での第2クールを経て、8月21日(金)からは紋別市に移動して北海道合宿の総仕上げとなる第3クールに突入した。試合経験を重ね、飛躍が期待される2年生たちはどんな思いで臨んでいるのか、現在の状況と秋シーズンへの意気込みを聞いた。
(取材日:8月24日)
試合の中で“自分の走り”を見せられるように
2年連続で北海道合宿に参加。釧路での第1クールは順調に練習を消化して、「足にはきていましたが、周りの見え方が違うというか、昨年に比べて心の余裕が出てきたなと感じていました」と話す犬塚唯惺(経済2・宮崎日大)。さらに、「1年生の1年目の夏は結構きついので」と自らの経験から、後輩たちを引っ張っていこうという気持ちが芽生え、「釧路では余裕があったので、押したり声掛けしたりしていました」。
しかし、第2クールの弟子屈では体調を崩して数日離脱。「もう一度、気を引き締めてやらないといけない」と自らを鼓舞し、第3クールの紋別では万全ではない中でもハードな練習に精一杯食らいついていた。
「釧路は100点と言ってもいいけれど、トータルで見れば60点くらい」と、夏合宿のここまでを自己採点した犬塚唯諱選手 【日本大学】
前半シーズンは精力的に試合に出場し、今年2月の神奈川ハーフマラソンでは自己ベストをマーク。実はその時、腰を疲労骨折した状態で走っていたという。
「昨年11月に出場した上尾ハーフマラソンで、スタート直後の転倒アクシデントに巻き込まれてしまいました。疲労骨折しているのに気づかないまま試合に出ていて、影響が5月くらいまであって…」
その後、治療に努めてケガを完治させると、復帰戦となった7月の五大学陸上競技選手権大会で3000mの自己ベストを更新し、4年生の先輩を抑えて表彰台に昇った。それでも、「五大学は久しぶりの試合で緊張してしまい、思うような走りができませんでした。前半シーズンの試合に関しては1つも納得いってないですね」と、自己評価は厳しい。
「調子がいい、練習ができていると感じている時に限って、体調を崩したりアクシデントがあったりして、小さなミスでチャンスを無駄にすることが多くありました。どこかで気の緩みがあるんだと思うし、このままじゃダメだなって。気を引き締めて、当たり前のことを当たり前にやっていくようにしたいと思っています」
入学してからの1年半を振り返り、「練習がうまくいっていても、試合で力を発揮できなかった」という1年目に続き、2年目の前半シーズンも「自分のやりたいことや、自分の走りができていない」という犬塚。秋シーズンの目標として「試合で自分の走りをすること」を掲げ、さらに「3・4年生が少ない中で、2年生も頑張らないといけない。自分もチームの力になっていきたい」と、昨夏からの成長を感じさせる言葉を続けた。

昨年の経験が、1年生を引っ張っていく余裕を生んでいる 【日本大学】
成長を実感しながら、さらなる高みへ
「短い距離よりもハーフに向いていると思う」と、昨年の取材時に自身を語っていた猪股富祐貴(経済2・土浦日大)。大学での約1年半の練習を経て、「距離に対する抵抗感が少なくなってきた」という。そして「どんどん距離を踏んで足を作っていかないと、ハーフで戦っていくのは厳しいと感じているので、これからもそこを大事にして練習に取り組んでいきたい」と方向性は明確だ。
「ハーフで勝負していきたい」と話す猪股富祐貴選手 【日本大学】
昨年11月の上尾ハーフマラソンで初めてハーフを走ったが、序盤のアクシデントに巻き込まれ、思うような走りができなかった。それでも2月の神奈川ハーフでは、「上尾ハーフの時の悔しさがあってこそ、走れたんじゃないかと思います」と、1分半以上タイムを縮めた。
さらに春シーズンは、監督の勧めと自分の意欲がマッチして3週連続の試合出場というハードスケジュールに挑んだ。「きついと分かっていましたが、いい経験になるんじゃないかと思って参加しました」
だが、その影響により3週間ほど休むことになり、その後も「うまく走れませんでした」。練習についていけず焦りも感じていたが、夏に差し掛かる頃からだんだん調子が上向き、「ポイント練習もこなせるようになってきたところで、監督から出場のお話をいただいた」と、7月の五大学陸上競技選手権大会の3000mでレースに復帰。あきらめかけていた北海道合宿のメンバーにも滑り込み、「参加させていただけたことは、とても大きいし、良かったなと思っています」と、笑みを浮かべる。
2度目の夏合宿については、「昨年は、合宿中に数回ケガをして、その後も少し痛みがある中で走っていましたが、今年はここまでケガを1回もしていません」と胸を張る。「ケガでの離脱をなるべく少なく、ポイント練習も余裕を持ちながら走るというテーマを持って臨んでいて、その点ではうまく走れていると思いますし、成長と言えるんじゃないか思います」
さらに、「後輩という存在ができて、“先輩”という見られ方をするし、練習の時でも“ここは引っ張らなきゃいけない”といった場面が増えてくる。そうしたところでの責任感が出てきたなと自分では感じています」と、意識も変わってきた。
秋シーズンの目標は「箱根駅伝を走るためには、ハーフマラソンの記録が本当に重要になってくるので、62分台を目指していきたい。昨年が63分台後半だったので、62分後半から63分前半を出せればチャンスがあるんじゃないかと思っています」という猪股。「少しでもチームに貢献できるように」と、2年目のさらなる成長を誓った。

海外合宿に参加した同期の3選手が学んできた、「練習中の糖質補給が大事」だという話が印象的だったという猪股選手。それをチームで実践することで、「ケガのリスクの低減につながっているんじゃないかなと感じます」 【日本大学】
同期に負けないという強い気持ちで走る
昨年はケガの影響もあって北海道合宿に参加できず、妙高高原での2次合宿からAチームに合流した安濃佑真(経済2・帝京安積)。初めての北海道合宿の感想は、「B合宿でも距離は走るんですが、A合宿はチームの雰囲気が違うし、練習内容もきつい印象があります」。
また、「昨年を経験している同期のメンバーは、練習メニューがどんなものか、どう走ればいいかを分かっているので、そのぶん余裕があるように感じますね」とも話す。
練習のハードさがBとはだいぶ違っていて、筋肉痛も出やすいように思えます」と話す安濃佑真選手 【日本大学】
昨年途中合流したA合宿では、ポイント走で集団から離されてしまうこともあったが、「今年は最後まで粘ることができているので、その点は成長しているのかなと感じます」。それでも、「ラスト1本でペースが上がったりすると苦しくなることが多い。余裕を持って力まずに走れるようになれば、この先もう少し成長できるのかなと思います」と、課題も見えている。
「あまりタイムとかにはこだわっていませんが、レースの後半に弱いことが多いので、その点を踏まえて夏合宿やふだんの練習に取り組んでいきたい。そうすれば自然とタイムも出てくるようになると思うので、しっかり走って強くなりたいと思っています」
さらに、同期のメンバーに対して「負けられない」と強い気持ちを口にした安濃。
「彼らが垂れるまでは、自分も絶対垂れたくないと思っています。ここで離されたら、彼らとの差がまた広がってしまうと感じるので、粘りを見せて追いつき、追い越せるように頑張っていきたいと思います」

「昨年に比べAチームの練習に対応できるようになってきた」という安濃選手 【日本大学】
自分の中の“壁”を打ち破って成長していきたい
A合宿のメンバー入りは「とてもうれしかった」と話す藤林亮磨選手。 【日本大学】
昨年A合宿に参加した同期たちに「練習がきつい」と聞いて覚悟していたが、実際には想像以上で、自分の甘さに気付かされたという藤林亮磨(スポーツ科2・洛北)。
「最初の釧路の段階でこんなにきついんだという感覚で、話に聞いていただけではわからない部分もありました。雰囲気も緊張感もまったく違うし、練習の強度も全然違う。離れる人が本当に少ないですし、行動面でも、みんなキビキビ動いてアップをするのが速い。そういう部分も含め、この合宿を経験することができて本当に良かったと思います」
さらに、「箱根を走った先輩方といっしょに走って力の差を感じたし、箱根駅伝に出るにはどういうところがダメなのかというのも分かった」と、得たことも多いと話す。
合宿序盤で3日間の故障離脱はあったが、その後はハードな練習にも食らいついてきた。しかし、「ここまでやって来られたのはいいのですが、来ただけみたいになっている。最後までしっかりついて終わらないと、ただ走っただけになってしまう」と危機感を募らせる。
そうした中、藤林は先輩との会話の中から「自分の心の中に“3分の壁”があったんだと気づきました」。
「3分できつくなっているようでは通用しないと分かっていましたが、実際に走ると思っていた以上にきついし、3分10でいけるかなとか、そのつもりはなくても自分で壁を作っていたんです」
前日のポイント走の3本目、最初からやや速いペースでスタートし、1.5kmぐらいから集団に引き離されてしまった。練習後に話を聞いてみると、考え方に大きな違いがあることを知った。
「集団についていける人は、あれが刺激になって “後半楽になるから”というように考えていて、“離れてしまう”というような思考にならない。ペースが速かった時に“まずい”と考えるか、“今これを乗り切ったら大丈夫”と考えるかで違いが出るんだと分かりました」
「この合宿で何が足りないのかが分かったし、きっかけみたいなものをつかめている」と話す藤林。「ここまで来たなら三大駅伝のメンバーに入りたいと思っていますが、着実にベストを出して結果を積み上げていかないと始まらない。一気に上を狙うのではなく、目標に向かってできることからやっていき、着実にタイムを出せるようにして、ステップアップしていきたい」と、心身ともにより一層の成長を目指して走り続けている。

「この合宿で成長のきっかけをつかんだと」という藤林選手 【日本大学】
チャンスで結果を出して駅伝を走る
「昨年は練習についていくのに必死でしたが、今年はある程度余裕を持ってできているので、少しは成長したのかなと思います」と話す岸端悠友(文理2・佐久長聖)。2年生となって、その考え方にも成長が垣間見える。
「いつまでも上級生に頼っていられないという気持ちがあって、後ろを走って全体をしっかり支えていく立場になったと感じています。同期たちとも、少し余裕ができてきたという話をするようになりましたし、僕らが4年生となる代でいいところまで行きたいという思いはみんな持っていると思うので、そこを目指していくうえでも、2年生・3年生の時に大舞台を1度でも経験しておいた方が自分たちのためにもなると思っています」
「普段の練習でも1人で押していけるようになったのは、自力がついてきたからだと思う」と、大学1年間での成長を語る岸端悠友選手 【日本大学】
5月の全日本大学駅伝予選会では、同期の後藤と新入生の首藤海翔が好走して、チームの予選トップ通過に貢献。「調子が良かったし、出る準備はしっかりできていた」という岸端に出番は来なかった。
「自分も走って結果を出したいという気持ちだったので、かなり悔しかった。上級生が強いというのもあるし、自分がまだ信用してもらってないというところなので、どこかで一発いい記録を出し、いいパフォーマンスを見せることが今の課題。自分の強みやいいところを監督・コーチにアピールしないといけないし、パフォーマンスのレベルも波を作らないようにしていかなければ」と、心に期して北海道に来た。
今年の北海道合宿には、首脳陣が期待する1年生7人がA合宿に参加し、チームとしてフレッシュな印象がある。経験はまだ足りないが、可能性を秘めた1・2年生の勢いが、チームを良い方向に導いていくのかもしれない。
「そういう感じのチームになっていると感じています。ただ、2年生で公式戦を走っているのは後藤(玄樹)だけなので、自分としてはかなり意識しています。後藤に続きたい、そういう舞台に立ちたいという思いでずっとやってきているので、今年はしっかり狙っていきたい。大学に入ってから大きなケガをせずにずっと練習できているので、何かきっかけを掴んで自分の殻を破り、そこからいい流れに乗っていけたら…。その点でも、上級生に頼っているのではなく、そろそろ自分で行かなければというのを夏合宿でも意識しています」
海外合宿に派遣されるなど、「チームに期待してもらっているのを強く感じている」という岸端。「単独走に苦手意識がなく、一人でもいける部分が強み」と話すが、「駅伝やロードレースで活躍したいけれど、トラックで記録を出さないとそうもいかない」と、この秋は結果を求めていく。
「5月のような悔しい思いを、次はもうしないぞという気持ちで、6月・7月とこの夏合宿をやってきました。まずはチャンスを自分でつかみに行って、そこで確かな結果を出すということを第一に、1つ1つの試合を大事にしていきたい。そして三大駅伝のチャンスが巡ってきたら、チームの期待に応えられるようにしっかり走りたい。
ずっと応援してくれている方々がいることにも目を向けて頑張っていきたいと思っています」
強い眼差しで決意を語るその姿には、覚醒の気配が漂っていた。

「体が丈夫でケガなくできるところも自分の強みだと思う」という岸端選手。「チャンスは必ず巡ってくると思うので、それを信じて妥協しないように頑張っていきます」 【日本大学】

それぞれのペースでクロスカントリーコースを走る選手たち 【日本大学】