「2024年度日本大学進学ガイド」
インタビュー

『ミニかまくら』とキャンドルの温かさで,
秋田のファンを増やしました

工学部 情報工学科3年(取材時)

伊藤 颯斗

「ミニかまくら」で学生たちを明るい気持ちに

豪雪地帯の秋田県横手市では,約450年の歴史をもつ雪まつり「かまくら」が毎年2月に開催されます。人が入れるほど大きなかまくらが街中に並び,夜になると河原に広がる「ミニかまくら」の中にろうそくが灯され,その幻想的な景色で有名なお祭りです。私が代表を務めた,『花火やミニかまくらを通じて,日大生の心にも「明かり灯し」たい。』というプロジェクトは,そんな伝統ある雪まつり「かまくら」と日本大学がコラボレーションしたものです。お祭りの期間になると,大小さまざまなかまくらが市内でつくられますが,参加した約40人の日本大学の学生が地域の方々と協力しながら「ミニかまくら」づくりを行いました。普段雪に触れる機会が少ない学生たちが無邪気に雪を集めている姿がとても印象に残っています。丹精込めてつくった「ミニかまくら」を,国内外から訪れた多くの観光客に見ていただくことができ,当日は大盛況に終わりました。

当日を迎えるまで約1年間の準備期間がありました。私がこのプロジェクトに込めていたのは,「多くの学生を巻き込み,明るい気持ちにしたい」という思いです。多くの大学生は,コロナ禍で数々のイベントが中止になったりキャンパスに登校できない期間が続いたりと,描いていた大学生活を満喫できませんでした。私もそのうちの一人です。しかし,一度きりの大学生活をこのまま終わらせたくない。そんな気持ちが心のどこかにありました。だからこそ,人と人とのつながりを感じられる機会を学生たちに提供したいと考えていました。
そんな時に出会ったのが,横手市の雪まつり「かまくら」です。もともと工学部には秋田県出身者が集うコミュニティがあり,実は私もその一員でした。そして,以前にも雪まつり「かまくら」に日本大学の学生が参加していたことを知り,「これだ!」と思ったのです。日本大学の学生に貴重な体験をしてもらいながら,地元のお祭りも盛り上げることができる,まさに絶好の機会でした。

仲間を集め,成功に導くために

「多くの学生を巻き込み,明るい気持ちにしたい」という目標を掲げて準備を始めたものの,参加してくれる学生がいないことには始まりません。しかし,「秋田県でかまくらを作りませんか?」といっても,多くの学生にとってはピンと来ないでしょう。そこでまずは私たちの存在を知ってもらうべく,広報活動に力を入れました。特に反響が大きかったのは,工学部の学部祭「北桜祭」で本プロジェクトが主導した打ち上げ花火の企画です。「北桜祭」実行委員や花火師の方々と綿密な打ち合わせを重ね,無事に花火を打ち上げることに成功。2019年の台風被害やコロナ禍で4年ぶりの対面開催となった「北桜祭」でしたが,そのフィナーレにふさわしいパフォーマンスになったのではないかと思います。
次に行ったのは,「ミニかまくら」づくりの体験会です。「百聞は一見に如かず」ということで,実際に手を動かしてみた方が楽しさが伝わるのでは,という考えから企画しました。当日は雪が積もらないというハプニングもありましたが,その魅力を伝えられたと思います。さらには,生産工学部の学生が自主創造プロジェクトで作成したキャンドルをいただいて,本番さながらに「ミニかまくら」に点灯。プロジェクト間のコラボレーションを果たしました。日本大学には多彩な活動を行う学生がいることを改めて実感した出来事でした。
こういった一つひとつの取り組みが実を結び,当日は「地域を盛り上げたい」「学生生活の思い出に何かを成し遂げたい」という意気込みを持った学生が集まりました。私も「多くの人を巻き込みたい」という思いが実現できて,とても嬉しい気持ちでしたね。しかも,集まったのは法学部や生物資源科学部といった多様な学部の学生たち。中には留学生の姿も見られました。このプロジェクトがきっかけとなり,学生の間に新しい出会いを生み出せたことに大きな達成感を覚えます。
プロジェクトを進めるうえで困難も多くありました。自主創造プロジェクトでは,大学からいただいた予算の中でプロジェクトを進行するのですが,予算のやりくりには苦労しました。「北桜祭」での打ち上げ花火費用に予想よりも金額がかかってしまったり,参加学生の移動費を確保せねばならなかったり。そうした中で,プロジェクト全体を見通して計画を立てるマネジメント力が身に付いたと思います。

学生の力で地域に活気を

実施にあたってご協力いただいた,横手市の「ミニかまくら」づくりを管理・運営しているボランティア団体「灯り点し隊」の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。かまくらづくり初心者の私たちにも丁寧に作り方を教えてくださったり,事務的な手続きも引き受けてくださったりと,改めて秋田の人の温かさに触れる機会となりました。実は,秋田県は人口転出率が全国一位(2022年時点)で,人口減少が加速している地域です。特に若者が進学や就職を機に都市部へ流出してしまうことが問題となっていました。そうした中、今回のプロジェクトでは,若い大学生の熱気を秋田県に届けることのできたのではないかと思います。大学生が精いっぱい「ミニかまくら」をつくっている姿を秋田の方に見ていただけましたし,県外出身の学生には秋田の魅力に触れてもらうことができました。実際に,参加学生の中には秋田県を初めて訪れる人もいて,人の温かさや雄大な景色といった魅力に気づいてもらえたのではないでしょうか。プロジェクト終了後,「また参加したい」「秋田県はいい場所だね」といった声を聞くことができたときは,何よりも達成感を味わえた瞬間でした。「関係人口」という言葉があるように,「横手に関わる人口」を少しでも増やすこができれば嬉しいです。
振り返ってみて感じるのは,人と人が出会うことの大切さです。日本大学の学生と地域の人々,または日本大学内でも学部の異なる学生同士の出会いなど,さまざまな出会いが生まれました。出会いがあるからこそ,知らなかったものの魅力に気付けるかもしれません。日本大学には,まだまだ出会いの余地があります。全国にキャンパスがあるからこそ,各地域の魅力に触れられる機会が豊富にあり,遠方の学部にもワクワクするような活動をしている学生がたくさんいます。今回の雪まつり「かまくら」を通して,自ら働きかけることによって仲間を集められると実感したので,これからも日本大学の学生が地域や社会とつながれる機会を生み出していきたいです。


(本記事に掲載されているのは,2023年3月時点の情報です)