日本大学競技スポーツ部では昨今、SDGsを意識した活動を行う競技部が増えつつある。その多くは、地域社会との交流において、競技に関連した形で子どもたちとふれあう機会や場所を提供するものだが、そこでの子どもたちとのコミュニケーションを通じて、学生自身が何かを学んだり、気づかされることも少なくない。地域社会のため、子どもたちのため、そして自分たちのために、これからも競技を通じて社会に貢献できることを考え、“人間力”の涵養に資する。

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日本大学体育団体連合会に所属する準硬式野球部は、創部72年を迎え、東都大学準硬式野球連盟1部リーグにおいて優勝35回、全日本大学選手権優勝5回を誇る伝統あるチーム。その活動拠点の1つが、アスレティックセンター八幡山と学生寮アスレティックヴィレッジの間に設けられた中庭多目的練習場。人工芝が敷かれた中庭スペースと、防護ネットで囲まれ人工芝が敷かれたブルペンで、学生たちが日々汗を流している。


そうした中、「スポーツを未来へ!!」という理念のもと事業を展開するB-next株式会社から、スポーツ体験プロジェクト「megaphone PARK」の提案を受けた準硬式野球部は、地域社会に貢献できる良い機会としてこれに賛同。部が練習休みとなる毎週水曜日の15時30分から練習場を貸し出すことになった。その背景には、アスレティックセンターが建つ東京都世田谷区は、子どもの体力が全国平均と同じく低い状況にあること、世田谷区スポーツ推進計画において、スポーツに関する地域の課題解決やスポーツを行う場の拡充・連携のため、本学スポーツ科学部との間で協定が結ばれていることもあった。

2022年5月にスタートしたプロジェクトは、5歳から小学校低学年の子どもを対象にしたスポーツ体験カリキュラム(1コマ60分×2コマ)で、ボールなどを使った運動を通して子どもたち自身が「挑戦する・想像する・表現する」を体験し、その喜びを共有しながら“生きる力”を育んでいくものとして構成されている。「指導してくれる女性スタッフの方が笑顔で接してくれ、何でも褒めてもらえるので、子どもたちも安心して取り組んでいます」と保護者の評価も高い。現在では練習場の提供だけではなく、準硬式野球部の学生がプロジェクトの指導スタッフのサポート役を務めており、その経験が学生の人間的成長を促すことにもつながると期待されている。


また、今年4月には関東地区大学準硬式野球連盟が、女子選手の積極的な受け入れを表明した。これまでも大学の準硬式野球部でプレーする女子選手はいたものの、SDGsの「ジェンダー平等という観点からの今回の発信により、大学でも野球をやりたいと考える女子選手たちの選択肢が大きく拡がることが期待されている。本学準硬式野球部では、以前からそうした対応を行っており、2020年より埼玉西武ライオンズ・レディースで活躍する田中美羽選手(2021年・文理学部卒)は、在学中から女子硬式野球の社会人チームに所属しながら、平日は準硬式野球部と共にトレーニングを行っていた。さらには、B-next社が女子野球の振興をサポートしていること、「megaphone PARK」の指導スタッフに女子硬式野球の選手が参加していることも決して偶然ではなく、時代の必然だと言えるであろう。
準硬式野球部が取り組むSDGsおよび地域社会貢献は、また新たな形を模索しようとしている。

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