日本大学競技スポーツ部では、選手たちの競技力向上のみならず、社会から認められる“人間性”を身につけるためにも毎年複数回に渡って、各競技部の中核を担うキャプテンと総務の学生を対象とした研修会を行っている。令和5年度の第1回は2023年2月6日(月)に行われ、午前の部は昨年に続き日本オリンピック委員会(JOC)より上田大介氏による「スポーツ・インテグリティ総論」をテーマにした講義を実施。午後はキャプテンと総務に分かれ、それぞれを対象にした個別研修を行った。

目標を明確にすることで学びが深まる

「皆さんは今日、何をしにきましたか?」

 

JOCでインテグリティ教育ディレクターとして活躍され、多くのアスリートに『インテグリティとは何か』『アスリートに必要なことは何か』『スポーツの価値とは何か』を伝え続けてきた上田大介氏の投げかけから始まった『令和5年度第1回競技スポーツ部キャプテン及び総務研修会』。

 

人は目標を定めると、大きな力を発揮できるようになる。この研修会の目標、目的も学生自らが考え、見つけ出し、答えを出すことで、ただ聞くだけではなく、しっかりと深く学び、血肉にしてほしい、という上田氏の願いが、最初の質問に込められている。

 

目標が明確に定まれば、どうやれば達成できるのか、何が必要なのか、やるべき事も明確になる。上田氏は続ける。『思考は、現実化します』と。自ら学び、考える事、そして行動し道を切り開くこと。それがアスリートとしての第一歩だと上田氏は伝える。

 

チームも同じ。チームとしての目標を明確にし、そのためにチームとして何に取り組まねばならないのか。チームをひとつにして、同じ方向に向かわせるための方策を考えるのは、キャプテンの務め。そのサポートをする総務も同様の考え方を持つことがチームビルディングには欠かせない。

 

こうして、まずはそれぞれが目的意識を持ち、自ら学びを得る姿勢を作るところから研修会がスタートした。

自主創造の精神でインテグリティを身につける

上田氏の講義も後半に差しかかると、もっと応援してもらえるアスリートであること、チームであるためには何が必要か、についても、学生たちに質問を投げかけた。

 

社会から道徳的、人格的に信用、信頼されなければ、応援してくれることもなく、支援してもらえることもなくなってしまう。スポーツは、決してひとりでできるものではない。見る、支える人たちがいて、初めてする側のアスリートが存在できる。多くの人や社会から応援してもらえるようになるために必要なのが、いわゆる“人間力”を身につける事である。

 

ここで、上田氏は人類滅亡の時を午前0時に見立てた『終末時計』を例に出す。今、新型コロナウイルス感染症拡大の影響や、様々な不祥事等で、スポーツの価値が下がってしまった。スポーツの必要性が失われつつある、と上田氏は話す。

 

「スポーツ界の『終末時計』は終わりに近づいています。この時計の針を戻す(終末から遠ざける)ためには、スポーツの価値を上げ、社会にスポーツが必要だと感じてもらわないといけません。ではスポーツの価値とは何なのか。私は、スポーツには未来と世界を変える力があると信じていますし、それこそがスポーツの価値であると思います。この価値を高めるために、私たちは多くのアスリートの皆さんに教育プログラムを提供しています。それを通して教え、伝えているのが、インテグリティ、“人間性”なのです」

 

だが、これもただ聞いているだけでは意味がない。最初に上田氏が話した通り、アスリートが自ら学び、自ら考え、自ら行動することで初めて本当の学びになる。まさに、日本大学が掲げる自主創造そのものである。

上田氏は、この日の講義を最後にこう締めくくった。

 

「今日、この話を聞いて、皆さんはどうしますか? どうなりたいですか? それはどうやって実現しますか? そして、なぜそうしたいのですか? 今日の学びを通して、考えてみてください」

 

上田氏の講義が終わり、午後からはキャプテンと総務に分かれ、それぞれ専門的な学びを進め、第1回の本研修会を終了した。

 

本研修会は全4回を予定。第2回は3月30日(木)に開催。第3回は6月〜7月、第4回は9月〜11月の間に開催を予定している。

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