2022年11月2日(水)から11月6日(日)にかけて兵庫県三木ホースランドパークにおいて
全日本学生馬術大会2022が開催され、障害馬術、馬場馬術、総合馬術の3種目が行われた。本学馬術部は障害馬術競技で団体優勝、馬場馬術は個人優勝、総合馬術で個人と団体優勝となり、3種目総合団体12連覇を達成した。競技の模様と部員が繰り広げたドラマをレポートする。
2022年11月2日から11月6日に渡り三木ホースランドパークにて全日本学生馬術三大大会が開催された。全国各ブロックから予選を勝ち抜いた馬術部員がオリンピック種目である障害馬術、馬場馬術、総合馬術の3種目と3種目団体総合優勝をかけて競い合う。大学馬術部にとって一番大きなタイトルであり、4年生にとって学生馬術最後の大会を意味する。本大会では各種目の個人及び団体、そして3種目の団体結果を合わせた3種目団体総合の順位が決まる。3種目総合で連覇を重ねるためにはそれぞれの種目で安定した強さと結果が求められるため日本大学馬術部が昨年までに積み重ねてきた3種目団体総合11連覇という数字がいかに大きなものであるかがわかる。本年も他校から打倒日大と追われる立場の中で12連覇を目指すこととなった。部員は4年間という限られた時間しか大学馬術部に在籍することが出来ない。毎年部員の入れ替えがある中で11連覇という数字はこれまでに在籍してきた部員から後輩達へ勝利の道を引き継いできた証でもある。
馬術部は文字通り馬を競技パートナーとして競技を行い、ホースファースト(馬を一番に)の精神が浸透している。部員は毎日早朝から馬術部馬場に集合して飼い付け、厩舎の清掃、馬の運動や体調管理などを部員同士で行いながら学業と両立させる。馬という命と向き合いながら日々の生活を送る中で部員は多くのことを学ぶ。馬術は馬との信頼関係がなければ成立しない競技と言われる。部員と馬達は厩舎や馬場で長い時間をともに過ごしながらお互いの理解を深めていく。部員にとって馬達は競技を離れていてもよき理解者であり仲間となる。
障害馬術競技第一走行に出場した鷹見優(生物資源科学部4年)&桜魂
実力者が揃う日大馬術部で全日本学生のレギュラーを取ることは並大抵のことではない。競技に出場するレギュラーメンバーは部員に平等に与えられる数少ないチャンスを確実にものにした者が選出される。障害馬術でレギュラーとなった4年生の鷹見優は言う。「僕はレギュラーになったことで大きな責任感を持つようになりました。僕らは部員を代表して競技に出場します。その期待に応えたい気持ちが強いです。これまで試合に出場出来ず苦しい時もありましたが、その時間が自分を成長させてくれたと思います。」
本年の全日本学生馬術三大大会は障害馬術5人馬、馬場馬術4人馬、総合馬術5人馬が出場した。
第一走行の吉田ことみ(スポーツ科学部4年)&桜艶
第1種目は障害馬術競技、2日間で2回走行を行い総減点を競う。日本大学馬術部からは楠本將斗(スポーツ科学部4年)&桜真、瀬川裕哉(スポーツ科学部4年)&桜望、鷹見優(生物資源科学部4年)&桜魂、吉田ことみ(スポーツ科学部4年)&桜艶、大池駿和(スポーツ科学部2年)&桜妃が出場した。
第1走行は楠本&桜真と瀬川&桜望の4年生2名が減点0の走行を見せて団体1位で折り返した。瀬川と出場する桜望はリオデジャネイロオリンピックに日本代表として出場したオリンピックホースでもある。昨年までは瀬川とともに総合馬術に出場し、全日本ヤング総合(22歳以下の総合馬術全日本選手権)などのタイトルを獲得、今年度からは障害馬術に出場している。
障害馬術競技第一走行で障害物を飛越する瀬川裕哉
障害馬術第一走行を減点0で終えた楠本將斗(スポーツ科学部4年)&桜真
第一走行で障害物を飛越する大池駿和(スポーツ科学部2年)&桜妃
第二走行は秋の晴天の中で行われ前日に続き楠本&桜真と瀬川&桜望が減点0、吉田&&桜艶が減点1で走行し、団体総減点−4点、団体総タイム212.43秒として第1種目の障害馬術競技団体優勝を勝ち取った。第1種目の勝利はこの後に続く馬場馬術、総合馬術にチームとして勢いをつけるためにも大事な初戦であるということはメンバー全員が感じていたことだろう。4年生が他の部員を引っ張るような力強い走行を見せたことが結果に繋がったと同時に彼らの背中を見た後輩達に今何をすべきなのか、日頃の練習、馬に対する接し方、競技に対しての向き合い方を伝えてくれたように思う。
鷹見優(生物資源科学部4年)&桜魂 (第二走行)
瀬川裕哉(スポーツ科学部4年)&桜望 (第二走行)
楠本將斗(スポーツ科学部4年)&桜真
第二走行を終えて愛馬を撫でる吉田ことみ(スポーツ科学部4年)&桜艶。ゴール後に馬への感謝の気持ちを表した。
障害馬術競技中に出場人馬が最後の調整を行う待機馬場で気になるシーンがあった。自身が出番を控えた4年生の楠本が待機馬場の横で先に出番を迎える2年生の大池&桜妃を見つめていた。「大池は1年生の時から僕が担当して見ています。走行前に最高の走りを俺に見せてくれと伝えました」と楠本は言う。同じ待機馬場には主将の中込樹の姿もあった。中込はこの時の気持ちをこう表現した。「僕は障害馬術には出場出来ないので出場人馬に頼んだぞ!と伝えるために行きました。」
待機馬場で2年生の大池駿和(スポーツ科学部2年)&桜妃に声をかける楠本。
待機馬場で出番を控える人馬を見つめる主将の中込樹(中央)。
そして「馬付き」と言われる出場人馬をサポートする役割の部員がコーチの指示を受けながら機敏に動き続ける。これらを見ると改めて学生馬術はチーム戦とあることに改めて気が付く。レギュラーとして出場する人馬と彼らを支える部員の双方が普段からお互いの役割を意識し、融合することでチームとして大きな力が発揮されるのだろう。
瀬川&桜望の馬付きである4年生の堀坂七菜子はこう言った。「人馬が笑顔でウィニングランを走っている姿を見た時や良い時も悪い時も人馬が怪我なく帰ってきてくれて選手からありがとうと言ってもらえた時が一番嬉しいです。選手と馬には感謝の気持ちでいっぱいです」。