最終種目は総合馬術競技だ。
馬場馬術、クロスカントリー、障害馬術を同じ人馬で3日間に渡り駆け抜ける総合馬術は繊細さ、力強さ、耐久力などの様々な要素をクリアしていかなくてはならない。総合馬術には瀬川裕哉(スポーツ科学部4年)&桜焔、楠本將斗(スポーツ科学部4年)&桜空、吉田ことみ(スポーツ科学部4年)&桜里、細川由妃((生物資源科学部4年)&桜恋、アンナ・ボルトニク(生物資源科学部3年)&桜彩の5人馬が出場した。初日の馬場馬術でトップに立ったのは71.23%のスコアを出したアンナ&桜彩だ。馬場馬術では1位から4位までを日大が独占し幸先のいいスタートを切った。

翌日はクロスカントリー競技が行われ、瀬川&桜焔が2種目を終えた時点で総減点29.1点トップに躍り出た。楠本&桜空が2種目総減点30.4点で2位、吉田&桜里が2種目総減点30.9点で3位につける

最終種目の障害馬術を前に3人馬に優勝の可能性がある状況となり最終競技がスタートした。障害物1落下で順位が入れ替わる接戦だったが瀬川&桜焔が満点走行を見せて個人優勝を果たすと同時に総合馬術団体優勝、そして3種目の合計点で争う3種目団体総合12連覇が決まった。

最終種目終了後に4年間を共に過ごした桜里に寄り添う吉田。

最終種目終了後に4年間を共に過ごした桜里に寄り添う吉田。

ゴール直後に吉田が4年間コンビを組んだ桜里の体に身を寄せてこれまでの感謝を伝えているかのような姿がとても印象的だった。この瞬間の心境を吉田は「4年間辛い思いも嬉しい思いもたくさんありましたが、彼女(桜里)の背中に乗っている瞬間が本当に幸せだったのでありがとうと言う気持ちでいっぱいでした」と言う。

4年間を共に過ごした総合馬術の桜里は引退競走馬である。神経質な性格でなかなか心を開いてくれなかったというが、吉田を乗せて走る桜里は競走馬時代とは違う輝きを放っていた。それは吉田の思いが馬に伝わっているからだろう。また同級生の存在がとても大きかったようだ。「自分よりも実力のある同期部員から技術的な部分を学ぶ機会が多かったです。皆で補い合い、助け合う空気があったと思います。卒業後も試合会場で同期と再会できることを目標に卒業後も頑張ります」と吉田は言う。この言葉から同じ世代の選手同士が集う大学馬術部の魅力とこの場所で過ごす時間の意味を感じた。

表彰式前に馬付きの部員とハイタッチをする細川。

表彰式前に馬付きの部員とハイタッチをする細川。

もう一人、気になる選手がいる。総合馬術に出場した細川由妃だ。普段から口数が多い選手ではないが芯の強さを感じさせる。団体表彰を控えた待機馬場で馬付きの後輩と笑顔で手を取り合っていた。「たくさん私をサポートしてくれて後輩には本当に感謝しています」と言う。

細川は高校3年時まで大学進学は考えていなかったが日大馬術部OGの姉から馬術部のセレクション受験を勧められて受験を決意、4年間を過ごした今、大学馬術部を選んでよかったと振り返る。4年時は試合出場と同時に総務としての仕事を積極的にこなした。「大変な思いもしたけど過ごしやすい場所だった、日大馬術部には人脈の広さがあります。それも魅力ですね」と語る。

 

試合後主将を務めた中込樹に日大馬術部の強さの理由について聞くとこんな返答があった。
「日大馬術部の強さは組織力だと思います。部員全員が自分の役割をよく理解していて僕が指示を出さなくてもすぐに動いてくれます。個人の自覚ある行動の積み重ねが日大馬術部を作っていきます。誰か一人の力ではなく部員全員の力が結集されて今の強さがあると思っています。」
競技に出場して結果を残す者と彼らを支える存在、二つの存在が点ではなく線として繋がると同時に日々の当たり前に対して誠心誠意向き合った結果が3種目団体総合12連覇という偉業を達成した理由なのだ。

3種目団体総合表彰式で優勝旗を受け取る主将の中込樹。

3種目団体総合表彰式で優勝旗を受け取る主将の中込樹。

全日本学生馬術大会は4年生にとって大学馬術部員として競技に出場する最後の大会となり、今後は幹部交代が行われる12月31日までの間後輩達へ伝統を引き継ぐ時間となる。中込はこれから馬術部を背負っていく後輩に対してこんなメッセージを寄せた。

「とにかく誠心誠意の気持ちで馬に尽くしてほしいです。そうすれば数字という結果だけでは表せない物が残るはず。それは今後の人生の中で大きく役に立つと思います。」

馬術部は2023年1月1日から新体制となり、13連覇に向けた挑戦がスタートする。

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