幾度となくインカレで連覇を続けてきた水の覇者・日大。近年は大学間での戦力の分化もあり昔のような連覇が難しくなってきている。その難題に、今年の日大は挑み、勝利を勝ち取った。
 
そこには、チームを鼓舞し、天皇杯を引き寄せた、今大会でインカレを卒業する4年生たちのプライドと思いがあった。
 
4年生の活躍を中心に連覇のインカレを振り返る。

事前の合宿で高めた『チーム力』

「最強で最高のチームでした」

天皇杯を手に、石崎慶祐主将(スポーツ科・4年)はそう答える。個人では100m、200m自由形で連覇を目標に取り組むも届かず。ただ100mで5位、200mでは3位表彰台を獲得し、その存在感をアピール。4×100mリレーでは4年間トップバッターを務め、今大会は3分16秒69の日本学生新記録更新に大きく貢献。その大役を見事に果たした。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大もあり、今までのような“チーム”で取り組む活動に大きな制限が設けられてしまった。皆で取り組み、考え、話し合い、行動していく。そういう生活を続けていく中で自然と生まれていく一体感と高揚感、そして1つの目標に向かって共に歩むという意志。それがどうしても作りにくい状況にあった。石崎主将も「どうしたらチームが一体となって盛り上がるのか。それを考えるのがとても大変でした」と話す。
 
「団結力を高める意味でも合宿を組もう、と8月中旬に静岡で合宿を行いました。ここで皆が集まることができ、男子は連覇という目標に向かってチーム一丸となって戦うために、自分たちが何をすべきかを再確認できました。この合宿の意義は非常に大きかったと思います」(石崎主将)
 
4年生の力は、チーム力を大きく左右する。それは競技力だけではなく、人間力、団結力、そして意志の力を総合した力だ。心技体が揃った4年生の力が、チームを盛り上げてくれるのだ。石崎主将も、その1人だった。そして、今大会で日大が連覇できたのは、4年生の熱い思いがチーム全体に伝播していたからにほかならない。

石川、意地の100mバタフライ制覇

今大会、実は4年生が個人優勝したのは1種目。100mバタフライの“お祭り男”石川愼之助(スポーツ科・4年)である。思い返せば4年前、1年生の時に51秒11の日本学生新記録で優勝を果たし、一気にその名を全国に広めた。だが、2年、3年と思うような成績を残せずくすぶった。最終学年となった今年、「このユニフォームを着るのも最後」と思うと、内側から熱いお祭り男の血が騒いだ。

『このままで終わるなんて、俺じゃない』

勝負はラスト15mとにらみ、そのために事前の準備を進めてきた。「最後は100mじゃなくて、もっと先にタッチするくらいのつもりでいきました」と石川。その言葉通り、ラスト15m過ぎてからの追い上げは迫力に満ちていた。タッチ勝負でライバルを交わしきった石川は、51秒84で3年ぶりとなる優勝を果たし、雄叫びを上げた。

「N.が似合う男になれたかな」

最後だからこそ、勝ちたかった。その思いが泳ぎに、そして結果につながった瞬間だった。

石崎主将も「やはり4年生が活躍するとチームの士気が上がります。彼の優勝はかっこよかったですし、僕も気持ちが入りました」と話す。この石川の優勝は、連覇を狙うチームの士気を上げるのに十分だった。

4年生の思いがチームを鼓舞し連覇を引き寄せた

4年生の思いは、皆同じ。だが、悔しい思いをした選手もいた。眞野秀成(スポーツ科・4年)である。

最終学年の今年は100m、200m背泳ぎに出場。事前のランキングからは十分に優勝を狙える位置にいたが、どちらもあと一歩及ばず2位に終わった。特に100mでは前半から積極的に攻め、チームに勢いを与える泳ぎを見せていただけに、その悔しさは人一倍だったことだろう。

吉田啓祐(スポーツ科・4年)も同じ気持ちを味わった。度重なる故障に悩まされながらも、前回大会では200mと400m自由形で2冠を達成。今年も連覇を狙っていたが、肩の痛みで思うようなトレーニングを積むことができなかった。練習、といえるものができたのは、2カ月程度の期間であったという。

「でも、やっぱり最終学年のインカレではベストも出したかったし、優勝したかったです」

悔しそうに話す吉田は、200m、400m自由形はともに6位。得点でチームに貢献できたとはいえ、吉田自身は4年生としてもっとチームを引っ張っていきたかった。その悔しさは計り知れないものがあった。

だが、この2人はインカレ最後の種目、4×200mリレーで魅せてくれた。ここまで4×100mのリレーとメドレーリレーを制しており、2年連続リレー3種目制覇のかかったこのレース。

第1泳者は、この時点で4冠を達成するなど、もはやエースどころか、チームに欠かせない柱となった本多灯(スポーツ科・3年)が務める。前半に溜めた力を100mのターン後から一気に解放。周囲との差をあっという間に広げていくと、1分46秒89と今季日本ランキング2番手となるタイムを叩き出す。そのリードを、200m自由形で銀メダルを獲得した1年生の柳本幸之介(スポーツ科・1年)が守る。

そして第3泳者には眞野。今大会の悔しさをぶつけるように積極的な泳ぎを見せ、引き継ぎながら1分47秒11の好タイムをマークする。そしてアンカーは、吉田だった。

その記録こそ1分49秒15というものではあったが、4日間、チーム日大がつないできた襷を受け取った吉田は、全力を尽くす。引き継いだ時点で2位とは6秒強の差が付いていたため、ほぼ優勝は確定していた。それでも、吉田は最後まで手を抜かず、出せる力の全てを出し切った。懸命に水をかき、キックを打つ。その姿に、チームの応援にも熱がこもる。
そして日本学生新記録を樹立。
フィニッシュしたとき、この1年間チームを支え続けてきた4年生の思いの全てが弾けた。
水の覇者・日大が、2年連続で天皇杯を手にした瞬間だった。

水の覇者・日大の伝統は受け継がれ、続く

チームの中心となって活躍したのは、やはり五輪、そして世界選手権メダリストの本多だった。2日目の200mバタフライでは大会タイ記録となる1分54秒06で優勝し、4×100mリレーの優勝にも貢献。3日目は4×100mメドレーリレーで優勝し、最終日は400m個人メドレーで後輩の寺門弦輝(スポーツ科・2年)、小方颯(スポーツ科・1年)らと表彰台を独占。そして4×200mリレーも制し、本多は今大会目標としていた5冠を達成した。
 
また、1年生も将来への期待が膨らむ活躍を見せる。小方は200m個人メドレーを制し、2年生の寺門、3年生の本多とともに、『個人メドレーの日大』を背負って立つ1人に加わった。柳本も200m自由形で2位、北川凜生(法・1年)は100mバタフライで表彰台は逃したものの4位入賞を果たした。こうした層の厚さが、男子総合連覇に貢献したことは間違いない。
 
チームのために、チームとして戦う日大。その全てが、吉田が個人のレースを終えた後に話した言葉に詰まっていた。
 
「このチームで本当に良かったし、すごい恥ずかしいんですけど、このチームが好きです」
 
この思いこそが、日大の伝統を作ってきたそのものだった。少しの休息を経て、チームは新しい歩みを始める。水の覇者としての誇りとチームへの思いを胸に。

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