あなたはあがり症?緊張が生む体への影響

本番で最高のパフォーマンスを発揮するには?の記事でも紹介した通り、本番になると思い通りに身体が動かなくなる経験、皆さんにもありますよね。

特に、プロのアスリートにとっては、一つ一つの試合や競技が、今後の選手生活や評価に直結しているため、本番への緊張だけでなく、今後の人生に影響があるといった、もう一段階高いプレッシャーを感じているはず。

そうした緊張やプレッシャーの中では、呼吸が浅くなったり、筋肉が硬直したりといった身体への影響に加えて、思考が乱れる、考えがまとまらなくなるなど、精神状態にも悪い影響が現れます。

いわゆる”本番であがる”状態ですね。この現象、一体なぜ起こってしまうのでしょうか?

そもそも”あがる”ってどういうこと?

その理由の一つには、人間は危険を察知したり、不安や恐怖を感じたりすると闘争・逃走反応が起こるからだと言われています。

人間は、基本的には恐怖や不安から逃れようとするようにプログラムされています。生命の危険を察知すると、わざと筋肉を硬直させたり、心拍数を上げたりして(ドキっとさせて)、身体に「逃げろ!」と命令をするわけです。

しかし、鋭い人はここで「スポーツは別に命の危険ではないんじゃ……」と思うかもしれませんが、その通り!一部のスポーツを除いて、本番に臨むこと=命に関わるわけではありません。実際には、こうした、闘争・逃走の反応は、生命の危険を因数分解した時に出てくる「恐怖」や「不安」と言ったシグナルにも反応するようにできているのです。つまり、本番に対して「怖い」「失敗したらどうしよう」と言った感情を持ってしまうと、自らの生命を守るために自然と出てくる、いわば免疫システムの一種なのです。

しかし、確かに適度な緊張は、一時的に身体能力を向上させたり、集中力を高めたりするのに有効なのですが、「極度の」緊張は却って心身や精神に悪影響を及ぼします。つまり”あがる”とは、「恐怖や不安を感じた時に起こる反応が、本来の機能を超えて過度に働いてしまっている状態」というわけですね。

心と体を整える!本番前にやること3選

そうは言っても本番で成功したい、そのために最高のパフォーマンスを出したい!と思えば思うほど、不安や恐怖も大きくなるはず。

それを解消するためには、日々のイメージトレーニングやゴール設定などが有効なのですが、もしあなたが準備万端でないまま本番を迎えてしまったら、早急に心と体のコンディションを整える必要があります。そんな時、以下の3つを試してみてください!

①全身に思いっきり力を入れて、思いっきり抜く

身体が緊張状態に入ってしまうと、抜け出すのは大変。なぜなら、意外と「力を抜く」のを意識的に行うのは難しいものなのです。ですから、そんな時はまず思いっきり力んでください。その後、力んだ状態を解放してあげれば、自然と力が抜けてくるはずです。

②ガムを噛む

意外なことに、顎を動かすとリラックスすることができます。これは、咀嚼によって交感神経が抑制され、副交感神経が優位になることで緊張状態を緩和され、さらに唾液の分泌により……とかなり複雑なメカニズムですが、とにかくガムを噛むとリラックスできるのです。もし、この辺りに興味がある人は、スポーツ生化学を勉強が向いているのかも?!

③ルーティンを作る

競技前のルーティンは、プレパフォーマンスルーティンとして多くのプロアスリートにも取り入れられ、あがりを防止する方法としてとても有名です。プレパフォーマンスルーティンとはアクションやパフォーマンスを行う直前にする動作のこと。

例えば、サッカーでフリーキックを蹴る前に大股で5歩下がり、大きく息を吐き、蹴るコースをイメージしてキックの動作に入ります。

リズムも1・2・3・4・5といつも一定のリズムで蹴ることを習慣にしておき、試合でもその通りのリズムでキックします。これにより、リラックスや集中を促し、心理的な安定を確保できるとともにパフォーマンスの安定や向上が期待出来ます!

逆U字理論って知ってる?知れば納得のスポーツ心理学!

ここまで読むと、さも緊張は悪いことのように思われるかもしれませんが、では緊張感のないスポーツが面白いのか?と言われると、おそらく多くの人はそうは思わないでしょう。本番で何が起こるかわからない、ここまでの練習の成果がこの瞬間に詰まっているからこそ、緊張感が生まれ、達成感につながるのも事実です。

そして、実は緊張しなさすぎても、実は却って心身のパフォーマンスが下がるって知っていましたか?もちろん過度なストレスは緊張状態を作ってしまうのでパフォーマンスが低下しますが、逆にストレスがなさすぎても、身体が完全なリラックス状態に入ってしまうため、満足なパフォーマンスを得ることが難しくなります。

こうした、リラックス状態ではパフォーマンスが下がり、適度なストレスによって向上、そして過度なストレスによって再度低下する現象を、スポーツ心理学では「逆U字理論」と言います。つまり、パフォーマンスの最適化には、ストレスのコントロールが欠かせない一つの例というわけですね。

これ以外にも、スポーツ心理学の世界では、アスリートなら誰しも体験したことのある”あの現象”の数々を、理論として学ぶことができます。日本大学スポーツ科学部でも「スポーツ心理学の基礎」や「メンタルマネジメント」といった科目でスポーツ心理学を学ぶことができます。

あなたも、日本大学 スポーツ科学部でアスリートの心と体を解き明かす勉強をしてみませんか?