日大のDNAインタビュー 岡崎 隼子 氏

東京化成工業株式会社(大学院 生産工学研究科 工業化学専攻修了)

卒業生
2022年01月19日

「試薬を通じて社会に貢献する」を基本理念に掲げる東京化成工業。医薬品や食品、電気製品などさまざまな商品の開発や、環境問題解決のための研究などに必要な実験用化学品である「試薬」のメーカーで、創業は明治27(1894)年と120年以上の歴史を有する。北米や欧州、中国、インドに海外拠点を持ち、供給先は83カ国。3万品目以上の製品を、主に大学や企業の研究室に届けている。

調達から供給まで円滑に進み、社内から「ありがとう」と感謝されるとやりがいを感じます。

―普段のお仕事の内容を教えてください。

試薬のサプライチェーン管理です。埼玉県深谷市にある製造工場の原料調達から始まって製品の小分け、配送センターに届けるまでをマネジメントしています。欠品や過剰在庫を避け、お客様にスムーズに製品が供給できるように心掛けています。

昔から化学が大好きなので研究部門で働くという希望があったのですが、営業と倉庫、製造をつなぐサプライチェーンの重要性が分かり、今の仕事が非常に面白いと思うようになりました。

ベルギー(TCIヨーロッパ、アントワープ)に5年間出向していました。プライベートでも欧州を巡る機会に恵まれ、「オペラ座の怪人」など好きなミュージカルを観にユーロスターでロンドンに行ったりして、楽しい思い出もたくさんあります。苦手だった英語も何とか克服しました。

―やりがいはどんなところに感じますか。

工場で製造する50~60キロの製品を、試薬として販売する時には25グラムや5グラムに小分けします。分析チームが作成したデータを見て供給計画を立てるのですが、需給のバランスを考えた上での予測が重要です。欠品率をゼロにするのは不可能ですが、とにかく率を下げることを目指します。

読みが当たってうまくいった時は「うれしい」の一言。調達から供給まで円滑に進み、社内から「ありがとう」と感謝されるとやりがいを感じます。

昨年初からの新型コロナウイルス感染拡大により、世界的に見れば試薬のマーケットも混乱しました。ただ日本ではロックダウンに至らず、ユーザー側の研究開発がストップすることもなかったので、さほど影響は受けませんでした。

専攻以外の分野に広く目を向けられたのは大きな財産。大学で得た知見が役に立つ場面があるのです。

取材中の岡崎隼子氏

―本学での学生生活はいかがでしたか。

学部の4年間は「何となく」過ぎてしまった感じです。システムエンジニアになった同級生もいたのですが、やはり化学の道に進みたくて、大学院進学を選択しました。

院では打って変わった生活になりました。現在学部長をされている清水正一先生の研究室で勉強、実験、研究の日々を過ごしました。清水先生と、学部時代に指導を受けた佐々木保之先生と一緒に「カリックスアレーンを化学結合させた次世代型クロマトグラフィー固定相」で特許も取得しました。

―本学の魅力は何でしょう。

今はサプライチェーンの管理をしていますが、化学の知識があるので製造現場の人と、特に意識しなくてもスムーズに話ができます。

またユーザーからのクレームも、自分自身がかつて試薬を実際に使用していた経験から、感覚的に捉えることができます。こういう点では大学でやってきたことがとても役に立っています。

私は生産工学部でしたが、化学ばかりでなく、土木や建築などほかの学科の学生と触れ合う機会が多かったのも魅力の一つですね。

授業や図書館で時間を共有したばかりでなく、学園祭などでも交流があり、つながりが持てました。理系という枠の中ではありましたが、ほかの分野に広く目が向いたのはよかったし、振り返るといい環境だったなとつくづく思います。

インタビューを受ける岡崎氏

―後輩へのメッセージをお願いします。

たとえ今関心がないことでも、「ちょっと見てみる」ことをお勧めします。後になって、どこでどうつながるか分かりません。

私の場合、先に述べた通り、土木や建築に多少なりとも触れたことが大きな財産になっています。工場の構造の把握など思ってもみなかった分野で、大学で得た知見が役に立つ場面があるのです。大学でいろいろと見聞きすることに積極的に興味を持ってもらいたいと思います。

女性の社会進出について関心がある向きも多いでしょうが、私は女性だからといって特に不利益を被ったことはありません。中学、高校と女子校だったので大学では男子が多いと感じましたが、学生生活でも性差は意識しませんでした。

会社に入ったら完全に男女平等。重い荷物くらい持ってくれてもいいのに、と冗談を言いたくなるくらいです。

 

岡崎 隼子プロフィール

岡崎 隼子(おかざき・たかこ)

1977年    東京都台東区生まれ
2000年    本学生産工学部工業化学科卒
2002年    本学大学院生産工学研究科 工業化学専攻修了
2002年    東京化成工業入社
2013〜2018年    TCIヨーロッパに出向
2018年    即納ユニット(インバウンド)・
     BPRプロジェクト管理室マネージャー
2020年    調達部サプライチェーン管理 グループマネージャー

生産工学部

創設:1952年 
学生数:6,294人(男5,239人 女1,055人)※令和3年5月1日現在
 □ 機械工学科     □ マネジメント工学科
 □ 電気電子工学科   □ 数理情報工学科
 □ 土木工学科     □ 環境安全工学科
 □ 建築工学科     □ 創生デザイン学科
 □ 応用分子化学科
岡崎さんの学んだ「工業化学科」は、現在「応用分子化学科」と名称を変え、創造性、独創性を有する技術者を養成している。
■ キャンパス
津田沼キャンパス
〒275-8575 千葉県習志野市泉町1-2-1
──主に2年生以上と大学院生が学ぶ。学科の教室棟、情報処理演習室、図書館、体育館などの教育施設のほか、実験棟など先進的な研究施設も充実。
実籾キャンパス
〒275-8576 千葉県習志野市新栄2-11-1
──1年生が学ぶキャンパス。教室棟・実験棟などの教育研究施設や多彩な体育施設、充実したスポーツエリアを備えている。