日大のDNAインタビュー 伊賀 誠司 氏

創英国際特許法律事務所(法学部卒)

卒業生
2022年09月09日

特許権や実用新案権、意匠権、商標権などの知的財産に関する権利を取得したい人に代わって、特許庁への手続きを行う弁理士。国家資格が必要だが、令和3年度の合格率は6.1%と試験は「難関」で知られる。

120人以上の弁理士・弁護士を抱える大手「創英国際特許法律事務所」に勤め、意匠権を専門に企業をサポート。同時に日本弁理士会で副会長という要職に就き、弁理士会の発展のために力を尽くす。忙しい日々を送る伊賀誠司氏を訪ねた。

弁理士は発明が権利として生まれ、育っていく世話をするので、医者に例えれば、産婦人科医や小児科医のようなものです。

―普段のお仕事の内容を教えてください。

現在の事務所に移って約5年ですが、今は意匠権を専門に扱っています。
有名企業から個人のデザイナーまで依頼者はさまざま。対象も工業製品から日用品まで幅広い分野にわたり、いろいろな意匠の出願のお手伝いをしています。

以前勤めていた小さな事務所では知的財産全般を担当していましたが、この事務所では多くの弁理士が担当分野を分けて組織的により高度な仕事をしています。日本だけでなく、世界各国の国際的な出願も手掛けています。

―弁理士会の仕事もされています。

4月から日本弁理士会の副会長を務めています。弁理士会には約1万2000人の全ての弁理士が所属していますが、会長の下に8人の副会長がいて、その中の一人として活動しています。

昨年10月に役員定時選挙がありましたが、日本大学卒の弁理士からも多くの応援と支持をいただき、当選できました。

弁理士会ではいくつかの委員会を担当し、事業の承認などを行います。特許事務所は丸の内ですが、弁理士会のある霞が関と行ったり来たりです。

2025年の大阪・関西万博に向けて弁理士会でもイベントを計画しています。直接の担当ではありませんが、胸に万博のバッジを付けてPRしています。

―やりがいはどんなところに感じますか。

弁理士というのは知的財産の権利を守る仕事です。よく医者に例えて説明されますが、弁護士は外科医。けがをした時に治します。弁理士は発明が権利として生まれ、育っていく世話をするので、産婦人科医や小児科医のようなものです。

依頼者である企業と前向きに発展的に付き合っていけるところが、弁理士の仕事の素晴らしい点です。権利を取得するのに困難を伴うこともあります。特許庁と登録要件の具備について丁々発止の議論をしたり、外部から異議が出た場合には書面で激しくやり合ったりもします。

こうした困難を乗り越えて権利化し、依頼者に喜んでもらうのが一番のやりがいです。30年以上もやっていますが、今でも楽しいですね。

日大は勉強したいという気持ちに応えてくれる懐の深い大学です。 いろんなことにチャレンジして夢をかなえてほしいと思います。

事務所の窓から見える風景

―本学での学生生活はいかがでしたか。

1年の時は教養で三島にいて、2年になって三崎町に来ました。進級時に法科研究室の紹介があり、何か資格を取ろうと思い、その中で弁理士科研究室の門をたたいたわけです。

3年で工業所有権の権威だった杉林信義先生のゼミに入り、現役の4年の時に弁理士の1次試験に受かりました。「弁理士になれるぞ」と思いを強くし、卒業して特許事務所に入り、勉強を続けました。27歳の時に合格しましたが、受かる平均が33歳くらいだったので、若い方でした。当時の合格率は約3%で、今より狭き門でした。

研究室に入っていた大学時代に一番勉強しました。研究室には二十数人いましたが、同じ志を持つ者と討論し、受験対策を練りました。勉強だけというわけではなく、仲間と合宿に行ったり、息抜きに野球をしたり、充実した学生生活を送りました。

―本学の魅力は何でしょう。

弁理士の世界では日大の縦のつながりがとても強く、先輩から教えてもらうことが多々ありましたし、私も合格後、後輩の指導に当たりました。合格者の8割近くは理系。残りの法学系の中で、日大の研究室出身者は昔から大きな存在感を示しています。

日大出身の弁理士で桜門弁理士クラブを組織し、先輩、後輩の関係は非常に密で強固です。日大に入ってこの仕事を選んで本当に良かったと思っています。

―後輩へのメッセージをお願いします。

弁理士は未来に向かって依頼者と喜びを分かち合えるやりがいのある仕事です。試験は難しいですが、新しい仲間としてこの世界にぜひ入ってきてください。
日大は勉強したいという気持ちに応えてくれる懐の深い大学です。弁理士に限らず、いろんなことにチャレンジして夢をかなえてほしいと思います。

 

伊賀誠司氏 プロフィール

伊賀誠司(いが・せいじ)

1960年 北九州市生まれ
1984年 本学法学部卒、国際特許事務所入所
1988年 弁理士登録
2005年 特定侵害訴訟代理業務付記登録
2017年 創英国際特許法律事務所入所
2022年 日本弁理士会副会長就任

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