【付属校の教育実践】
「好き」を究める

長野日本大学高等学校

付属校
2024年01月23日

長野日本大学高校は普通科に加え、令和4年度に探究創造学科を新設、「『好き』をとことん探して『好き』を究める」教育を実践している。

探究創造学科は1クラスのみ。アスリートを含めたスポーツ全体を支える人材の育成を目指すスポーツカルチャーコース(SCコース)と、自らの研究に突き進むグローバルプロジェクトコース(GPコース)に分かれる。

1期生の現2年生は前者が19人、後者が8人の構成。論理国語や数学Ⅱといった一般科目のほか、水曜と木曜に集中する週9コマの探究の時間に栄養学やマッサージ術、フィールドワークなど将来に直結した学びを修めている。

競技者向け献立

SCコースの栄養学の授業を見学した。4月に座学からスタート、理解を深め、当日は管理栄養士と家庭科の教員の指導の下、アスリート向けの食事を作った。

競技者に適した「おやつ」として、以前にはキウイを使った牛乳寒天とババロアを作ったという。

この日の献立はみそ汁、切り干し大根のサラダ、鶏肉のごま生姜焼き、ごはん。
4班に分かれ、煮干しのはらわたの取り方やブロッコリーの切り方など助言を受けながら調理に挑んだ。

「成果」は昼食として皆で実食し、放課後の部活動で競技者向け献立が役に立ったかどうかまで検証した。

SCコースの生徒は全員、野球やバスケットなどの運動部に所属している。進路は競技者や保健体育科の教員、栄養士、介護福祉士などが想定される。

実食後の5時間目は、信州スポーツ医療福祉専門学校のトレーナーを先生に、柔道場でサーキットトレーニングの授業を受けた。ケガをしている生徒には別メニューが用意されていた。

多くの競技を経験しておくためにスポーツⅡの授業では前期は水泳、後期は柔道を学ぶ。SCコースの生徒全員が柔道着を持っているという。

マッサージを学ぶ授業もある。4月の長野マラソンではボランティアでゴール後のランナーに施し、好評だった。希望者全員に施術できなかったため、次回はテントの数を4張から6張に増やすことを検討している。

シニア世代でもできるゲームを考える授業では、バレーボールを蹴ってペットボトルに当てるゲームなど4種を考案。長野市で開かれた県シニア大学のイベントに集まった約120人(平均年齢71歳)とゲームを楽しんだ。

学校を飛び出す

GPコースの生徒は同じ探究の時間でも、行動を別にして研究に没頭する。この日は情報誌出版プロジェクトのため、長野県南部の根羽村に取材に出向いた。

地元の町を音楽の力で応援するプロジェクトとして来夏に音楽フェスの開催を計画している生徒や、水質調査から生物多様性の移り変わりを研究する生徒、公民館に掛け合って自分の美術作品展を開いている生徒―。学校を飛び出し、好きなことにのびのびと取り組んでいる。

計画について熱く語る寺島さん

計画について熱く語る寺島さん

吹奏楽部に所属している寺島朔史さんは地元の飯綱高原で音楽フェスを開催すべく、飯綱町と連絡を取りながら準備を進めている。「少子高齢化に悩む飯綱町では移住促進策を進めています。僕の計画がこうした取り組みの追い風になれば」と話した。

高校生バンドの出演を考えているが、有名なアーティストとも交渉中という。

山田教頭に学科新設の背景を聞いた

山田教頭に学科新設の背景を聞いた

探究創造学科の入試は一般入試のほか、指定校推薦(SCのみ)と自己推薦がある。山田憲一教頭は「学習指導要領改訂に伴う探究導入を機に、総合型選抜を採用しようという発想が学科新設につながりました」と話す。

SCの自己推薦には「オーディション出願」を設定し、9月上旬のレポート審査に通らなくても再トライできる。GPは10人以下の少数精鋭を貫いており、SCと合わせ30人の定員は当面維持する。

未来変えるリーダー

3学年がそろう来年度は学科専用の研究室「Nラボ」を設ける。研究に集中できる個人ブースと意見共有スペースを備える予定。

現在、他大学の准教授からZoom等で学んでいるトレーナーに関する基礎講座は、本学のスポーツ科学部とのやり取りに切り替える計画。高大連携を進め、単位互換授業にしたい考えだ。

国際バカロレアについて語る添谷校長

国際バカロレアについて語る添谷校長

高校も含めた長野日本大学学園は、国際バカロレアという世界水準の教育プログラムを推進している。ここで求められる学習者像の最初に「探究する人」が挙げられている。

添谷芳久校長は「よりよい社会のために率先して行動する『ミライチェンジリーダー』の育成を目指していますが、探究する人がまさしく当てはまります」と語る。

「長野日大で好きを突き詰めた人が日本大学に進学し、自発的に研究室のドアをノックして活躍してくれることを切に願っています」