「ことづくり」をつかさどる新たな知の拠点へ
本学理工学部は、その前身である日本大学高等工学校が設立されてから100年の節目を迎えた。多くの逸材を輩出し、わが国の産業の発展に多大な貢献をしてきたが、次の100年に向け教育研究のさらなる飛躍が求められている。その新たな役割を担う拠点として建設されたのが「タワー・スコラ(La SCHOLA)」だ。長い歴史と実績を誇る理工学部ならではの技術・ノウハウを結集した新校舎にスポットを当てる。
理工学部は100年にわたる歩みの中で時代の要請に応える形で発展を続け、現在では14学科という幅広い分野を網羅する教育研究機関となった。世に送り出してきた卒業生は累計約23万5000人に及ぶ。
創設以来、わが国の「ものづくり」を支える実務者の育成に力点を置いてきたが、AIなどの技術革新が暮らしや社会の在り方を根本から変える時代を迎え、「もの」のみならず「こと」の創造へと、さらなる飛躍が要請されることとなった。
タワー・スコラはこの新たなミッションに挑むための拠点として建設が進められ、2018(平成30)年7月に、駿河台の地に竣工した。
タワー・スコラ(La SCHOLA)
個別指導、自習など多目的に利用される学生スペース(3階)
最新の教育研究設備を擁する地上18階、地下3階の高層建築で、地下階に各学科の授業や研究に対応する実験室群、低層階に講義・教室群、中・高層階には研究室・院生室・演習室、そして屋上には音響実験室や環境緑化エリアが設けられるなど、理工系学部に必要な設備・機能が集約されている。スペースの確保が困難な都心で、教育研究から実験まで一つの建物で賄える理工系の大学施設は他に類を見ない。
タワー・スコラの建設に際しては、設計から施工に至る各工程に多くの卒業生がさまざまな形で関わった。まさに理工学部出身者の層の厚さ、社会への貢献度の高さを象徴している。
カフェ(1階)。窓側に本学独自の制振トグルダンパー。壁面には旧5号館ピロティの壁画レリーフ を再現
教室(1階)。収容人数はタワー・スコラ内で最大
隣接する公開空地に設置された「CST SPHERE」。東京2020オリンピック・パラリンピックのエンブレム作者、野老朝雄氏によるデザイン。多様な学科がしっかりと組み合わさった力強さを感じさせる30面の球体で、幾何学的でありながら有機的な「桜」の形が浮かび上がる
野老朝雄氏によるアートワークは1階ロビーの壁面にも
最新鋭の建築として注目すべき点は、高機能の免震・制震構造を取り入れた複合型対地震構造建物になっていることだ。本学独自の地震エネルギーを吸収する装置の設置等、工夫が凝らされ、耐震構造建築の第一人者であった佐野利器・初代学部長以来の伝統を堅持してきた成果であるとも言えるだろう。
タワー・スコラは、次世代を見据えた駿河台キャンパス整備の第1フェーズに位置付けられている。隣接する敷地に新棟の建設も検討されており、今後はニコライ堂をはじめ周辺環境との共生を図りながら、地域社会にも開かれた「知の拠点」として、さらなる進化を遂げることが期待される。
[写真:右、左上] 土木構造実験室(地下2階)。カタチが自在なトラス橋をつくる。災害時などにベッドにも転用できる簡易ベンチの製作も
[写真:左下] 免震ピット(地下1階)。学びのため見学コースにもなっている
[写真:右上] 土木水理実験室(地下2階)。水の流れを知るための学問である水理学の研究を行う
[写真:右下] コンピューター演習室(5階)。膨大な数のディスプレーが並ぶ様子は壮観
[写真:左] 土質実験室(地下2階)。土砂災害など斜面が崩れる際の実態に即した土の強度を調べる実験が行われている
建築学科スタジオ(7階)。設計の授業等のほか、展示や講評会、審査会でのプレゼンテーションスペースとして使用される。ニコライ堂も望めるオープンな環境で創造力が育まれ、学びも深まる
[写真:右] 学科内の一体感を共有できる中間層の吹き抜け
[写真:左上] 屋上環境緑化。太陽光パネルも設置
[写真:左下] 音響実験室(屋上)。音が反射しない構造で、コンサートホール、マンションの隣の部屋への音の伝わり方など、学科を問わずさまざまな研究に使われる
17階からの眺望