学生の理解向上を目指して
-教員の教え方公開-

理工学部・機械工学科 飯島 晃良 准教授
「内燃機関」

学び・教育
2022年10月26日

近年、授業の在り方が問われている。現場では、各教員が自身の科目に合った教育方法を創意工夫し、学生の理解向上を目指して日々努めている。それぞれの科目ではどのように学生と向き合い授業を進めているのか。その手法と実践にフォーカスする「教員の教えるテクニック公開」。
今回は、理工学部・機械工学科の飯島晃良准教授の授業を紹介する。

進化中の技術だからこそ
教科書にない話題にも触れ基礎理論でかみ砕く

飯島 晃良 准教授

理工学部機械工学科 飯島 晃良准教授

機械工学科3年次の選択科目「内燃機関」は、例年100人近くが受講する。内燃機関とは自動車や建設機械、発電機などのエンジンのこと。世界中で使われ進化し続ける機械の仕組みを、基礎学問に落とし込んで教える科目だ。

学生に興味を持ってもらうために飯島晃良准教授が心掛けているのは、教科書にない内容も取り上げることだ。例えば新しく開発されたエンジンについて、その設計の意図を解説する。あるいはもっと生活に密着した話題、「カタログ燃費」は実現できるか、ハイオク車にレギュラーガソリンを入れたらどうなるか、といった話も交える。
 

書くことで発見が

燃焼の様子を表したスライド

燃焼の様子を表したスライド

社会問題、例えばカーボンニュートラルの話題も取り上げ、EV(電気自動車)に置き換わることが唯一の解ではないこと、ガソリンエンジンも水素や再生可能エネルギーから作った燃料によるカーボンニュートラルを目指しており、すみ分けがされていくであろうこと、エンジンも含む他のさまざまな技術革新があってこそ実現可能なことを説明する。
「将来エンジンはなくなるのでは、と思っている学生もいるので、科学的、技術的に考えて実際はどうなるか一緒に考えるようにしています」

もう一つ大切にしているのが、法則や数式展開の板書である。それを学生が一緒にノートに書くことで、なぜそうなるのかを段階を追って考えさせるのだ。

「基礎理論の定着には、書いて自分でかみしめることが一番大事だと思っています。書きながら、なぜそうなるかを発見していくように仕向けると、興味を持ってくれます」

その一方でスライドや動画を駆使し、エンジンの中で基礎理論どおりのことが実際に起こっているのを目で理解させる。機械工学科の学生は1年次でエンジンの分解組み立てを行い、実際にエンジンを回す実習も経験しているため、それまで学んだ授業がここでつながってくる。また、先輩の学生が製作したエンジンを見せ、4年次に行う研究内容にも触れさせる。

基礎理論の集大成

飯島准教授

学生は機械工学の4力学といわれる機械力学、材料力学、流体力学、熱力学を、3年次の前期までに徹底的に学ぶ。断片的に学んだそれらの基礎理論が実際に機械の中で働いていることを、内燃機関を通して確認する授業でもある。

「この授業は機械工学の基礎理論をどう使うのかというプラクティスです。それを将来自分の入った会社で携わる業務に生かしてもらう。そのために、内燃機関は格好の題材だと思っています」

機械工学科の学生の多くは社会に出てものづくりに関わるが、実際に自動車メーカーに行く学生ばかりではない。車でもエンジンではなく電気自動車や燃料電池に関わるかもしれない。それ以外のあらゆる機械、例えば工作機械、風車、電子機器、医療機器、遊具など、活躍の場は無限で、食品メーカーに入った卒業生もいる。それぞれの分野で、今までなかったものを生み出すための基礎を作ることを目指して、飯島准教授は講義をしている。

<プロフィール>
理工学部
飯島 晃良(いいじま・あきら)准教授

本学理工学部機械工学科卒。同大学院理工学研究科機械工学専攻博士前期課程修了。富士重工業(現・SUBARU)勤務を経て、2006年に理工学部副手。その後博士号を取得、2016年から准教授。