学生の理解向上を目指して
-教員の教え方公開-

芸術学部・美術学科 彫刻コース 鞍掛 純一教授

学び・教育
2022年09月07日

近年、授業の在り方が問われている。現場では、各教員が自身の科目に合った教育方法を創意工夫し、学生の理解向上を目指して日々努めている。それぞれの科目ではどのように学生と向き合い授業を進めているのか。その手法と実践にフォーカスする「教員の教えるテクニック公開」。
今回は、芸術学部・美術学科 彫刻コースの鞍掛純一教授の授業を紹介する。

価値観が等価な学生への伝え方と本質、美術と社会を教える授業

大学に設置された国内初の芸術総合学部として今年創設100周年を迎えた本学芸術学部。「8つのアート1つのハート」のキャッチフレーズを掲げ、写真・映画・美術・音楽・文芸・演劇・放送・デザイン8学科の特化と融合を体感できる教育を実践している。

今回紹介するのは唯一、木、石、鉄などの物質と向き合う美術学科彫刻コースの鞍掛純一教授。「最近の学生は価値観が等価」だと話す。彫刻の視座を通して個性、感性そして社会をどう伝えているのか。そのテクニックに迫る。

常に見ている

芸術学部・美術学科の鞍掛純一教授

芸術学部・美術学科 彫刻コース 鞍掛 純一教授

「時には横で私も制作します」。鞍掛教授の言葉は過保護とも聞こえるがそうではない。1、2年次は主に素材を体感する時間に当てられる。横に付いて逐一指導することもできるが、個性、感性をつぶさず、伸ばす部分を見極めるために、時には声を掛け、時には見守る“塩梅”を大事にする。「きっかけになる前提はつくってあげないと」。彫刻をする楽しさ、工夫、発見は教えるだけではなく、自ら見つけられるように指導している。

本質より楽しさ

制作する学生

時代の変化を感じている。鞍掛教授が学生だった頃は「本質」を常に求められた。「今はそこまで言うと、スタートラインに立てないことがある」という。そこで1、2年次の教育の根幹である「体感・経験」のように、まず行動してみることに主軸を置く。「本質を後回しにしてやってみる。何が必要で、どうやったら楽しくできるのかを導き出します」。サッカー少年は毎日サッカーボールを蹴る。では、彫刻を学びにきたのだから、やらない理由を考える前にまず手を動かせるような方向へ導く。その部分が一番重要と鞍掛教授は考えている。

「本質や感性は本人には分からないかもしれない。世の中にコミットしようと思えば自分を変えざるを得ない」。合わせると自分とやりたいこととの折り合いが難しくなる。「最近の学生は価値観が等価」と鞍掛教授。学生の傾向として、何か一つに突き抜けて興味があるわけではなく、複数の同じレベルの興味の中から今やりたいものを選ぶ。そのために「生きる力をストップさせてはいけない」と、まずは手を動かすことで楽しさ、気付きを得られるように授業を進めている。

モノづくりで生きる

鞍掛 純一教授

「学生自身が、自分の変化を客観視できるようになってくれるといい」。鞍掛教授は美術の力・技術で社会に対応できる人になってほしいと学生に向き合っている。
「授業の在り方として、芸術家よりまず自分のことをどうやって把握するか」。社会の中には、自己管理で期間内に決められたことを終えなければならないこともある。社会と共存していくために、「美術」という力、技術でどう対応していくかを教えたいと言う。

「その上で美術が好きか。ぜいたくな考えですが、社会と好きが両立できるなら最強かもしれない。どこかで一つ、私はこれという目標を見つけてほしい」と、時に学生に声を掛け、隣で鞍掛教授自身が制作して、背中で、その手で本質を伝えている。

<プロフィール>
芸術学部
鞍掛 純一(くらかけ・じゅんいち
)教授
本学芸術学部美術学科彫刻専攻卒。芸術学部芸術研究所修了。平成23年から本学芸術学部美術学科教授。練馬区立美術館にある美術の森緑地に植栽彫刻、ブロンズ彫刻、強化プラスティック(FRP)で9作品を制作。