日本大学は、あらゆる学問領域をカバーする16学部87学科を擁する総合大学。幅広い学びのフィールドが広がっており、意欲のある学生の期待に応えられる環境が整っている。1995年(平成7年)度から開始された『相互履修制度』は、学生が自分の所属する学部・学科以外の講義を受講することができる、日本大学のメリットを活かした教育制度。学生の興味や関心に合わせて学ぶことができ、将来のための教養や総合力を養うことができる。例えば、文理学部で化学を学ぶ学生が、生物資源科学部で食品と化学物質の関係について学ぶなど、自分の専門領域にかかわるフィールドを広げ、基礎知識を深めるとともに、応用力を養うことができる。
今回は、『相互履修制度』の担当部署である本部学務部学務課の川田和希主任に制度の概要について話を聞くとともに、実際に制度を利用している芸術学部の学生2名に、受講した講義のことや、その経験が自分の学び分野にどのような影響を与えたのか話を聞いた。
本部学務部学務課主任 川田 和希
「『相互履修制度』は、学生が自分の所属する学部・学科以外の講義を受講、単位を修得することができる制度で、16学部87学科を擁する総合大学のメリットを活かした教育制度です。
各学部の受講受入科目の総数は2019年(令和元年)度までは例年2,500科目以上ありました。コロナ禍により受講受入科目数の減少はありましたが、時間や場所に縛られないオンライン方式の講義が増えました。学生からも他学部の授業を受けたいという要望があることから、ウィズ・コロナにおいても、オンライン方式をうまく活用した相互履修の在り方を考えていければと思います。
履修単位の上限はありますが、卒業単位に振り替えることもできます。また、他学部の講義を受講しても別途学費を負担する必要はありません。
講義の内容については、自分の所属学部の教務課窓口や、相互履修先のホームページでシラバスを閲覧し詳しい内容を確認することができます。
『相互履修制度』を利用するためには、まず履修したい科目を自分が所属する学部の教務課に申請します。そして教務課が他学部の教務課と連携して手続きを進める、という流れになっています。
学生は幅広い教養や総合力を養う機会として活用し、また他学部の教員や学生との交流を通して、さまざまな気づきを得ることで自分の専門領域にかかわるフィールドを広げています。」
芸術学部演劇学科3年(2023年2月取材時)
「5歳の頃から日舞をやっていて師範の資格も持っていますが、受験生の時は最初芸術系の大学に進学するつもりはありませんでした。実家が自営業ということもあり、将来その役に立てる知識や経験を得るために、商学部や経済学部などのビジネスの仕組みが学べる学部への進学を考えていたのですが、色々検討した結果、最終的には日本大学芸術学部に進学しました。
『相互履修制度』のことは、入学後に配布されたパンフレットで知ったのですが、詳細が知りたくて教務課にいろいろ質問しに行きましたね。日舞以外のことを学ぶなら、特に進学先の候補でもあった商学部の授業を受けたいと思い、この制度を利用しました。
商学部は世田谷区の砧にあるので、実際にキャンパスまで行くとなるとちょっと大変ですが、履修したい講義がコロナ対策のためにオンデマンド科目になっていたこともあり、2年生、3年生の時に『ビジネス法務入門』や『会計学』、『消費者行動論』『経営心理学』など計6科目ほど履修しました。芸術学部には企画制作など実習の授業も多いためどうしても時間に制約があるのですが、商学部の科目は時間・場所に縛られないオンデマンド方式だったため、受講しやすく助かりました。
履修した授業は、どれもとても楽しく気づきも多く、受講してよかったと思っています。」
「2年生の時は、商学部の基礎的な授業で受講できるものは全て履修しました。3年生の時は商学部の『消費者行動論』と『経営心理学』を履修したのですが、『消費者行動論』の先生がたまたま舞踊系の舞台芸術に携わっていた方だったので、その視点からの『消費者行動論』は非常に有意義な授業でした。お客様に劇場に足を運んでもらって、そこで行われている芸術を観て、それが支払った料金に見合っているか、またリピートしてくれるかなどについて学びました。舞台のこと、特に舞台芸術の演者側・制作側のことを中心に学んでいた私にとって、舞台を始める前、どのように劇場に足を運んでもらうかなどの視点が足りなかったので、『消費者行動論』を学ぶことで視点や知識が補填できてとても勉強になりました。
先日、実際に芸術学部の人たちと舞台を自主興行したのですが、商学部で得た知識や経験は、とても役立ちました。」
「芸術学部の学生で、相互履修制度を利用している学生はそれほど多くありませんが、私が商学部の授業を履修していることを話すと、周りの友人から「そんなことできるの?」「単位は取れるの?」と質問攻めに合いますし、「知っていたら履修したかった!」という声もたくさん聞くので、ぜひこの制度をもっと知ってもらって、どんどん活用してほしいと思います。」
芸術学部放送学科3年(2023年2月取材時)
「日本大学の付属校から進学したのですが、2年生のときに商学部に進学した高校の友人から『相互履修制度』で法学部の講義を履修するという話を聞き、当初は法学部の講義を履修すれば友人にも会えるな、という軽い気持ちから制度に興味を持ちました。
私は芸術学部放送学科のテレビ制作を専攻していて、将来はメディア関係に進みたいと考えていたので、受講するなら自分の学び分野に役立つ授業がいいと思いました。元々進学先として、芸術学部の他に法学部の新聞学科を挙げていたこともあり、法学部の『新聞学特論』と『メディア産業』という講義を制度を利用し履修しました。
『新聞学特論』は土曜の2限だったこともあり、10人に満たない少人数での講義でしたが、その分、先生、学生とも密に関われて、ディスカッションの時間も多く、とても面白く有意義な時間でした。
自分は放送学科なので、作り手側としての意見ばかりを考えてしまいがちでしたが、先生が長く放送業界で仕事をされていた実務経験者で、またオーディエンスリサーチなどメディア分野の研究員もされている方だったので、この授業を履修することで制作者・視聴者の両方から分析ができるようになりました。これは大きな収穫でした。」
「自分で調べて受講した講義だからこそ、興味を持って楽しく学ぶことができ、身についたことも多くありました。幅広い知識を得ることで、自分の専門領域を深く探究するだけではない多角的な考え方を修得することができましたし、自分の意見を発言することの大切さも知りました。
自分の所属学部の先生ももちろん親身になって相談にのってくれますが、視点が違う他学部の先生の意見を聞くことで、より広い視野で物事を捉えられるようになったと思います。『相互履修制度』を活用してよかったです。」
「学部や学科によっては、必修科目が多くて『相互履修制度』を活用するのが難しい場合もあると思いますが、進学前から知っていて損のない制度だと思います。
『相互履修制度』を使って受講した講義は、後輩にも薦めています。学科で学んでいる内容にリンクする、役立つ授業があると思うので、ぜひ活用して欲しいと思います。」