日本大学では1906年(明治39年)に最初の留学生を、3年間ドイツに派遣して以来、心身ともに健全な文化人の育成を使命として、多くの学生を海外へ送り出してきた。
各学部には留学・国際交流に関する窓口が設けられ、アメリカ、イギリス、カナダ、中国、韓国など世界各国の大学等と交流を図り、そのネットワークを活用して交換留学、海外研修など国際交流の機会を学生に提供している。
今回は、国際交流の機会を望む学生の要望にワンストップで応えるため、2020年に新たな機関を設立した文理学部での取り組みを紹介する。
学生約8,000名が通う日本大学文理学部は、人文系・社会系・理学系の18学科からなる学際的な学部で、約200名の留学生が在籍している。グローバル化した21世紀を生き抜き、専門的知識を活かしながら社会をリードしていく「総合知」の育成を目指し、さまざまな留学制度・国際交流の機会提供や、多彩で細やかな外国語修学支援などを行っている。
ますます国際化・多様化する社会にふさわしい学部を目指して2020年に設立されたグローバル教育研究センター(GREC:Global Research and Education Center)は、従来の外国語教育センターを組織改編し外国語教育部門、日本語教育部門、留学生サポート部門、アカデミックライティング部門の4部門を統括する機関としてスタートを切った。今回は、学生の全般的な外国語学修にかかわる外国語教育部門の取り組みについて、GREC副センター長(外国語教育部門長)をつとめる小林和歌子准教授、GREC担当の鈴木俊崇教務課課長補佐に話を聞いた。
GREC副センター長(外国語教育部門長)をつとめる小林和歌子准教授
「専従職員を置き組織的にもパワーアップしたGRECは、学生からのさまざまな要望にワンストップで応える新たな拠点として誕生しました。このうち外国語教育部門では、学生の外国語学習を支援・サポートするため、学部教育とも密接に連携しながら積極的な活動を展開しています。コロナ禍でもオンラインをフル活用し、今ではキャンパスにいながら留学体験ができる環境に近づいてきたと思います。」
GREC担当の鈴木俊崇教務課課長補佐
「GRECでは、英語を中心に外国語に親しむための多彩なイベントを定期的に開催しています。たとえば「英会話サロン」では、お昼休みに集まってネイティブ教員との会話を楽しみます。毎回20名ほどが参加し、コロナ禍でもオンラインで開催していました。教員と1対1もしくは1対2で行うプライベートチャットもあります。また、留学生をチャットリーダーに学生同士が交流する英語の「Eラウンジ」・中国語の「Cラウンジ」・韓国語の「Kラウンジ」も、学生同士がつながるきっかけとして好評です。」
10月に開催された「Eラウンジ」には、ハワイ、フィジー、中国、シンガポールやスイスなどから来た留学生と日本人学生たちが昼休み時間に集まった。留学生が進行役をつとめ、自己紹介後に好きな食べ物、趣味などのテーマに沿って英語でコミュニケーションを楽しんだ。このラウンジに参加する理由について、日本人の学生からは「いろんな国や地域の友達ができる」「ネイティブの留学生との会話が英語の習得に役立つ」「留学に関する情報も得られる」といった声が上がった。
〇文理学部英文学科4年
「日本人学生と留学生が7:3ぐらいの割合で、いつもテーマを決めて話し合っています。ラウンジで会った留学生には、次にキャンパス内で会ったときに話しかけやすいですね。日ごろからGRECに頻繁に顔を出す留学生も少なくないので、交流したいと思ったら、ここに来るのが一番です」
〇大学院文学研究科ドイツ文学専攻1年
「ドイツ留学前に来たときは、先輩方の留学体験記がとても参考になり、よく職員のみなさんに相談しました。GRECは職員のみなさんがとてもフレンドリーで、気軽に立ち寄りやすいんですよ。特に目的や用事がなくても、休憩がてら、フロア内にある海外の雑誌や新聞、留学や語学に関する本などを眺めにくるだけでもいいと思います」
「もっと英語に没頭したいという学生に勧めたいのは、「英語多読の会」というプログラムです。GRECで貸し出せる多読用の本や、Web上のライブラリー「X-reading」等を活用し、その中から自分のレベルより少し易しい本を各自が読み込みます。その後、ネイティブの担当教員や他の参加学生に向けて内容を説明するなどして、学びを深めていきます。
また、今年から始まった「An Open Table of D&D」は、北米で人気の卓上ロールプレイングゲームを一緒に楽しむプログラムです。このゲームはハイレベルな英語力が必要になりますが、ネイティブの教員のサポートを受けつつ楽しみながら学ぶことができます。」
GRECで貸し出せる多読用の本の数々
「GRECでは、英語力の上達や留学を目指す学生のためにTOEIC、TOEFL、海外ボランティア、インターンシップなどの説明会も開催しています。文理学部では、長期休暇などに私費留学をする学生が、私たちが把握しているだけでも毎年20~30名います。それぞれ民間業者と学生が直接やり取りして臨みますが、GRECでも民間業者とタイアップして説明会を開催するなど、学生をサポートしています。
また、学部生や大学院生がつとめる「GRECアドバイザー」が学生からの個別の相談に対応しています。英語3名のほか中国語・ドイツ語・韓国語が各1名ずつ在籍し、留学だけでなく外国語の授業や学習方法など多方面の相談に乗ってくれます。」
「コロナ禍で実際の留学が難しくなったことから、オンラインを活用した海外との交流・プログラムを奨励してきました。
その一つが「MOOC(Massive Open Online Courses:大規模公開オンライン講座)クラブ」です。ハーバード大やMITなど海外の有名大学の講師陣による公開授業をオンラインで受けられるMOOCは、気軽な無料受講からレポート提出で修了証をもらえる有料の本格的なコースまであります。修了証は履歴書にも掲載できますし、世界中の学生とレポートを評価し合えるオンラインならではの国際交流も魅力です。MOOCクラブではMOOCを受講する学生に対し,教授陣が丁寧に学習サポートを行っています。
また、昨年度から文理学部の国際交流委員会等と協力して取り組んでいるのが、COIL(Collaborative Online International Learning:オンライン国際協働学習)です。これまで米国やマレーシアなどの大学と連携し、双方の学生が日本文化や環境問題などをテーマに発表や意見交換をするなど、グローバルな交流を行いました。将来的には単位認定も可能なシステム構築を検討したいと考えています。このほか、教員の人脈を活用して米国や英国の大学の学生達とリアルタイムでのZoom交流会も実施しています。
語学学習で使用するVRヘッドセット
さらに今年度は、VR(Virtual Reality)ヘッドセットを導入し、文理学部の教員らと連携しながら語学学習に活かす取組みも始めました。例えば海外の観光地を散策しながらリスニングやスピーキングの練習など、より実践的かつ先端的な外国語教育の展開が期待されています。」
ぜひ、GRECに立ち寄ってみてください!
「これまで実際にGRECを存分に利用し、外国語初心者からすっかり上級者になった学生たちを何人も見ています。もちろん語学力アップだけでなく、異文化に触れたい、国際交流してみたいという興味や好奇心でイベント等に参加する学生も少なくありません。
コロナ禍を経て徐々に留学再開が進む中、GRECアドバイザーの学生たちが自主的に留学の説明やTOEIC・TOEFLの学習方法をアドバイスしてくれています。GRECが提供する国際交流の場をきっかけに学生同士で自律的に活動を広げているのは、大学が掲げる「自主創造」の実践だと嬉しく思います。皆さんも、まずは臆せずGRECに立ち寄って欲しいと思います。フレンドリーで語学堪能な教職員やGRECアドバイザーが、いつでも笑顔でお待ちしています。」