【研究者紹介】
「持続可能な機械システムの実現

工学部 武藤 伸洋 教授

研究
2020年01月23日

ロボット・センサー技術、ネットワークを活用し、日本と世界の問題解決を目指す

武藤 伸洋 教授

工学部 武藤 伸洋 教授

早稲田大在籍時からロボット研究を続けている。

「私のいた研究室は昨年の朝の連続テレビ小説『半分、青い。』でモデルになりました。ヒロインの幼なじみが大学でロボットの研究室に入るのですが、ドラマ内でも紹介された『ピアノを弾くロボット』などの研究を行っていました」

その後はNTTに入社し、研究所で①センサーを利用したロボットシステム②ネットワークロボットシステム③センサー利用ヘルスケア支援システムなどの研究を行った。

①ではダイヘン社と溶接ロボットの共同開発と商用化を行い、視覚センサー付ロボットの実用化に成功。ロボット操作インターフェースを使い、ロボットシステムの設定・調整を人間が現場で簡単にサポートできるシステムを構築した。

②は総務省のプロジェクトで、異種ロボット連携プラットフォームの研究を行った。ショッピングモール、博物館、ホテルなどのロボットによる案内サービスがこの研究に該当している。

③は病院における患者の安全確保が目的で、患者転倒転落防止ベッドシステムの開発に携わった。

「入院したての患者は自分が歩けないという認識がなく、転倒してしまうことがよくあります。それを防ぐためにベッドの適切な位置にセンサーを設置し、立ち上がって歩くことができない患者がベッドから起きようとすると、自動的にナースコールが鳴るというシステムです。現在では試験的にこういったベッドを導入する病院も増えているようです」

人の負担を減少

NTT研究所を経て、本学に教授として招かれたのは3年前。現在は工学部機械工学科サステナブルシステムズデザイン研究室に籍を置く。

「サステナブルというのは『持続可能な』という意味で、工学部が掲げる『ロハス(LOHAS)工学』の『S』がサステナビリティーです。医療機器、製造機器、再生可能エネルギーシステムを対象にロボット・センサー技術、ネットワークを活用して、持続可能な機械システムの実現を目指しています。

簡単に言えば、設置、調整、運用、メンテナンスまでを人の負担を極力少なくするにはどうすればよいかを研究しています」

さまざまな社会問題に対応

研究テーマの進ちょく報告会

研究テーマの進ちょく報告会

医療機器の多様化・高度化により臨床工学技士の需要が増加しており、工学部でも機械工学科と電気電子工学科の学生を対象に臨床工学技士課程が設置されている。しかしある統計では実習生の半数以上が課題修了後に医療機器を再度操作できないとも回答しており、操作方法の早期習得が必要な状況だ。そこで両手首に9軸情報センサー、頭部に視線センサーを装着し、医療機器操作における習熟度と運動情報の関連性に関する研究を行っている。製造機器においては移動ロボットやマニピュレーターによる遠隔操作を実施。これによって人里離れた設備の点検や遠隔地からの作業が可能になり、社会インフラの老朽化や労働人口の減少に対応することができる。

再生可能エネルギーシステムについては地中熱利用エネルギーシステムのIoT化に関する研究を行っている。地中熱は昼夜間、季節間の温度変化の小さい地中の熱的特性を活用したエネルギーで、節電、省エネとCO2排出量が抑制でき、環境汚染の心配もなく、冷暖房利用時に熱を屋外に放出しないため、ヒートアイランド現象の緩和にも寄与するのだ。研究室ではデータを自動的にサーバーに蓄積するシステムを構築している。

「これらの研究は今を生きるわれわれにとって必要不可欠なものです。近年ではAI の進化が目覚ましいですが、いろいろなロボットが既に活躍していますし、今後はさらに私たちの生活に欠かせないものになるでしょう」

日本そして世界が抱える問題の対策の一つとして活躍することを期待し、武藤教授は日々の研究に取り組んでいる。

工学部
武藤 伸洋(むとう・しんよう)教授

昭和63年早稲田大理工学部機械工学科卒。平成2年同大大学院理工学研究科修士課程修了。
同年NTTに入社し、NTT研究所でロボットセンシング、作業支援システム等の研究。12年国立情報学研究所客員助教授。
15年NTT東日本にて多地点TV会議、ひかり電話関連開発。18年NTT研究所にてネットワークロボット、ヘルスケア支援を研究。同28年から本学工学部教授。東京都出身。53歳。