【研究者紹介】
「会計=ビジネス共通言語」を成り立たせる

経済学部 藤野 雅史 教授

研究
2021年11月10日

会計を難解と考える人が多い現状を変えるために。誰にでも分かりやすい会計情報の提供を目指し、現場の声を聞く。

経済学部 藤野雅史 教授

経済学部 藤野雅史 教授

会計はビジネスにおける共通言語と呼ばれている。インターネットの普及後は国際交流も活発になり、世界的なルールも作られた。

藤野雅史教授の専門は管理会計*だ。これは経営者、社員など、会社内のための会計で、会計専門家以外の人々が使うことを想定しなくてはならない。しかし会計を難解と考える人は多く、共通言語には程遠いのが実情だろう。

「誰もが使えなければ共通言語と呼べません。もちろん最低限の会計リテラシーが必要ですが、それは英語で言えば中学生が習う基礎レベル程度でいい。分かりやすい会計情報の提供は会計専門家の大切な役割で、私の研究テーマになります」

もう一つの研究テーマは業績測定で、目標値の設定などに活用される。端的に経営者やスタッフのモチベーションをげ、成果につなげる仕組みが業績測定だ。個人で業績が良くても、それをサポートする人を評価できる業績測定を考える必要があると藤野教授は訴えている。

*管理会計
自社の経営に生かすために作成する社内向けの会計のこと。外部報告用の財務会計と違い、社内でのみ使用するため、厳密なルールはないが、会計専門家ではなくとも理解できる「共通言語」であることが求められる。

フィールドワーク

金額の計算をするだけが会計専門家ではないと考える藤野教授の研究アプローチは、フィールドワークが中心だ。

数年前、山形県の郊外に住む高齢者の移動支援をすることになった。近年、高齢者の免許返納がよく話題に上るが、地方に住む高齢者にとっては死活問題になり得る。その地区は高齢者が増加傾向にあり、問題が表面化しているとはいえ、行政が動くレベルではなかった。そこで実情を知るために予算のない中でアンケートを実施するが、集計率2割以下という結果に終わった。

「この失敗を受け、介護施設の事業計画、町内会の年間計画にアンケート実施を記載し、さらに介護施設、町内会、地域のソーシャルワーカーの三者で共同文書を作成しました。これにより移動支援の認知度と信用度が上がり、2度目のアンケートでは9割近い回答を得ることができました。

管理会計の在り方

山形での活動は会計そのものの話ではない。しかし、コミュニティーの多様な関係者を巻き込んで計画や共同文書が使われるという一連の流れは、会計が共通言語になっていく動きと似ているという。だからこそ管理会計にもそれを使う人々の視点に立つために現場を見て、話をし、考える必要があるのだ。そのようにさまざまな人々の協力を得て、管理会計のあるべき姿を追求している。

経済学部
藤野 雅史(ふじの・まさふみ)教授

1997年慶応義塾大経済学部卒。2000年専修大大学院経営学研究科博士前期課程修了。03年一橋大大学院商学研究科博士後期課程修了。博士(商学)。04年から本学経済学部専任講師。07年准教授、17年教授。東京都出身。