【研究者紹介】
光に反応するバクテリアを利用してタンパク質を作る

生物資源科学部 髙野 英晃 准教授

研究
2021年12月22日

バクテリアの中には人間にとって有用なものも。光に反応するバクテリアの性質を利用し、タンパク質を生産するシステムづくり。

髙野英晃准教授は20年以上にわたって、バクテリア(細菌)*の研究に取り組んでいる。

「バクテリアって一般的には病気を起こすような悪いものというイメージがあると思うんです。しかし、私たちの生活社会に役に立つバクテリアもいます。例えば納豆菌とか乳酸菌などがそうです。そういう役に立つバクテリアを研究しています」

*バクテリア (細菌)
単細胞の微生物で、人の体内も含め地球上のあらゆる環境に存在する。食品加工や有機物の分解に利用されるものもあれば、病原体となるものもある。ウイルスとは異なり、自ら成長したり増えたりすることができる。

光で放線菌が作業開始

生物資源科学部 髙野 英晃 准教授

生物資源科学部 髙野 英晃 准教授

土の中に住む放線菌というバクテリアは、土があれば必ずいるごく身近な存在だが、抗生物質や産業用の酵素、医療用や食品添加用のタンパク質などを作ることができ、古くから広く利用されてきている。髙野准教授は放線菌が光に反応する性質を利用して、光を当てることでタンパク質を生産する作業を始め、光をオフにすると止まるというシステムづくりを目指している。

これまで放線菌からタンパク質を作るには、誘導剤という化学物質を添加することでスイッチを入れていた。

「その化学物質を作るためにコストがかかりますし、環境負荷も高いです。光を使う場合LEDライトなら繰り返しずっと使えて、非常にお手軽で環境にも優しいシステムになると思います」 

これまで長い間、どういう仕組みで光を受容しているのかという基礎研究をしてきて、いよいよ応用する技術の研究に着手した段階だという。

偶然の発見がきっかけ

髙野准教授は現在の茨城県つくば市の農家に生まれ、豊かな自然の中で育った。高校時代から生物に興味があり得意だったが、当時は私立大学で「生物」と名前がつく学科は非常に少なかった。

「日本大学の応用生物科学科という名前が非常に珍しくて、すごく魅力的に見えたんです。当時としてはかなり新しい学科で、私が8期生です」

妻は大学院まで一緒に研究に励んだ同期生だそうだ。

その大学院生時代に偶然発見したことが、現在の研究のきっかけになった。放線菌のプレートを実験台の上にたまたま放置しておいたところ、もともと薄茶色の放線菌が黄色になっていた。実験台の上に室内灯があり、もしかしたら光の影響ではないかと考えて実験してみた結果、光が当たると黄色い色素ができることが分かったのである。この研究で、若手研究者に贈られる「日本放線菌学会浜田賞」や、「日本農芸化学奨励賞」などを受賞している。

生物資源科学部
髙野 英晃(たかの・ひであき)准教授

1999年本学農獣医学部(現・生物資源科学部)応用生物科学科卒。2004年同大学院生物資源科学研究科博士後期課程修了。博士(生物資源科学)。04年本学生物資源科学部助手、16年から現職。日本放線菌学会理事。茨城県出身。