【研究者紹介】
経済実態に寄り添い、金融法の理論と実践を橋渡し

商学部 鬼頭 俊泰 教授

研究
2022年11月25日

日進月歩のファイナンスの世界に行動力で即応。ビットコインや改正された社債の法律問題に切り込む。

情報は足で稼いでいる。記者顔負けの行動力だ。「研究対象であるファイナンス関係の法律は日進月歩の世界。動きが速いので、本の情報はすぐ古くなってしまいます」

実務家、専門家へのヒアリング取材は事あるごとに実施、最先端の動きを肌で感じる。裁判所にも足しげく通い、調査報道さながら金融紛争の法廷記録を丹念に調べ上げる。

研究室での時間が限られる分、キャンプ用のコット(簡易ベッド、長椅子)と毛布を部屋の片隅に常置、深夜の仕事にもサバイバル態勢で臨む。

金融の法的規制

商学部 鬼頭 俊泰 教授

商学部 鬼頭 俊泰 教授

研究対象は社債、保険、デリバティブ(金融派生商品)、シンジケートローン(協調融資)、仮想通貨など金融の隅々に及ぶほか、「お家騒動」や「新型コロナウイルス感染症対策と法務」など企業のガバナンス対応も手掛ける。

メディアではビットコイン*取引で含み益1億円以上の人を「億り人」などとはやすが、「FX同様、投機的市場なので手を出さない方が賢明です」

ビットコインの法的位置付けにまだ明確な答えはないという。「通貨なのか、金融商品なのかで規制は変わります。ビットコインに限らず、新たな金融の動きには経済実態に寄り添い、後追いにならないよう理論と実践の橋渡しができればいいと思っています」

*ビットコイン
インターネット上で使用できる仮想通貨(暗号資産)。世界で最も時価総額が高い。法定通貨と交換でき、支払いや送金に使うことができる。単位はBTC。決済に金融機関を通さないため、手数料などが抑えられる利点がある。

鍛えられた八戸生活

学部4年生の時、銀行の内定を得ていたが、指導教授のアドバイスに従い研究者の道へ。

大学講師を務めた八戸の4年間は「知り合いも土地勘もなく、古い官舎で水道が止まれば自分たちで修理、スーパーまでは徒歩1時間の距離。極貧生活でたくましく鍛えられました」。フットワークの良さとサバイバル研究ライフは当時の賜物のようだ。

昨年10月、オンラインによる日本私法学会で、改正された社債法制に関する研究報告を行い、社債取り扱い企業の利益相反問題に切り込み手応えを得た。「社債に関しては改正で複雑な金融商品とすることが可能となりました。今後も研究を深めていきたいです」

準備が本番

「行き当たりばったりの人生ですが、運と縁には恵まれました」とする一方、「『準備が本番、本番が準備』を心掛けています。学生にも言っていますが、何事にもいかに準備して臨むかが重要です」。コットのお世話になる研究生活はまだしばらく続きそうだ。

商学部
鬼頭 俊泰(きとう・としやす)教授

2003年本学法学部卒。08年同大学院法学研究科博士後期課程満期退学。08年八戸大ビジネス学部(現・八戸学院大地域経営学部)専任講師。12年本学商学部助教。15年准教授。22年教授。日本私法学会運営懇談会委員。東京都出身。