どれだけ自分が化けれるのか、
自分自身が楽しみ

バレーボール部 渡邉 かや選手

スポーツ
2021年02月26日

本学・女子バレーボール部からVリーガーの誕生だ。中高と日本一のチームでプレーし、鳴り物入りで入学してから4年。最終学年となった今年度はキャプテンとしてチームを牽引し、全日本インカレでは準優勝した東海大に敗れベスト16に留まったものの、そのキャプテンシーとエースアタッカーとしての存在感を発揮した。そして満を持して、名門・下北沢成徳高で春高を連覇(2015。2016年)した同期の黒後愛(東レアローズ)や二つ下の石川真祐(同)が待つVリーグの舞台へ。胸躍る22歳。

国内初のプロバレーボールチームへ

渡邉が入団した「ヴィクトリーナ姫路」(以下、姫路)は、兵庫県姫路市を拠点とする国内最高峰のバレーボールリーグ、V1リーグに所属する女子バレーボールチームだ。

2016年3月に国内初の“プロバレーボールチーム”として日本協会に登録し、今年で設立5年目を迎えた。初代監督には、日本代表セッターとしてアテネ、北京、ロンドンとオリンピック3大会出場を果たし、ロンドン大会では1984年のロサンゼルス大会以来、28年ぶりに銅メダルを獲得した竹下佳江が就任して、大きな話題となった。さらに、地元出身の元女子日本代表監督の眞鍋政義もGMに就き、“元日本代表コンビ”がトップ2を占めたチームは、発足からわずか2年でV2リーグ(2部)優勝を飾り、一昨年の2019年にV1リーグに昇格を果たした。

昇格を機に、コート内の監督からフロントとして副社長へと昇進した竹下佳江からバトンを受けた、コーチの中谷宏大が監督に就任。V1リーグ初年となった2019年は全12チーム中6位と健闘したものの、国内トップリーグは甘くなく、全21試合中、勝ち星は3。2年目となる今シーズンも、これまで21試合で4勝とV1の壁に苦戦している。

そんな中、チームに加入した渡邉は、同期入団の金田莉実(東海大)と2人併せて、チームで“10人”目のアウトサイドヒッター(前衛でレフト、ライトの両サイドからアタックを打つ選手のこと)となる。

「チーム内には私と同じくらいの身長の先輩方がいらっしゃるので、周囲の選手から盗めるところはどんどん盗んでいきたいです。」

チームに合流して間もないタイミングで、急遽、チーム内でのエキシビジョンマッチに試合途中からコートに立った。昨年の全日本インカレ以来の実戦にも、「練習不足でしたが、良い意味での緊張感でプレーできた。」と笑顔を見せた。

周囲から評価される“意識の高さ”

渡邉選手は、大学3年時の2019年春季リーグ戦でベストスコアラー賞とレシーブ賞を獲得。

3年時の2019年春季リーグ戦ではベストスコアラー賞とレシーブ賞を獲得。

渡邉が姫路を選んだ理由も、正にそのレベルの高さを実感したからだ。

「初めて姫路へ練習に来たときに、関東リーグで顔を合わせていた先輩方が大学で対戦したときよりも、圧倒的なパワーを身につけ、キレも増していたことに驚きました。姫路は練習だけでなく、トレーニングにも力を入れていると聞いて、私もここで力をつけて成長したい、そう強く思いました。」

姫路の特徴は、全員がプロ契約の選手であることと、もう一つ。そのほとんどが大学を卒業した選手で構成されていることだ。

中谷監督は、渡邉をこう評する。

「彼女が大学に入学したときから、ずっと見てきたんですけど、高校ではなかなか出番のないところから、同級生に負けたくない、と思って意識高く取り組んでいるところを見ていて、その後も着実に大学界のエースとなっていったところを、こちらは一番評価して、プロチームであるウチ向きだなって思って、来て欲しなって思って誘いました。」

渡邉の周囲から聞こえてくるのは、この“意識の高さ”という表現だ。謙虚な渡邉自身も、この話になると熱がこもる。
 

「大学1年生の最後でケガをしてから、大きく意識が変わりました。それまでは、オフになると友達と遊びに行ったりしていたんですが、ケガをしてからは“バレーボールが中心の生活”になりました。自分の身体のケアもそうですし、YouTube動画でいろいろな選手のプレーを観て勉強してます。」

少しでも盗んで上達したい。小学校3年生から始めたバレーボールに、今もご執心のようだ。

「はい、バレーが好きです。深いじゃないですか、バレーって。極めたら、とことん極められるスポーツ。それがバレーボールだと思うので、これからもブレずに頑張りたいです。」

その真摯な思いが、周囲にも伝わり、プロの世界への扉を開いた。

国内初のプロバレーボールチームへ

姫路への入団が決まった後、下北沢成徳高時代のチームメイトだった黒後(東レアローズ)から連絡をもらった。

「愛(黒後)から連絡をもらって。やっぱり嬉しいですね。でも対戦して狙うのは何かちょっと心苦しいなって思ってたら、愛は『試合になったらもう自分が勝つ気でいるよ』って。ああやっぱりそういうもんだなって思って」

また同じ舞台に立てることの充実感と、まだ見ぬ世界への戸惑いも、新人らしいエネルギッシュな言葉が先を付く。

質問一つ一つに丁寧に答える姿勢が印象的な渡邉選手

質問一つ一つに丁寧に答える姿勢が印象的な渡邉

「自分自身、この先どうなっていくのか、どう身体が変わっていくのか、など全然、まだ分からない。チームのトレーニングや監督・コーチの指導、色々と吸収して、どれだけ自分が化けられるのか、自分自身が楽しみです。自分の身体の変化にはすぐに気づける方なので、キレだったり、どれだけパワーがつくのか、どれだけ機敏に動けるようになるのか、自分の頑張り次第ですが、そこは本当に楽しみです。」

昨年、コロナ期間中に練習ができなくなった。しかし、その分、普段の練習では取り組めなかった体幹トレーニングを集中的に行えて、これまで自分が動かせなかった部分を動かせるようになった。それは、フィジカルだけでなく、メンタルでも好作用を及ぼした。

「いくらパワーをつけても、いくら上手な選手でも、ここ一番で決められないと、やっぱり厳しいと思うんです。それが、この間のトレーニングを通じて、少し変わってきたのかなと思います。」

アタッカーとしての渡邉の魅力は、レフトオープンから、高いトスを打ち込む、いわゆるハイセットを強打できることだ。自身もこだわりは強い。

「下北沢成徳高で学んだ、高いトスをしっかりとパワーで打ち込む、というところは、今後も自分の持ち味にしてやっていきたい。加えて、これからの課題は、低いトス、速いトスも打てる器用な選手になっていきたい。」

夢は広がる。

夢と言えば、保育園で初めて日本代表の試合をテレビで観た。その時、セッターだった竹下佳江が育むチームに、今、自分が入団した。

自分より早くVリーグに入った同期や後輩たちから、少し遅れて合流した渡邉にとって、これからの世界は未知そのもの。そんな彼女を支えているのは、何だろうか。

「私は日大に進学して、高校とはまた違った環境下で、本当に色んな経験をさせて頂いた。考え方の異なる選手たちを、キャプテンとしてまとめることが、とても勉強になった。これから、この経験を生かして頑張るだけ。」

小学校3年生から始めたバレーボールを続けて12年。

バレーボーラー・渡邉かやの本領発揮は、これからかも知れない。

<プロフィール>
バレーボール部

渡邉かや(わたなべ・かや)選手

スポーツ科学部スポーツ科学科4年。1998年6月9日、東京都世田谷区生まれ。
小学校3年生で競技をはじめてから、ポジションは一貫してアタッカー。世田谷区立北沢中学に入学し、全国レベルの環境下でバレーボールの指導を受け、2年生ながら2012年に全中で全国優勝を経験。下北沢成徳高校でも、3年生時の2016年に春高で全国制覇を経て、2017年、本学入学。その年、入替戦で勝利し、女子バレーボール部初の1部へ。4年生となった2020年にキャプテンに指名され、チームを全日本インカレ・ベスト16にまで押し上げた。