世界中を熱狂させたWBC。スポーツ観戦に潜むリスクって?

先月開催された、第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。1次ラウンド4会場の総観客動員はなんと、新記録の101万人!テレビやスマホからも試合は観戦できるけど、やっぱりプロの迫力を感じながら応援する臨場感は格別のものですよね。

でも、本当は球場で応援したいけど、受験勉強や感染リスクもあるし……と、中継観戦を選択する人も多かったのではないでしょうか。WBCでも3月13日から「マスクは個人の判断」となり、実際マスクをせずに声出し観戦を楽しむ人の姿も見られました。でも、スポーツ観戦に潜むリスクは、新型コロナウイルスだけではないんです。

臨場感と危機管理のせめぎ合い〜ファウルボール訴訟〜

2010年札幌ドームで行われた野球の試合中。子どもの野球観戦に同伴していた保護者にファウルボールが直撃し、失明に至るという大惨事が起きてしまいました。被害者は、札幌市や日本ハムファイターズに対し、裁判で争うこととなりました(平成27年3月26日(平成24年(ワ)第1570号))。この事故では、スポーツ観戦に伴うリスクと臨場感が争点となりました。それぞれの言い分はこうです。

球団 「野球観戦に臨場感はつきもの。必要以上の安全措置は臨場感が失われてしまう!」
地裁 「野球に詳しい人はファウルボールの危険性がわかるけど、被害者は野球に詳しくなかった。そのため、今回は安全措置が適切だったとは言えない!」
高裁 「普通の野球ファン相手としては十分な安全措置があった。ただ、野球観戦の最中の事故だから、責任は取るべき」

結果として、地裁・高裁ともに被害者の請求を一部認める形ですが、高裁の判断は「スポーツ観戦にある程度のリスクはつきもの」という姿勢を示した、非常に新鮮なものとして、この裁判は有名になりました。

リスクの理解はコントロールの第一歩

この他にも、折れたバットが観客席に飛び込むケースや、サッカーのサポーターがグラウンドに乱入して100名を超える死者を出してしまう大事故なども世界では例があります。

本来楽しいはずのスポーツ観戦でこのような事故に巻き込まれてしまうのは誰だって嫌ですよね。でも、だからと言ってリスクを回避するあまり、いろんな物事を避けてしまうのもかえって不健全かもしれません。大切なことは、リスクを理解し、それを回避する方法や、あるいはどうしても避けられないものには、対処・対応する方法を身につける必要があります。