食事でパフォーマンスは変わる?

良い食事をとると競技パフォーマンスが向上するでしょうか?

単に食事を良くすることでは、達成できません。目標達成ためには、計画された練習や勉強を毎日しっかり成し遂げることしかありません。

しかし、コンディションを崩したら、その計画が予定通りにできなくなります。体調が悪いまま実施しても、集中力がなかったり、力が入りにくかったり・・・、体調の回復にも時間がかかるでしょう。また、毎日の疲れがたまったままでは、やはり充実した練習ができません。運動をやっている人は、一般の人に比べて、毎日の厳しい練習から体調も崩しやすく、よりコンディショニングに注意を払う必要があります。そのために大切な役割を果たすのが食事です。

練習の量と質に見合った食事がとれていないということは、目的を達成するための土台すらできていないということです。

健康的な食事の基本は、まずは使った分のエネルギーが確保できることです。過不足の確認はからだに聞くしかありません。“体重測定”です。毎日の体重をモニタリング(値の変動を見ていくこと)し、からだ作りの時期なのに体重が減ってきていないか、体重の増減が激しくないか、夏の暑い時期に体重が減り続けていないか?などを確認していきましょう。単に数字でなく、体重増減の背景には何があるかを考えることが大切です。毎日の体重変動を記録し確認していくことで、自分の変動パターンがわかってきます。競技をやめたり、けがであまり動けない時期は、運動量は激減するのに、食事量が変わらず体重が増加することがよく見られます。消費に合わせた摂取がコンディショニングの第一歩です。

どのように食べる?

次に食事の内容にも目を向けましょう。それぞれの栄養素の働きを理解し、様々な栄養素をしっかりとることが必要です。

1.炭水化物(糖質)・脂質

エネルギー源。強度の高い練習やウエイトトレーニングでは主に糖質が、強度の低~中程度の練習では糖質と脂質の両方が燃え、エネルギーを作り出します。糖質は、いくらでも蓄えられる脂質と違い、体内で蓄えられる量が限られています。毎回の食事でしっかり回復させなくては、次の練習が十分にできなくなってしまうのです。また、糖質が不足しているとエネルギーを得るために筋肉などのたんぱく質が分解し使われることから、身体作りにも欠かせない栄養素です。

2.たんぱく質

身体作りに欠かせないたんぱく質やカルシウムや鉄などのミネラル。爪や骨や血液、もちろん筋肉も主にたんぱく質から作られます。アスリートの推奨量は、1日に体重1kgあたり1.2~2.0g。これは、3食食事をとっていれば、比較的とりやすい量です。骨を強化するカルシウム、酸素運搬に重要なヘモグロビン(血液成分)の材料である鉄などのミネラルも身体作りに欠かせません。骨の強化はジュニア期が最も重要です。また、成長期や筋力トレーニングが始まる高校生の時期では、筋量や血液量が増加するためヘモグロビンの材料である鉄が多く必要になります。

3.ビタミン

糖質や脂質などをエネルギーとして利用する時や、たんぱく質などが身体の成分となるのを助けます。コンディションを整えるメンテナンスにも欠かせない栄養素です。

必要な栄養素量をできるだけ揃えられるように基本的な食事のかたち(①主食②主菜③副菜④果物⑤乳製品を組み合わせた食事)を覚えましょう。

コンビニや外食は強い味方

コンビニ利用や外食の際も、このかたちを覚えておけば、何が足りないのか確認ができます。具だくさんのカレーライスや中華丼は、①主食②主菜③副菜がすべて揃った複合料理です。外食なら中華定食など野菜がおおいものがおすすめ。これなら難しく考えず簡単にできそうですね。不足しているものは次の食事で調整しましょう。

たくさんエネルギーを消費するアスリートは、3食だけではエネルギーや栄養素がとりきれないことも。そのために補食を利用しましょう。練習前のおにぎりやバナナ(炭水化物補給)、練習後すぐ食事を食べられない時には、おにぎり&ゆで卵、肉まん&オレンジジュース(炭水化物&たんぱく質)補給がおすすめ!3食しっかり食べる、に加え、補食を利用したタイミングのよい栄養素摂取は、身体づくりにも効果的です。

コンビニに立ち寄ると買いたくなるチョコやクッキー、スナック菓子、ジュース、炭酸飲料・・・食べてはいけないのでしょうか?食べていけないものはありません。しかし、特徴を理解したうえで、頻度や量を考えることが必要です。コンビニや外食を利用し、必要なものをうまく組み合わせられる。自律したアスリートへ第一歩です。

食からアスリートを支える

このようなスポーツ栄養学は、近年急速に発展しています。日本大学スポーツ科学部では、「スポーツ栄養学の基礎」や「スポーツ栄養学演習」、「コーチングのための栄養学」といった科目でスポーツ栄養学について学ぶことができます。研究で得られた理論に基づき、自分の食生活の課題を考えていきます。そして、良好な食生活を実践し、継続することで自分の学びになります。アスリート生活を終えた後も、食生活は続きます。アスリートであるあなたも、アスリートを支えたいあなたも、まずはスポーツ栄養学を勉強してみませんか?