心不全に対するペースメーカ治療
「 心不全に対するペースメーカ治療 ~早期治療で心不全の進行をStop~ 」
健診センターおよび循環器内科で診療をしております、中井俊子です。いつも患者様をご紹介いただきありがとうございます。今回は心不全に対するペースメーカ治療についてご紹介したいと思います。
心不全は発症してしまうと、不可逆性、進行の一途をたどる怖い病気です。図1は、心不全の臨床経過を示していますが、心不全は増悪を繰り返すたび(矢印⇒)に、心機能は落ちてしまい、治療で一時元気になったように見えても、残念ながら心臓の機能は以前のレベルまでは回復しません。

このため、心不全の治療では、いかに早く治療を開始して心臓の機能をより良い状態で維持できるかが重要です。心不全が進行性の病気であることを考えれば、心不全にならないことが最も望ましいのですが、どんな病気も発症して初めて気づくということが多いと思います。もし心不全になってしまっても、気づいた時点で最善の治療を行い、生活習慣を整えていくことで心不全の進行を抑えることができます。当院では医師とともにリハビリテーションを担うスタッフや食生活について相談できるスタッフなど、チームで最善の治療をサポートする体制を整えて心不全管理にあたっています。
心不全に対する新薬が次々と登場し、それらを上手に組み合わせて使用することで予後の改善が期待できるようになりました。しかし、症例によっては、薬だけでは治せない心不全、伝導障害を伴う心不全があり、このような症例ではペースメーカ治療(心臓再同期療法:CRT)が必要になります。このCRTの適応は心電図(幅の広いQRS:QRS幅>120ms)で判断します。伝導障害があると、その遅れた部位が他の部位と同調して収縮できなくなるために心収縮の効率が悪くなり心不全をさらに悪化させてしまいます。伝導障害を治す薬はなく、このような症例ではペースメーカによる治療が必須となります。図2に自験例を示します。拡張型心筋症の症例ですが、薬物治療で心不全のコントロールが困難なためご紹介いただきました。伝導障害を有する心不全で、心エコーでも明らかに心室中隔・左室側壁の運動にずれ(同期不全)を認めていました。CRT導入によりQRSの短縮および心収縮の改善、そして心不全症状もNYHA III度からNYHA I度へと改善しました。心不全が重症化すると、伝導障害の合併が多くなるため、心不全治療の経過中も定期的に心電図を確認しCRT導入のタイミングを逃さないよう心がけています。心電図のQRS幅が少し広い、あるいは心不全症状が少し重くなってきたなど気になる心不全患者さんがいらした際には、ぜひご紹介ください。その時点ですぐにCRTの適応とはならなくても、近い将来CRTが必要となることを、丁寧に患者さんにお話しさせていただきます。
心不全は完治させることができない進行性の病気です。早期発見、早期治療ができるよう病診連携を通じて一人でも多くの患者さんを元気にできるよう、心不全治療に取り組みたいと思っています。
