ダラツマブ投与患者の輸血検査における「偽陽性」へ の対応について
当院臨床検査部(輸血室)では、検体・生理検査を担い、認定技師を含む専属スタッフが 24 時間体 制で輸血検査や緊急の交差適合試験に対応しています。昨今、多発性骨髄腫治療薬「ダラツマブ (抗 CD38 モノクローナル抗体)」の普及に伴い、輸血前検査が全面陽性(偽陽性)となる事例が増 加しています。当院ではこのトラブルを回避する検査体制を整備いたしました。
【臨床事例と偽陽性のメカニズム】
先日、緊急入院された患者様の交差適合試験がすべて陽性となる事例が発生しました。不規則抗 体の特定が困難を極めましたが、過去のカルテ精査により他院での骨髄腫診断とダラツマブ投与 の事実が判明しました。ダラツマブは赤血球表面に微量に発現している CD38 にも結合します。そ のため、検査時に赤血球上の CD38 と血漿中の抗 CD38 薬剤が結合してしまい、不規則抗体スク リーニングや交差適合試験がすべて陽性(偽陽性)と判定されてしまいます。これが輸血製剤の確保 を遅らせる大きな要因となります。
【当院の対応体制とご紹介時のお願い】
この経験を踏まえ、当院ではダラツマブ投与患者様でも正確に輸血前検査が行えるよう、「DTT (ジチオスレイトール)処理」によるマスキング解除体制を構築いたしました。これにより、薬剤の影 響を排除した迅速な不規則抗体スクリーニングや交差適合試験が可能です。近隣の先生方におか れましては、ダラツマブ投与中の患者様を当院へご紹介いただく際、または緊急搬送される際には、 診療情報提供書等にその旨をご記載いただけますと幸いです。また、輸血検査でお困りの際やご不 明な点がございましたら、いつでも当院輸血室まで事前にご相談ください。緊急時も迅速に連携し、 安全な輸血医療をサポートいたします。