肥満症と睡眠時無呼吸症候群
■ トピックス:肥満症と睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対する新しい薬物療法の登場 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、高血圧、2型糖尿病、心不全、脳卒中といった心血管系・代 謝系疾患のリスクを著しく増加させることが知られています。また、「日中の過度の眠気」を引き起 こし、生活の質や作業効率の低下、自動車事故リスクの上昇にも直結する重大な疾患です。 OSAS 治療は早期治療の重要性が広く認知されたことで、令和 8 年 6 月より保険適応基準が緩 和され、従来の基準(AHI 20/h 以上)から「AHI 15/h 以上(簡易検査では REI 30/h 以上)」の 中等症から治療介入が可能となりました。しかし、標準治療である気道陽圧(PAP)療法は「継続で きない」「希望しない」という患者さんが少なくなく、また心血管イベントの抑制効果が十分に示さ れていないという課題もあり、新たな治療選択肢が渇望されていました。
このような背景の中、令和 8 年 5 月、週 1 回投与の GIP/GLP-1 受容体作動薬「チルゼパチド(販 売名:ゼップバウンド)」が、以下の条件で中等症以上の OSAS に対する適応を取得いたしました。
【対象となる効能又は効果】 中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(*)
ただし、BMI が 27 kg/m²以上に該当する場合に限る。
※ポリソムノグラフィー(PSG)検査で AHI 15 イベント/時間以上、または簡易施設外睡眠検査 (OCST)で REI 30 イベント/時間以上の中等症以上の OSAS 患者。
国際共同第3相試験(SURMOUNT-OSA 試験)において、チルゼパチドは 52 週間の投与により、 PAP 療法を併用しない群(Trial 1)で AHI を平均−27.4 回/時(プラセボ群との差:−22.5 回/ 時)、PAP 療法併用群(Trial 2)で平均−30.4 回/時(プラセボ群との差:−24.4 回/時)と、いず れも劇的に減少させました。本剤による確実な体重減少が睡眠時の呼吸障害を改善し、血圧や炎症 マーカーといった心血管合併症の危険因子を、臨床的に意義のあるレベルまで低下させることが 実証されています (N Engl J Med 391(13):1193-1205, 2024)。
■ 当センターの診療・検査・治療体制
当院は、チルゼパチドの保険診療での処方に必要な「最適使用推進ガイドライン」の施設基準を満た した認定施設です。糖尿病・肥満症治療センターでは、単なる薬物処方にとどまらず、多職種が連携 した専門的な集学的医療を提供しています。
・ 多職種チームによるサポート: 医師・看護師・管理栄養士・理学療法士・薬剤師が密に連携し、 患者さん一人ひとりのライフスタイルに合わせた食事・運動指導やモチベーション維持を総 合的にサポートします。
・ 外来でのスムーズな睡眠評価: ご紹介いただいた患者さんに対し、まずは外来で簡易モニ ターを用いた睡眠検査(OCST)を行います。REI<30 の場合など、必要に応じて詳細なポ リソムノグラフィー(PSG)検査を追加し、睡眠時呼吸障害の正確な評価を行います。
<簡易検査(OCST)> *ご自宅で行う検査
<PSG 検査>*一泊入院検査
・ 多様な選択肢から最適な治療へ: 患者さんの重症度やニーズに応じ、専門歯科と連携した 口腔内装置(マウスピース)の作成、PAP 療法、そして最新のチルゼパチドによる薬物療法か ら減量・代謝改善手術まで、最適な治療へと繋げてまいります。
■ 地域の先生方へのメッセージ & ご紹介のポイント
ご家族から「激しいいびき」や「無呼吸」を指摘されている方、あるいは日常的に「日中の強い眠気」 があり、BMI が 27 kg/m²以上の肥満がある患者さんがいらっしゃいましたら、ぜひ当センターへ ご紹介ください。すでに高血圧や2型糖尿病などの合併症をお持ちの場合は、OSAS の治療を並 行することで、基礎疾患のコントロール良好化や心血管リスクの軽減が期待できます。
ご紹介の時点で特別な睡眠検査が施行されていなくても、当センターにて初診時の身体所見評価 から検査・診断まで一貫して対応いたします。
診療結果や今後の方針はご紹介元の先生方へ速やかに共有し、まずは密接な共同管理(連携診療) を継続させていただきます。専門治療によって病状が安定した段階で、速やかにご紹介元へ逆紹介 とさせていただきますので、どうぞ安心してお気軽にご相談ください。