新型宇宙ステーション補給機で
「てんこう2」実験へ

理工学部 奥山研究室

学び・教育
2021年09月29日

日本と米国、ロシア、カナダ、欧州宇宙機関が協力して運用する国際宇宙ステーション(ISS)。ここを舞台にした野口聡一さんや星出彰彦さんら宇宙飛行士の活動に胸を躍らせたことがある人は多いだろう。ISSに物資を届けることを使命とする無人の補給機が「こうのとり」(HTV)で、2009年に1号機が打ち上げられた。20年の9号機で運用は終了、現在はHTVの後継となる新型の補給機「HTV-X」の開発が進められている。

HTV-X1号機は22年度に打ち上げられる予定で、この初号機において宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実施する超小型衛星放出技術実証ミッションに関し、このほど日本大学理工学部航空宇宙工学科と、宇宙産業の総合サービスを手掛けるSpace BDが業務提携した。

てんこう2の外観図

てんこう2の外観図

ミッションの主役となる超小型衛星は奥山圭一教授の研究室がSpace BDの協力を受けて開発中の「てんこう2」。HTV-Xに搭載し、ISSより上の高度から放出させる計画だ。衛星の軌道寿命を数年程度延ばすことができ、さらに精密な実験ができるという。

てんこう2は30センチ×20センチ×10センチのサイズ。最新の高解像度カメラや通信機、マイクロコンピューターなどを備えており、地球観測や宇宙線の検出のほか、炭素繊維強化熱可塑性樹脂材の劣化具合などを調べる。

HTVは世界最大級の補給能力(約6トン)が自慢で、宇宙での実験に必要な大型の装置も一度に複数を搭載できた。ISSの実験棟「きぼう」で宇宙飛行士が行った実験も、HTVが裏でしっかりとサポートしていたわけだ。

HTVはロケットで種子島宇宙センターから打ち上げられ、ISSに接近して結合。補給物資を送り届け、不要になった機器や衣類などを積み込む。その後ISSから離れて大気圏に再突入して燃焼、役割を終える。随所に高い技術が使われているが、特にISSに接近する「ランデブ」という独自の飛行技術は国際的に評価が高いという。1号機から9号機まで、それぞれ与えられたミッションを着実にこなしてきた。

偉大な「こうのとり」の後継機HTV-XはISSへの物資の補給だけでなく、宇宙探査への活用なども視野に入れている。また、てんこう2は日大理工学部と芸術学部が連携して取り組むアート活動「N.U Cosmic Campus」でも重要な役割を演じる。

準備に携わる学生を指導する奥山教授は「苦心の連続だろうがひとつひとつ乗り越え、打ち上げの際にはぜひ感動を味わってほしい」と話している。