生産プロセスを考慮し南会津町産木材を使用した消防庁舎 林野庁長官賞を受賞

工学部建築学科 髙橋岳志助教

研究
2022年03月16日

工学部建築学科の髙橋岳志助教が、村上・AUM設計共同体(福島県建築設計協同組合)と協働しプロポーザルおよび基本設計業務を担当、森山修治教授が設備設計監修した「南会津地方広域市町村圏組合・新消防庁舎」がこのほど、令和3年度木材利用優良施設コンクール(主催:木材利用推進中央協議会)において林野庁長官賞を受賞した。同コンクールは、木材の利用推進等に寄与する優良な施設を表彰するもの。「受賞した他の施設には著名な設計者が手掛けたものもあり、それらと一緒に評価してもらえたことを大変光栄に思います」と髙橋助教は受賞の感想を語った。

「南会津地方広域市町村圏組合・新消防庁舎」は、全ての木材に建設地である福島県南会津町産を使用。CLT(直交集成板)やWOOD.ALC(外壁用木製集成材)、縦ログ(木材パネル)など多様な木質材料を、構造材が見えるように仕上げる「現し」で用いた特色ある建物となっている。地域材を最大限有効活用する供給体制を構築したことをはじめ、消防庁舎という特殊な用途において木質空間が安らぎと柔らかな質感を与え、職員の心身面に与える効果も期待される地域のシンボル的な施設となっていること、CLTと鉄骨造の組み合わせによる軽量化やコストダウンなどが高く評価された。髙橋助教が消防署の設計を手掛けるのは2回目。「消防署は長い時間を共にする隊員のチームワークが大切。視線が通りやすい、消防車が素早く出動できるなど、指令センター・消防本部・消防署が連携しやすい計画としました」(髙橋助教)。

今回の受賞は、髙橋助教が取り組む「地域材を用いた中大規模CLT建築物の地場産業的生産システムに関する研究」への評価にもつながる。CLT(Cross Laminated Timber)とは木の板を繊維方向が直行するように縦と横に交互に重ねて厚いパネルにしたもので、耐火性、耐震性、耐久性などに優れていることから近年、世界各国で普及し始めている新しい建材だ。従来の工法よりも多くの木材を使用するため「CLTの活用は地場産業振興に大きく貢献する可能性がある」と髙橋助教は期待を寄せる。

髙橋助教がCLTを採用したのは2016年、福島県郡山市の専門学校の校舎を設計したのが最初だ。この時は12m×3mという大判サイズのCLTを製作できる工場が近隣になかったため、福島県産の木材をわざわざ岡山の工場に運んで製作した。今回は、あらかじめ南会津の森林組合に木材の調達が可能なことを確認し、建設する際は木材の輸送距離を短縮するため、宮城県の工場で製作可能なCLTを使う計画にした。

現在、髙橋助教が注力するのはCLT生産体制の調査研究。これまで全国9カ所にあるCLT工場を巡り、各工場の製造方法や使用方法を調査してきた。「調査結果を研究や設計にフィードバックし、福島のために役立てていきたいです」と抱負を語った。

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