概要
臨床工学技士(Clinical Engineer:CE)は,1988年に規定された国家資格で,医学的な知識と工学的な知識を兼ね備えた医療機器の専門職であり,生命維持管理装置(人工呼吸器・人工心肺装置・血液浄化装置など)を中心に医療機器の操作や保守管理を行っています。さらに,臨床現場でのトラブル対応や他の職種への情報や技術の提供を目的とした院内勉強会の開催や医療機器安全管理委員会を設置し,院内で使用する医療機器の安全性と有効性の確保に貢献しています。
特徴
当施設には臨床工学技士12名が在籍しており(2023年5月現在),救命救急センター,手術室,血管造影室,人工透析室,医療機器中央管理室の各部署に配属し,業務に従事しています。私たちは臨床業務に加え,研究・教育にも力を注いでおり,最新の知識を習得するために,各種学会に所属し,専門資格や関連資格の取得にも努めています。さらに,学術集会への参加・発表も積極的に行っており,各部署で高い水準の知識と技術を提供できるよう図っています。
臨床工学技士の所属学会・取得資格(2023年度現在)
所属学会 |
取得資格 |
日本集中治療医学会 |
日本集中治療医学会 集中治療専門臨床工学技士 |
日本急性血液浄化学会 |
4学会合同体外循環技術認定士 |
日本人工臓器学会 |
3学会合同呼吸療法認定士 |
日本体外循環技術医学会 |
日本急性血液浄化学会認定指導者 |
日本アフェレシス学会 |
日本アフェレシス学会認定技士 |
日本透析医学会 |
日本臨床工学技士会 認定集中治療関連臨床工学技士 |
日本脳低温療法・体温管理学会 |
透析技術認定士 |
エンドトキシン血症救命治療研究会 |
水質管理責任者 |
他 |
第2種ME技術実力検定 |
主な業務
救命救急センター/ICU
多職種によるチーム医療の一員として,カンファレンスによる治療方針に基づき,生命維持管理装置を中心に重症患者管理をおこないます。専従,専門資格を取得したスタッフが専門性を発揮し,多職種と協働し,ECMOや血液浄化施行時には24時間体制で治療の質と安全性の向上を担保いたします。
- 機械式循環補助(ECMO・IMPELLA・IABP)
- 人工呼吸器(挿管・非挿管)
- 血液浄化療法(CBP・PMX・PE等)
- 体温維持療法関連機器
- 各種モニター機器
- Critical care関連機器管理
手術室・血管造影室
各種心臓大血管疾患に対する開心術における人工心肺操作を担当しております。質と安全性を高めるために,専門資格の取得や育成にも力を注いでいます。術前カンファレンスでは多職種が参加し,それぞれ専門知識を活かし安全に手術を受けていただけるよう努めております。
- 人工心肺装置
- 術中自己血回収装置
- 体外式ペースメーカー
- EPS・アブレーション
- 各種手術関連機器管理
人工透析室
慢性腎臓病患者さまの維持透析をはじめ,クローン病に対する白血球除去療法や各種免疫疾患に対するアフェレシス治療など様々な血液浄化療法を提供しております。当院では臨床工学技士はバスキュラーアクセス(シャントやグラフト,表在動脈)の穿刺,治療条件の評価,至適条件検討をおこない,血液浄化装置の日常点検から定期点検,透析液の水質管理にも力を注ぎ,治療の質・安全性を担保いたします。
- 血液浄化療法(HD・HF・on line-HDF等)
- 特殊血液浄化療法(GMA・DHP・PE・PA等)
- 至適透析量の算出・透析条件の検討
- 透析液水質管理
- 透析装置・逆浸透精製水製造装置管理
- バスキュラーアクセス管理
医療機器中央管理室
院内で稼働する約1000台の医療機器を管理しています。日常の点検から定期的な点検まで,点検計画に基づき実践しております。また稼働中のチェックラウンドをおこなっております。医療機器の保守管理は,患者様の安全を担保するために必要不可欠な業務です。医療法第25条,病院機能評価においてもAランクの評価をいただいております。
- 中央管理機器の保守管理
- 人工呼吸器病棟巡視
- 腹水濾過濃縮再静注法
- 院内勉強会・説明会等
その他 院外活動
各種学会活動の他,私たちは積極的に院外活動も行っています。特に救命救急センターや透析室で培った知識・技術・経験を活かし,災害医療に従事し,東京DMAT・日本DMATやJICA国際緊急援助医療チームなどに所属し,災害支援をおこなっております。また東京都区中央部災害時透析医療ネットワークや千代田区における災害拠点病院として千代田保健所主催の研修などに参加しています。これらの院外活動を通じて,私たちは臨床工学技士としての専門知識と技術を最大限に活かして社会貢献することにも力を注いでおります。災害時においても,臨床工学技士としての存在が患者さまの命と健康に直結する重要な役割を果たせるよう努めています。