ご挨拶
乳腺・内分泌外科責任者の谷眞弓です。
乳がんの治療を中心に診療を行っています。
外来は4階でレディースフロアの婦人科と同じ場所ですので女性の方には入りやすい環境です。
乳がんは内科がありませんので,検査・診断・治療・経過観察すべてに関わってきます。一貫しているので深い関わりができていると思います。
また,検査はすべて女性スタッフが行っており,マンモグラフィは「今までで一番痛くなかった。優しかった」と好評です。
なるべくお待たせしないようにと心がけているのですが,お待たせしてしまうことが多く申し訳なく思っています。初診の方には同日に検査を施行し,病変があれば針生検まで施行する迅速な診断をめざしています。
手術は最新機器(赤外線カメラ 自動排煙装置付きメス)を導入し安全で的確な手術を施行,なるべく創がめだたなく形状もそこなわれないように工夫しています。また,放射線科と共同して当院特有の,病変を同定するMRIマッピングを導入。病変を最小かつ最適な大きさで切除する試みがなされています。
化学療法の方は,化学療法室で看護師,薬剤師を含むチーム医療がなされており,脱毛が気になる方に「頭皮冷却法」を施行していただき好評を得ています。
乳がん手術は年間100例ほどでありますが,手術のみならず薬剤師,看護師を含めたチーム医療で患者さまの希望にそった治療,また個々の価値観による対応を志しております。
検診精査になった方,乳房に違和感のある方など気軽に来院してみてください。受診の際には,紹介状の持参をお願いしています。
当院の理念は“病院は病者のためにある”,すなわち“患者様を日常へ戻す治療”を実践することです。どうぞ日本大学病院乳腺・内分泌外科のご利用をよろしくお願い申し上げます。
乳腺・内分泌外科 科長 谷 眞弓
概要
Natural Happier life with Beauty
1人1人により自然で幸福な人生を送っていただくために
乳癌と診断されたら絶望的な気持ちになってしまうかもしれません,でも大丈夫です。
適切な治療を提案し,その中に大事なことを一緒に考えていきましょう。
診療
原則として予約優先,午前中(午前9時〜正午)の診療です。午後は手術,検査を施行いたします。
4人の乳腺外科医(乳腺専門医・認定医)が交代で毎日診療にあたっています。
隣接する健診センターの乳房触診と画像読影も当科で対応しております。
診療は予約優先でありますが,予約の時間通りに診療出来ないことも多く,ご迷惑をおかけしていますが,ご了承ください。
外来で行える検査
マンモグラフィー |
乳房専用のレントゲン検査です。乳房を圧迫板というプラスチック板と撮影台で押さえて,上下左右それぞれ2方向から撮影し,被爆量は少ないです。乳房内のしこりや早期乳癌に伴う小さい石灰化を発見することができます。 |
乳房エコー (乳房超音波検査) |
乳房にプローベ(探触子)をあてて,周波数の高い超音波を送り,乳房内部から返ってくる音波の変化をコンピューターで画像に変換し,その断面図を見るものです。乳房内の数mmの微細病変の診断や,しこりの血流をカラー信号として映し出せ,しこりの硬度も計測できます。若い人では,乳腺が発達しているためマンモグラフィーでは全体が白く写り(高濃度乳腺),しこりが隠れて見えないことがありますが,エコーでは見えることもあります。エコーは放射線被爆がないため,妊娠中の人でも可能です。 |
乳房MRI |
造影剤を使用して,乳腺撮影専用装置のマンモコイルを取り付け,腹臥位になって乳房を2つの穴に装着し,磁気に反応して乳房から出る信号を画像化したものです。乳癌の広がり診断や,マンモグラフィーやエコーでは見つけにくい病変を見つけるのに有用です。 |
細胞診 (穿刺吸引) |
エコーで乳房のしこりの位置を確認しながら,採血用の細い針でしこりを刺して,注射器でその細胞を取ります。とくに麻酔の必要はなく,簡便で侵襲が少ないですが,細胞が少なく診断が出来ないこともあります。 |
針生検 |
エコーで乳房のしこりの位置を確認しながら,細胞診より太い針を使うので,局所麻酔を使用し,皮膚を4㎜ほど切開し,組織を採取します。 |
マンモトーム生検 (乳腺腫瘤画像ガイド下吸引術) |
針生検よりもより多くの検体が採取出来ます。石灰化病変や非常に小さいしこりの診断に有用です。当院ではエコーガイド下に実施しています。 |
入院について
当院ではクリティカルパスを利用して,出来る限り短期間の入院を実践しています。
入院期間は下記が目安になりますが,入院延長が必要な場合もあることをご了承ください。
入院で行う検査・処置・入院期間の目安
乳房腫瘤摘出術 |
3日間 手術前日午後に入院,術後1日目に退院。ドレナージチューブが挿入された場合は,数日退院が延びる場合もあります。 相談に応じ,入院日手術の局所麻酔下手術も可能です。 |
CVポート植え込み術 |
3日間 手術当日午前中に入院,術後1日目に退院。化学療法の治療もある場合は,数日退院が延びる場合もあります。 |
乳房温存手術 |
1週間 手術前日午後に入院,術後1日目より離床と食事が開始され,ドレナージチューブ抜去後2日目に退院。 |
乳房全摘手術 |
10日間 手術前日午後に入院,術後1日目より離床と食事が開始され,ドレナージチューブ抜去後2日目に退院。 乳房温存手術に比べて,乳腺を大きく切除するためドレナージチューブ廃液量が多く,入院期間が長くなります。 |
乳房同時再建術 |
2週間 手術前日午後に入院,術後1日目より離床と食事が開始され,ドレナージチューブ抜去後2日目に退院。 乳房同時再建では,乳房内にテッシュエキスパンダーを留置するため,ドレナージチューブ抜去のタイミングがより厳密になるので,入院期間が長くなります。それにより合併症を少なくなります。 |
施設認定
日本乳癌学会認定施設
日本乳房オンコプラスティックサージャリ-学会乳房再建実施施設
日本乳癌検診精度管理中央機構マンモグラフィ検診施設画像認定施設
チーム医療
乳癌の治療の5つの柱である,乳腺外科医,放射線治療医,外来化学療法室,形成外科医,病理診断医の体制が完備しており,充実した乳腺診療が可能になっています。また,癌化学療法認定看護師,緩和ケア認定看護師,検診マンモグラフィー認定撮影技師,理学療法士,社会福祉士らが協力して治療にあたります。
特徴・特色
乳腺・内分泌外科
一人ひとりに根治性と整容製を考えて適正な治療を選択
- チーム医療 化学療法室完備
がん化学療法認定看護師,認定薬剤師,緩和ケア認定看護師とのチーム医療
- 迅速な診断 治療
- 手術における整容性
乳房全摘の場合,乳房再建の希望がある際は同時再建手術を施行。
- 乳癌手術後の抗癌剤治療が必要かどうかの判断としてOncotype DXの検査,遺伝性乳癌の診断としてBRCA遺伝子についての検査が可能。
乳癌について
日本の女性癌罹患率の1位であり,女性の11人に1人がかかっています。当院健診センター・他の検診施設からの精査を迅速に行い早期発見につとめます。
乳房腫瘤に対して,マンモグラフィー・超音波検査を行い,悪性との鑑別を要する場合は乳房MRI検査を行います。確定診断を目的に,細胞診検査・針生検・マンモトーム生検による組織診断を行います。
乳癌と診断されたら
大事なことは転移の有無です。進行癌・転移のあるものはまず化学療法の適応です。新病院より化学療法室が完備され,快適な環境での治療を提供します。
手術をすることになったら,切除する範囲と整容性を相談します。病気を治すことが第一,次が整容性です。部分切除するか切除し再建するか色々な方法があります。
リンパ節に対してはセンチネルリンパ節生検を施行し,病理検索とOSNA法を併用しています。
手術後は癌の性質により治療していきます。乳癌は顔つき(サブタイプ分類)により,「乳癌診療ガイドライン」に準拠した標準治療の薬物療法として,抗癌剤,ホルモン剤,分子標的剤を用いた全身療法を行っていきます。
部分切除,リンパ節転移のあった方は放射線療法が必要になります。
当院の特徴
- 乳癌患者様の場合,初診から1週間で診断をつけ,手術を要する場合には,初診から約1カ月で完結することをモットーにしております。
- 手術の術式選択は,病期・腫瘍の位置や大きさ・年齢・ご希望・術前化学療法に対する反応から最適な方法をお勧めします。
- 手術においては整容性も重視しています。部分手術の場合は,乳房内で傷が目立たぬ場所の皮膚切開である乳輪切開,乳房下縁切開,乳房外側縁切開を選択します(図1)(皮膚から腫瘍が近い場合は腫瘍の直上切開を選択します)。先端にライトのついた筋鈎を用いることで(図2),病変から離れた場所に皮膚切開を置いても腫瘍へのアプローチを可能にしています。腫瘍切除後は乳房がへこむことをなるべく少なくするように,オンコプラスティックサージャリ-の技術を用いて,乳腺の欠損部分を周辺の組織で埋め合わせるといった工夫を凝らしています。きれいな手術痕になるように,形成外科のテクニックを用いて皮膚は吸収糸を使用し真皮埋没縫合をこころがけています。
- 腫瘍が乳頭に近接している,非浸潤癌(DCIS)であるが乳房内に広範囲に広がっている,腫瘍サイズが大きく部分切除を行うと整容性が劣る場合は,乳房全摘となりますが,乳房再建の希望がある際は,適応があれば,積極的に同時再建手術を施行しています。
- 乳癌手術後の抗癌剤治療が必要かどうかの診断として,Oncotype DXの検査の相談に応じます。
- 遺伝性乳癌の診断として,BRCA遺伝子についての検査も臨床遺伝専門医と相談に応じます。
傷が目立たぬ場所の切開法(左写真),ライト付き筋鈎(右写真)
乳房同時再建
準備中
乳輪切開による乳癌手術(乳房温存手術)
左乳癌に対して乳房部分切除術+センチネルリンパ節生検術を行った方です。
乳房部分切除術は乳輪切開を半周行い,センチネルリンパ節生検術は腋窩部に3cmの皮膚切開で行っています。皮膚が青くなっているのは,センチネルリンパ節生検時の色素によるものです。術後の皮膚切開部が分かりにくいことと,乳房の凹みが少ないように心がけています。ライト付き筋鈎を使用することで,以前,当院で施行されていた内視鏡下での乳癌手術の皮膚切開と同じに出来ます。
乳房外側縁切開による乳癌手術(乳房温存手術)
右乳癌に対して乳房部分切除術+センチネルリンパ節生検術を行った方です。
乳房部分切除術とセンチネルリンパ節生検術を,乳房外側縁部に9cmの皮膚切開で行っています。術後は正面からでは全く皮膚切開部は見えません,乳房の凹みが少ないように心がけています。
乳房下縁切開による巨大良性腫瘍手術
右巨大乳腺線維腺腫に対して乳房腫瘤摘出術を行った方です。
乳房腫瘤摘出術を,乳房下縁部に15cmの皮膚切開で行っています。術後は乳房下縁のしわに沿っての皮膚切開なので目立ちません,乳房の膨らみが左右で同じになりました。