■乳がん治療後の注意点
腋(わき)の下のリンパ節に転移がある場合は、乳がん切除とともに、脇の下のリンパ節を全て取り除く腋窩リンパ節郭清(えきかりんぱせつかくせい)が行われます。
この後遺症として現れやすいのがリンパ浮腫(ふしゅ)です。切除した側の腕にリンパ液が溜まり、最初は腕が重い、手に力が入りにくいなどの違和感が生じ、進行すると腕がパンパンに腫れ上がり、皮膚潰瘍などの合併症が起こることもあります。
重症化すると治癒が難しくなるため、できる限り早期に発見し、医療機関で治療することが大切です。リンパ浮腫を予防するためには、きつい衣類を避ける、肥満に気をつける、腕に負担をかけすぎない、手術した側の腕には鍼・灸、強いマッサージは行わないなどの注意点があります。
腋窩リンパ節郭清を行うと、腕や肩が動きにくくなる運動障害が起こることもあり、この場合はリハビリテーションをしっかり行うことが大切です。
なお、術創の痛みは徐々に和らいでいきますが、術創がケロイド状になってつっぱる感じがしたり、鈍痛が長引いたりする場合は担当医に相談しましょう。
手術後には放射線治療やホルモン療法が行われることがあり、以下のような副作用にも注意する必要があります。
・放射線照射…皮膚炎、倦怠感、放射線肺臓炎(正常な肺に放射線が当たることで炎症や線維症を起こす病気)など。
・ホルモン療法の副作用…ほてる、汗をかく、いらつくなど更年期様症状、不正出血、関節炎、骨密度の低下など。
■術後の経過と社会復帰
術後に放射線療法が必要でなければ、退院後1~2週間で仕事復帰がかなう人もいます。ただし、腕を駆使する仕事の場合は、注意が必要です。最初は、手術部や腕がつっぱる、動かしにくいといったこともありますが、早期からリハビリテーションを行い、3~6か月後には元通りに動かせるようになることを目指します。
術後半年~1年間は、4週間に1度程度の割合で通院します。術後に放射線治療を行う場合、術創が治った時点(約2か月以内)から、週4~5回の外来通院による照射を、5~6週間行います。化学療法(抗がん剤)も併用して行う場合、同時には開始せず、まずは術後1か月ほどで化学療法をはじめ、約3~6か月続けます。その後、放射線治療を開始します。
抗がん剤は約3~6か月程度、ホルモン療法剤は5~10年投与を続けます。乳がんの場合、10年を過ぎてから突然再発することがあるので、半年~1年に1回は検診を継続することが大切です。
ここで紹介した乳がん治療後の後遺症や社会復帰については一部の例で、それぞれの乳がんのステージ(病期)や治療法の違い、医療機関によっても異なるので、担当医から詳しく説明してもらってください。
ヘルスケア情報サイト「ヘルスケア大学」
監修 女性医療クリニック・LUNAグループ 小関淳 より引用