「お釈迦様は手根管症候群だった?」
このコラム(?)は今回で2回目となります。
Perfect O sign(パーフェクト・オー・サイン)ってご存知でしょうか?整形外科や神経内科の先生方はよくご存知だと思います。そうです、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作るサインです。友達同士で「お前、金持ってる?」ていうときにやるあの格好です。
この丸い円型は、正中神経麻痺(よく見るのは前骨間神経麻痺、手根管症候群)になるとうまくできなくなります。ちょうど2本の指をすぼめた“しずく”の形になります。母指IP関節屈曲と示指DIP関節屈曲がしにくくなることで起こります。本当にこのサインができなくなる時期には母指球筋の萎縮も相当強い状態になっており、もちろんPerfect O signを患者にさせなくても手の形をよく観察すると「麻痺の手だな」と一見してわかるとおもいます。
ところで同じような手の格好を仏像がやっているとおもいませんか?タイやインドネシアなどでも女性が人差し指と親指を先端でくっつけ、つまみ動作をしながら踊っているところを見たことがあります。
仏像の手をよく見てみると母指と示指でつまみ動作をしているものと、母指と中指でつまみ動作をしているものがあることにこの間、気が付きました。
「なんでかなー?、この仏像のモデルが手根管症候群のお坊さんだったのかなぁ?」
「手を酷使する昔の彫刻師が実は手根管症候群で、自分の手を参考にしながら彫ったからかな?」
なんて考えてみてみるとちょっと面白く博物館めぐりができました。
少し仏教の本を(立読みで)調べてみたところ、手根管症候群でも前骨間神経麻痺でもなんでもなく、仏像では指の形や手の位置で多くのことを表しているようで、それぞれのサインのことを印相いんぞう(=印)というようです。指の輪っか型は9種類あって、生きていた時の信仰心や行為の善悪の違いを表しているようです。つまり死のあとにお迎えに来る際のその人にふさわしい印を示しているようです。ちなみに母指示指で輪を作っているのが上ランク(上品)、母指中指で輪を作っているのが中ランク(中品)、母指薬指で輪を作っているのが下ランク(下品)のようです。どうです?もっと知りたくなりませんか?もっと知りたい方は成書をぜひ読んでください。少なくとも僕の思っていた“正中神経麻痺説”は否定的なようですね。失礼いたしました、ナムナム・・・。手の外科症例でなにかお困りの事ありましたらご相談ください。