胃癌患者の高齢化に際して
最近、高齢の胃癌患者さんが多くなっていることを実感しております。前任地でも手術患者の平均年齢は年々高くなっており、6割が70歳以上、80歳以上も25%を占めるまでになっておりました。実際に、国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」を参照しますと、胃癌患者さんのピークは60代から70代に、患者さんの絶対数も高齢者側に大きくシフトしていることが分かります。
胃癌罹患数-年齢別推移-
1975年、1995年では65-69歳にピークがありますが、2015年では70-74歳になり、さらに患者数の絶対数が大幅に増えています(国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」より改変)
胃癌の原因として最も認識されているものはヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)の感染です。幼少期に経口感染で成立すると考えられていることもあり、衛生環境が悪かったと推測される戦前の生まれでは感染率が約8割と非常に高かったと報告されております。一方、戦後に生まれた世代では、感染率は現在に至るまで急激に低下していき、今の若年層では10%未満と非常に低率になっております。結果として、ピロリ菌感染率の高い世代、現在の後期高齢者に該当する世代の胃癌患者が多くなっているものと考えられます。
今後、高齢の胃癌患者さんの治療介入を行う機会がますます増えてくると予測されます。フレイル・サルコペニアと称される、加齢に伴う体力・筋力低下の頻度は年齢が上がるにつれて高くなってきます。併存疾患も多いです。標準術式として胃全摘を行うと、がんは治っても栄養障害で衰弱が進んでしまうことも少なくありません。我々は日本胃癌学会による「胃癌治療ガイドライン」を熟知した上で、個々の患者さんにおいて最適な治療が何か?を常に考えております。様々な判断の下で患者さんのご希望に耳を傾け治療を一緒に考え決めていく必要があります。胃癌そのものの病期のみならず、患者さんご自身の治療目標も尊重し、出来るだけ身体への負担が少ない、個々の患者さんにあわせた”テーラーメイド”の治療を提供させて頂きます。最大限胃を温存する術式は「胃局所切除」となりますが、これを経口内視鏡(いわゆる胃カメラ)と腹腔鏡手技とを協働して行うLECSも積極的に行っております。標準治療と、オプションとしての治療も提供できる体制をとっております、是非当消化器病センターをお役立て頂けたらと存じます。
専門医による診療
消化管、肝胆膵疾患に対応をしています。各分野に専門医を配置し、内科では最新機器の内視鏡や超音波を用いた診断と治療を行っており、特に消化管の早期癌に対する内視鏡治療、肝癌に対するカテーテル治療は数多く手掛けています。外科では患者さんに侵襲の少ない腹腔鏡下手術を積極的に取り組んでおり、胃がんや大腸がんといった消化管癌以外にも胆石・胆嚢炎やヘルニアなどの手術も対応しています。