検診,診断,治療について
日本大学病院泌尿器科科長の山口 健哉です。常々患者さんを御紹介いただきありがとうございます。
本日は前立腺癌について、検診、診断および治療に関するわれわれの取り組みを御紹介したいと思います。
① 検診、診断
PSA(前立腺特異抗原)を検診でお使いになっているかと思います。4.0 ng/mlをカットオフとして御紹介いただいて結構です。御紹介後MRI(可能なら造影)を当院で施行、現在PI-RADSスコアという画像から前立腺癌が疑わしいか5段階で評価する指標を用いています。とくにPSA10未満の患者さんの前立腺生検施行可否を、カテゴリー1から2では経過観察、カテゴリー3では施行考慮、4以上では施行としています。一旦前立腺癌が確定したら、全身CTと骨シンチグラフィーで病期診断を行います。
② 治療
治療は能動的監視、根本療法(前立腺局所療法)、全身療法(内分泌療法、PARP阻害薬および化学療法)および緩和療法があります。
能動的監視は悪性度の少ない低容積の前立腺癌をPSAで経過観察、1年後に再生検を行う方法で、PSA上昇や悪性度上昇があれば治療に移行します。
原則転移のない限局癌に根本療法を施行します。根本療法にはロボット前立腺全摘と放射線療法があり、放射線療法はさらに密封小線源と外照射に分かれます。ロボット前立腺全摘と密封小線源は日大板橋病院と併診して行い、外照射は当院で行います。
根本療法を行わない場合と転移のある場合は全身療法となります。全身療法のうち内分泌療法は、男性ホルモンの去勢レベルへの低下を目的に行います。前立腺癌細胞にとって男性ホルモンが「燃料」の役割を持つためです。これで前立腺癌細胞の多くは「冬眠」に入りますが、一部男性ホルモンに依存しない増殖力を獲得し「去勢抵抗勢前立腺癌」となることがあります。これに対しPARP阻害薬および化学療法があります。PARP阻害薬は前立腺癌患者さんの10人に1人くらいいるBRCA変異を持つ方のみに効く内服薬です。化学療法はドセタキセルやカバジタキセルの単独療法で、外来化学療法室で行っています。