患者さんにとって苦痛の少ない内視鏡検査を目指して
内視鏡領域において日本は世界をリードする存在となっております。診断においては、食道、胃、大腸内視鏡検査における拡大内視鏡分類や超拡大内視鏡などの診断学が生み出され、また治療においてもESDやPOEM、ARMSなど様々な手技が日本から開発され臨床応用されております。
しかしながら、患者さんの苦痛軽減という観点ではまだまだ改善の余地があるかと思います。日本には、痛みに対して耐えるのが美徳とされる文化があり、お産の際の無痛分娩をする割合も先進国で低いとされております。内視鏡検査は受ける側にとってみると、まだまだつらい、受けたくない検査の一つではないのでしょうか?
当院では、早くから内視鏡検査時の患者さんの苦痛軽減に対して様々な試みをして参りました。最近の細径内視鏡(経鼻内視鏡)は以前より画質や操作性も改善し、通常径の経口スコープと比較し、遜色なく検査や診断ができるようになりました。この点に着目し、細径内視鏡を経口から検査することにより患者の苦痛軽減がどの程度得られるのかに関して単施設前向き研究を行って参りました(UMIN 000047366)。結果として、前回通常径で経口内視鏡検査を受けた時と比較して、検査中の苦痛軽減効果があり、かつ生検などの検査に必要な処置にかかる時間は変わらなかったという結果でありました。
また、この結果を受けて細径スコープと通常径スコープを経口で上部消化管内視鏡検査を行った際の苦痛度に関して、多施設共同前向き研究も行いましたが(UMIN 000050134)、同様に患者苦痛度を減らし、病変の発見率は変わりませんでした。
2023年6月以降、当院では、ほぼ全例で上部消化管内視鏡検査の際、通常径より細いスコープを用いて検査を行っております。