消化器外科の上部消化管診療のご紹介
暦の上でも立冬を迎え,冬の訪れを感じる日々が続いております。日本大学病院消化器病センターでは,最善の治療を安全かつ的確に患者さんにご提供できるよう日々の診療に勤しんでおります。
この度初めてレターをお送りさせていただくにあたり,自己紹介をさせてください。
私は2010年に北海道大学医学部を卒業し,後期研修を行うにあたり東京大学医学部附属病院胃食道外科に入局しました。日本大学病院には山下教授のもと2021年4月より赴任し,現在まで職務にあたらせていただいております。今は病棟担当(オーベン)を務めさせていただいております。
当科では消化管疾患,肝胆膵疾患,腹部緊急疾患などを幅広く診療しておりますが今回は特に上部消化管についてご報告させていただきたいと思います。全てのステージにおける食道癌,食道胃接合部癌,胃癌,十二指腸癌に対する標準治療に加えて,胃癌腹膜播種症例に対する腹腔内化学療法(自由診療)を行なっており,全国から紹介を受けています。全身化学療法に加え腹膜転移のコントロールを重点的に行い,根治を目指したconversion surgeryを視野に入れた治療を行なっております。
これら積極的治療を行なっている中で,手術の低侵襲化も目指しています。食道切除では縦隔鏡を用いた非開胸食道亜全摘術を行なっています。分離肺換気が必要ない術式で,術後の呼吸器合併症の発生が胸腔を介する従来術式に比べて低率です。また,高齢者や基礎疾患などから定型手術(幽門側胃切除や胃全摘)が難しい胃癌患者さんに対して胃の貯留能を最大限温存し,術後の体重減少・筋力低下を抑える目的でLECS(Laparoscopy Endoscopy Cooperative Surgery)による胃局所切除を消化器内科と合同で行っており,患者背景を十分に配慮した治療を心がけています。他,食道裂孔ヘルニアに対する腹腔鏡治療や十二指腸腫瘍に対するLECS,また上部消化管疾患ではありませんが病的肥満症に対するbariatric surgeryも行なっております。
上部消化管疾患に対して診療上お困りになる症例がございましたらいつでもご紹介いただけたら幸甚です。
引き続き皆様との良好な連携を継続していきたいと願っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。