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日本大学病院

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ニュースレター

2023年12・1・2月号

高齢者における睡眠薬の適切な使用について

日本大学病院精神科外来医長の久保英之です。常々患者さんを御紹介いただきありがとうございます。

 

本日は、高齢者における睡眠薬の適切な使用について御紹介したいと思います。

 

高齢者においては年齢とともに体力が落ち、白髪が増え、老眼になるのと同じように、睡眠にも変化を生じます。若年成人の正味の夜間睡眠時間は7時間程度ですが、高齢になるほど短くなっていき、65歳以上になると6時間程度となります。加齢ととともに必要な睡眠時間は短くなり、睡眠も分断されやすくなるため、長く眠ろうとして長時間寝床にいると睡眠が全体に浅くなり、中途覚醒や早朝覚醒が増加します。

 

また高齢者では退職・死別・独居などの心理的なストレスに加え、長時間の昼寝やアルコールやカフェインの摂取などの睡眠に関する不適切な生活習慣、痛みや痒み、咳嗽や呼吸困難感などを引きおこす身体疾患によって不眠が生じる場合があります。睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群、周期性四肢運動障害、レム睡眠行動障害などの高齢者がかかりやすい睡眠障害が不眠を引き起こしている可能性もあります。これらの特殊な睡眠障害に関しては、通常の睡眠薬では治らないため、疑われる場合は専門施設での検査と診断が必要です。

 

睡眠薬については、現在、広く使用されているベンゾジアゼピン(BZ)受容体作動薬は、シナプスに存在するGABAABZ受容体に作用することによって鎮静・催眠作用を発揮し、同時に不安に関係する神経系の抑制による抗不安作用、筋骨格系の抑制による筋弛緩作用などをもたらします。BZ受容体作動薬は、睡眠の質を改善する有用な薬剤ではありますが、これらの作用が過剰になると副作用となり、過剰な鎮静・催眠作用による翌日の持ち越し、眠気、抗不安作用による脱抑制、筋弛緩作用によるふらつきと転倒を生じます。また認知機能低下、健忘、せん妄の誘発、依存形成などのリスクがあるため、高齢者へのBZ受容体作動薬の投与はできる限り避ける必要があります。

 

一方で近年では、体内時計に働きかけ体内環境を休息・睡眠に適した状態にすることで自然な睡眠をもたらすメラトニン受容体作動薬に加え、覚醒維持に作用する神経系を遮断することで睡眠への移行と入眠後の睡眠維持を促進するオレキシン受容体拮抗薬が発売されています。これらの薬剤は筋弛緩作用が少なく、認

 

知機能、呼吸機能への影響も少ないことから、BZ受容体作動薬の副作用が懸念される症例においても、比較的安全に使用できる薬剤と考えられています。

 

当科では、画一的な治療ではなく、上記を踏まえて患者さんとご相談しながらお一人お一人の状況にあわせた治療法を行なってまいります。引き続き、日本大学病院精神科へのご紹介をよろしくお願い申し上げます。

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