循環器内科と透析室
今回、私は当院循環器内科と透析室についてご紹介させていただきます。当院では以前より透析室の管理を日本透析医学会専門医の循環器内科医が行っておりますので、透析と循環器疾患についても述べさせていただきたいと思います。
人口動態統計調査によると、日本人の死因の第1位は悪性新生物、第2位が心疾患、第3位は老衰となっています。一方、日本透析医学会による統計調査では透析患者さまにおいては死亡原因の第1位は心不全、第2位が感染症、第3位が悪性新生物であるとされています。ではなぜ透析患者さまの死因の第1位が心不全であるか考えてみたいと思います。まず透析に至る原因疾患の第1位が糖尿病であり糖尿病があれば当然、循環器疾患は増えると思われます。またそれ以外にも高血圧などが原因疾患として挙げられ、こちらも循環器疾患の原因となりえます。また透析に至る以前の慢性腎臓病の時点から、腎機能低下状態では、水分とナトリウム排泄能は低下し、体内に水分が貯留傾向となります。このため、更に血圧上昇につながることが考えられます。実際に腎不全のステージが悪化すると、循環器疾患は著明に増えることが判明しています。これらに加え、血液透析は、一般に週3回1回4時間、1週間あたり12時間で体内の水分、老廃物を除去する治療が一般的です。このことは、透析施行直前は常に溢水に近い状態であり、血管にも過剰な負荷がかかっている状態と考えられ、透析後は逆に脱水に近い状態にあるといえます。実際に透析患者さまが亡くなった曜日をみてみると、月水金透析の患者さまにおいては2日あきの月曜日(おそらく透析前)、体内が一番ドライの金曜日(おそらく透析後)、火木土透析の患者さまでは2日あきの火曜日(おそらく透析前)と土曜日(おそらく透析後)に多いことがわかっています。これらのことから、透析患者さまがいかに循環器疾患と密接かご理解いただけると思います。
さらに、透析患者さまの循環器疾患の特徴として、無症候性に起こることが指摘されています。無症候性であれば当然疾患の発見が遅れる可能性が高くなるため、その重症度や致死率は一般の循環器疾患より高くなることが予想されます。
透析患者さまが心疾患で亡くなる確率が高いこと、透析患者さまの循環器疾患が無症候性であることを考えると循環器科医が透析を管理し、早期に治療介入することは、むしろ理にかなったことといえるかもしれません。これらのことを踏まえ、当院透析室では他科疾患で入院された透析患者さまにも上記のことをお伝えし積極的に循環器疾患の検索を行っております。入院した際に心筋シンチ、冠動脈CT、心エコー、ABIなどを施行し、循環器疾患スクリーニング検査をお勧めしております。循環器スクリーニング検査は外来で通院検査を行うパターンと2~3泊で入院いただき、循環器疾患にかかわらず癌のスクリーニングを含めて行うパターンなども用意させていただいております。これは当院に入院された患者さまのみならず、近隣の当院透析室が懇意にさせていただいているクリニックにもご案内させていただいております。
当院透析室は上記のように他院とは異なった形態で運営させていただいておりますが、これからも地域の透析患者さまのお役に立てるよう努力してまいりたいと思いますのでよろしくお願いします。