腹膜転移は、腹腔内全体にがんの転移巣が広がった状態です。種が播かれたようにがん組織が散らばっていることから腹膜播種と呼ばれることも多いです。残念ながら外科的に全て切除することが困難なこと、仮に切除したとしてもすぐに腹膜再発してしまうことから、手術ではなく全身抗がん剤投与での治療となることが一般的です。この時の抗がん剤投与は“治癒”を目指したものではなく延命を目的とした治療と説明されることが少なくなく、1年程度の余命を宣告される患者さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
いわゆる“スキルス胃癌”と呼ばれるタイプの胃癌は、無症状の段階から腹膜播種を伴っていることが少なくありません。他の胃がんと比較すると若年層に多く、特に女性に多いという特徴があります。
当院では、腹膜転移陽性の胃癌患者さんに対して、パクリタキセル腹腔内投与と全身化学療法を併用する治療を行っています。パクリタキセルの腹腔内投与が保険診療下に行えないため治療は全て自由診療となります。これまで先進医療や患者申出療養制度下で多くの患者さんに行われており、安全性が確認されているものです。非常に高い効果を示された患者さんは少なくなく、前任地の東京大学では肉眼的に腹膜転移が消失して根治手術が行われたことも多く経験して参りました。
当院では2月から実施可能となり、複数名の患者に現在治療を行っております。
胃がんの腹膜転移に対する本治療についてお知りになりたい方は是非ご来院頂けたらと存じます。
お問い合わせ先 03-3293-1711 消化器外科外来(教授 山下裕玄)